早嶋です。
ヘンリフォードは「考えることは最も過酷な仕事」というような言葉を残しています。経営している側の人間からすると納得する部分が多く、会社に務めている側の人間からすると、かなり違和感が残る言葉だと思います。
仕事を通じて、違和感があったり、顧客と接するときにその反応から新たな対応を思いついたり。常に仕事を通じてアタマをフル回転していると毎回新鮮な気づきがあり、常にバージョンアップすることができてきます。しかし、そのような気付きの多くは、その瞬間に思考停止に陥り、その思考をバージョンアップして次のステップに進めることは訓練が必要です。或いは、そのような瞬間になっても一切なんの疑問も持たずに考えることすらしない人が殆どなのかも知れません。実際、そんな感じでしょうか。思考とは実に面白いもので、考え始めると止まらなくなり、何も考えないと何も進まない。まさにニュートン力学のようですね。
「全ての物体は、外部からの力を加えられない限り、静止している物体は静止を続け、運動している物体は等速直線運動を続ける。」
ここから言えるように、思考力を強化するための最も単純な、そしてパワフルな方法は自ら考えることなのです。これを聞いて、「なんのこっちゃ?」とい言う方は、思考が常に静止している状態にあるため、大きな外圧が必要な方でしょう。その外圧は、強制的に従来の環境がリセットされ、何も使い物にならない状態に陥ることかも知れません。敢えて自分を学びの環境に入れ、矯正的に学び考える必要性をもたせる事かもしれません。いずれにせよ、思考を強化させるためには結構な環境変化を自分に課して、どうにかして思考を続けない限り、なかなか自走する状態にはならないのです。しかし、一度でも等速直線運動の状態になれば、後は自然となんの外圧もなくしても、勝手に思考に勢いがついていくのです。
思考をする中でよく言われることは「問いの発見」です。そして、その問は、有りたい姿と現状のギャップから見いだされます。有りたい姿が既にある場合は、現状を徹底的に調べれば、必ず有りたい姿と現状において、ある時間軸でのギャップが生じます。そして、そのギャップがずばり問題、自分自身に問うべき問になるのです。もし、現時点で何らかの有りたい姿がない場合、これまでの自分の過去から現在、そして今の環境を過ごした場合の延長上で、自分が行動した場合、どのような将来の自分を獲得するのかなどを鑑みながら、本当にその状態が望ましい姿なのかとか自身に問いながら、将来の有りたい姿をつくり出していきます。将来の有りたい姿を問い続ける、見つけ出す作業は企業で言えば戦略そのものです。ここから先、自分たち、自分たちの組織をどのような方向性に導きだすか?を決める作業ですがから最もワクワク、そして辛い作業の一つになります。
因みに、前者のように既に有りたい姿が見えている場合は、そこにたどり着くルートを探せば良いので、現在問題として扱います。現在問題の場合は、その問いの具体的な意味や、そのギャップが発生しているメカニズムを抑えて解明する中で、自身が取り組むべき行動のヒント、つまり課題がはっきりして来ます。しかし、将来の有りたい姿が見えない場合は、その有りたい姿を創ることから始めることになるので将来問題として扱います。将来問題の場合は、解くべき問を探す前に、導く方向性を見出す必要があるからより行動な思考になることは想像できますよね。いずれににせよ問いを明確にするためには、現在と有りたい姿の2地点をクリアにすることが、まずのヒントになるのです。思考において、この問を自ら問い、その解決に向けて動き、考え、検証する。この繰り返しを行う過程で思考はガンガンに強化されていき、等速直線運動の状態に自らを導くことができるようになるのです。
因みに、この作業は子供の頃は皆、当たり前に行っていた思考です。それが大人の階段を登って行く内に徐々に、本来の当たり前の思考プロセスをだめにされてしまったのです。例えば、考えてみてください。子供の頃は、「なんで?」「どうして?」「えっ、どうなってんの?」という感じで、常に物事に対して一定の好奇心があり、常に「その先を知りたい!」「そのような状態になりたい!」という問を問い続ける思考があったことでしょう。
