経営者が知っておくべきM&A

2017年6月9日 金曜日

早嶋です。

目標とギャップの売上が確保出来ないから、とりあえずM&Aでシェアを買おう的な発想があります。しかし、その後、どのように買い手にアプローチするのか?M&A全体のプロセスはどうなっているのか?資本を入れた組織をどのように同業していくのか?などを考えずにFA(M&Aを進めるコンサルタント)に丸投げする場合があります。

ギャプを埋める行動があればまだいいほうです。中には、余裕資産があるから、とにかくM&Aしたいというのもあります。その場合、明確な投資ルールや買収方針があれば良いのですが、勢いだけで何もでてこない場合、買収することができたとしてもその先がありません。

そもそもM&Aとは、企業の合弁や買収を指します。また、企業や事業、あるいは資産を取得する際の方法は様々なものがあります。吸収合併、株式取得、TOBなどの移管、事業譲渡、会社分割、業務提携、OEM提携等です。つまり、その手法そのものは単なる手段であり戦略を実現するための選択肢に過ぎないのす。

近年、大企業を中心にM&Aは盛んです。理由は国内のビジネス環境が低迷しているので、異業種参入や新規ビジネスを目的として時間やノウハウを取得する。或いは、同じビジネスを海外で展開する時にやはり時間やノウハウを取得するという場合です。

どちらも明確な目的がありますので、その目的を達成するための手段として自前で行うか、資本を入れて行うかの選択が戦略になります。従って、M&Aの成功の定義は戦略のゴールである目的を達成できたか否かが重要です。

企業によっては、明確に企業戦略に紐付いた形でM&A部隊が組織されているところもあれば、単にM&Aという言葉が独り歩きして、案件を持っていくも、或いは案件が外からやってきても、その企業は詳細な分析ばかりに時間をかけて精査することに時間を費やしている担当者を多数みます。

そもそも戦略があれば、案件が持ち込まれた時点でその案件が当初の目的を果たすか否かはある程度スクリーニングできます。しかし、始めからその方針が不明確な場合が多いと感じます。

企業の評価に対しても同様です。その企業がバリューか否かは、最終的に買い手が判断することになります。他の同業者が価値を感じなくとも、自社の明確なゴールを満たすために、この部分を補ってシナジーを出すことがでることが分かった。そしてそれを自社で行った場合の比較をすると、資本を入れた方が遥かに合理的だという仮説が立てば、高いものではありません。

つまり、企業の評価をするにも、主体は買い手になるということです。バリュエーションも基本的には業者に丸投げをしてしまうと、全く意味のない算数で鉛筆ナメナメの数字が出てくるだけなのです。

M&Aで成功しない企業の特色は、買うことがゴールになっていく企業です。そもそもの目的がないので、今取り組んでいることがゴールになり、交渉を進めるうちに案件の不備が見つかっても、ウィナーズカースに陥りとにかく進めるスタイルです。この場合は、企業に資本を入れることは出来ますが、その後の経営が全くみえません。

通常は、基本合意を結ぶ段階で、その後の統合チームをまとめ買収完了ともにどのように統合して、自社の戦略を進めるかを議論し始めます。当然、この段階で誰が新しい組織をマネジメントするかも明確になっています。が、実際はPMIなどもあまり行わない。そもそも買収後に誰が社長とするかを決める企業も案外と多いものです。それは上手く行かないでしょう。

買い手企業として案件を獲得する場合も考えるべきことがあります。M&Aの案件、つまり売り物件は水物だということです。デパートに行って、そこに自社の戦略を満たす案件があるかと言えば、その確率はほぼゼロに近いです。買い手の意志で明確に探す必要があります。

理解していない経営者は、M&Aで解決したと思います。そこで部隊を作り丸投げします。実際、その部隊も試行錯誤しながら案件を探しに行ったり、案件のオファーをもらうようになります。しかし、FAの立場からして、その組織に何度か話をして、経営者の判断が遅い場合は、次から案件を持ち込まなくなります。理由は、商売にならないからです。

M&Aの案件の性質を考えた場合、通常の経営の意思決定をしていては時間がかかって、逃してしまいます。従って、M&Aを考えているのであればその判断や意思決定は経営陣の中でどのようにすべきかを明確に議論しておくことも必要です。



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