ですが、小さい頃に、そのような思考のエンジンを強制的に止められる体験を繰り返す中で、考えては行けない。と暗黙に思考を諦める結果になってしまったのです。義務教育という時間により、強制的に自由な思想をカットされたのです。意味の無い数字を繰り返し暗記して、自分で問うことを忘れさせられます。絶対的な権威が与えた一つの解決方法を暗記するかのごとく、似たような類題を同じパターンで早く正確に解く訓練を繰り返されます。誰しもが自由な問をする時間を剥奪され、やがて考えることが悪かのように、そして事前に与えられた一定の範囲内で解を出すことが偉いんだという誤った思考が産み付けられるのです。
「いやいや、それはないぜ!」と本来の思考をガンガン回す脳みそにリセットすることが大切です。論理思考ではゼロベース思考なるキーワードで言われますが、過去をすっかり忘れて、「あれ、なんだろう?」と純粋な気持ちで周囲を観察するだけでOKなのです。そうは言っても、実際は思考が止まる瞬間が多々ありますね。
例えば、子供をみていて、思考する勢いは在るのですが、思考が実際は止まっている場合があります。例えば、思考する対象についての知識や視点が乏しい場合です。当然、そのような状況下ではどうやって調べれば良いか、どうやってその思考を進めればよいかの当たりが付きません。
リベラルアーツの重要性は、そんなときに考えるヒントやきっかけを与えてくれます。人は無意識に全く異なる分野や知識から無理くり探してくるのです。自由になるための学問というナイスなネーミングは、このよな背景が在るのでしょう。私は子供には普段から様々なことに思考を向けさせるように体験させ、知識のインプットも偏りをなくし雑学のようにバラバラにインプットできるように工夫しています。
しかし、これは我々大人にとっても同様の効果がでるのではと感じています。様々な分野の知識や問い、そしてそれを解決する事例をアタマに入れることで、考えが強化されるのです。
次に、問いに対して思考を進める事ができても、答えがわからないというケースも多いに訪れます。その場合のヒントは抽象化です。概念を単純化してシンプルに問う技術を磨くのです。
仮説思考のトレーニングの一つにフェルミ推定があります。これまで考えたことが無い、計算したことが無い、知らないことを、自分の知識を依り何処として、問いを単純化してモデル化して推定する方法です。難しいことを難しく考えるのではなく、単純に、時には大胆に考えることで、とりあえずの答えを自分なりに出します。当てズッポではなく、自分なりのロジックを使って、思考の筋道を残した上でのとりあえずの答えを出します。これを繰り返しながら徐々に前提条件を複雑にして問に対しての思考を深めていきます。このフェーズに入れば常に考えを進めている状態になり、最終的には何らかの合理解にたどり着く可能性が高くなると思います。
最後に最も厄介な状態が、わからないことがわからない状態です。自分が何がわからないかがわからないのです。不思議の国のアリスでは、アリスが地下道で迷っている時にアリスがチシャ猫と会話する下りが有名です。
アリス:私はどこに行けばよいの?
猫:あなたはどこに行きたいの?
アリス:それがわからないから聞いているの。
猫:だったらどうしようも無いですね。
ソクラテスが、街なかで神の真理について探求しているとき、ソフィストと問答をするシーンです。ソフィストは全てを知っているという傲慢さから、ソクラテスの問答にハマってしまい、最後は思考が詰まってしまいます。知らないことを知らなかったのです。
実際、わからないことを言語化できない状態に気がつくととても辛い感じです。しかし、その違和感を持てば、自分から思考を始める準備が整っったと思えば、後は上述した要領でじわじわと考えることをスタートすればよいのです。思考する中で、自分の中に願望が芽生え、有りたい姿が見えてきて、その結果もっと好奇心が湧いてきます。
止まっている物体に外圧がかかれば、後は動き続ける。そしてうまく重力に打ち勝って動き続ける事ができれた思考がまさる状態になるのです。そのきっかけは何でも良いと思います。最終的に物事を追求している人は分野や役割が変わっても、その思考が多方面に応用できるようになるのです。しかし、その状況が続き、最終的には持久戦になる。これをフォードは過酷な仕事と捉えたのかも知れません。
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思考の強化の方法
2020年11月1日 日曜日
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