早嶋です。
2006年に日本で発売された名著、ダニエル・ピンクのハイ・コンセプトを読み返しました。当時はBond大学の経営学修士に取り組んでいる過程で、こちらの著書は大前さんが薦められていたので購入して深く読みました。その内容は、多くが今でも通じるし、予測された内容でした。
例えば、各国で行っている受験生度を左脳型で時代錯誤としてきしています。当時は欧米や日本が該当していましたが、欧米は北欧にならい徐々に右脳型の受験生度を取り入れています。日本は変わらず左脳型です。そしてチェスは人間がコンピュータに負けることを記述しています。確かにアルファゴが随分前に人間を倒したと記憶しています。
人間が行う種類の仕事は処理する力よりも創造すること、技術マニュアルで得られる知識よりも潜在的な知識、細部に細かくこだわって細分化することよりも大きな全体像を描く力が必要になることを指摘しています。当時は2006年ですのでスマフォやスマートテクノロジーが実現されていない状況。しかし、分析力によって更にコンピューターが安価になり、処理することそのものの対価がゼロに近づいてくることを指摘していました。記憶に残っている記述はMBAよりもMFA(Master of Fine Art)の下りです。正直、あれ、MBA受講中なのに・・・。と思い焦ったのを思い出します。
内容は多岐に渡り、例えばリーダーとされるヒトは愉快で楽しい人物が求められ、議論や整理された論点に加えてストーリーが大切になる。ともありました。正直、当時、ストーリーと言われてもピンと来ませんでしたが、仕事の内容はクライアントとのやり取りの中でもストーリーを重視したプロモーションなどが主体になっています。また、マーケティングの価値についても言及がありました。機能的な実用性のみではNGで、優位性やデザインといった論点が重視されると。
昨年書いた本の「ジョブ理論」の解説本でも機能的な価値に加えて、感情価値や社会価値が重視されるという言及とも重なります。そして理由も明確です。基本的に技術は瞬時にコピペされる。あるいはされる可能性がある。従って機能的な有意差の争いは、すなわちそれをいかに調達して、いかに製造して、いかに安く提供して、いかに顧客をフォローできるかによってきまります。ここがある程度均一化されたら当然ながら最後の勝負は価格になり、資本力が大きい世界、あるいは大規模に展開しているところが安く提供することに関しては優位になります。そのためそれ以外の点での差別化は感情的な要素や社会的な要素が重視されるのです。
近年、同じような当たり前の商品でもリデザインされた商品がSNSやWebで頻繁にあふれるようになりました。デザインは確かに差異化のポイントですが、ここもすぐにコピペされるようになります。それでも残っているところは上述した優位性に対して、その商品が出来上がった背景や登場人物の関わり合いが商品の優位性を高めるようになっています。
一方、当時の見解から若干ずれた部分はAIの登場と実用でしょうか。当時の概念では、未来をリードするのはパターン認識に優れたヒトという見解でした。しかし、その分は実はコンピュータが最も得意な分野になりました。ネットの進展とセンサの発展に合わせて、それらのデータをリアルタイムにクラウドに蓄積することができるようになり結果、そのパターン認識を人間からAIが行うようになったのです。全体を見通すヒトという点で、その仕組を構築して世の中に変革を仕掛ける人間はまだ有用でしょうが、その作業を画一的に展開する場合は、その能力を持っていたとしても、将来はAIや新たなテクノロジーが先行するのだろうと思います。
また、このパターン認識によって、物語や音楽そのものもAIで創られています。昔から、何かをヒトに伝えるためにはまとめた情報で伝えるよりもストーリーで伝えたほうが良いことは経験上分かっていたと思います。以前、カンボジアの遺跡を巡っている際にガイドが言っていました。基本的なレリーフ(遺跡に残っている石の彫刻)の大本はあるのだが、人々に理解して頂くために、ストーリーテラー(宣教師)がその土地の特徴や聞いているヒトの関心の高い内容をその場でアレンジして話をしていった。そのため大枠のストーリーは同じなのに、細かい設定や結論が異なってくるお話が多くなっていると。このストーリーテラーの役割をAIが行う世の中になっています。
音楽も然りです。ピアノが上手なヒトは、聞き手の好みに合わせて曲や曲調をアレンジして引くことができますが、これもAIによって行われます。そして、対象者の過去の音楽の視聴リストから好きな旋律や店舗を割り出し、それに合わせたアレンジをすることでリアルタイムに、そのヒト向けの、そして好みの音楽を作ることもできるようになります。
こう考えていくと、やはり処理することに長けたとしても、すなわちその仕事はすぐにコピペされるので。創造的な仕事、楽しい仕事、再現性が難しいと人が勘違いする仕事が従事する。そしてその能力を手に入れる。あるいは鍛えて行くことが今後のポイントになる。という大枠はやはりかわらないのかなと感じました。素晴らしい著書ですね。ハイ・コンセプト。
2019年3月5日 のアーカイブ
ハイ・コンセプト再び
フリーランスの声
早嶋です。
今朝の紙面(日経新聞)にフリーランスは1119万人、労働人口の17%という記述がありました。想定より多いなという心象です。記事の内容はNTTコムオンライン・マーケティング・ソリューションがフリーランスなどの文字を含むツイートを分析した内容です。
特徴は、プラスのコメントに「自由」などの制約が無いことがあり、ネガティブなコメントに税金や制約、安定しない。という記述がありました。思うに、自由度と制約は相反関係にありますので、それをまずは良く理解することが大切でな無いかと思います。また、税金はフリーランスだから高いわけではなく、企業に努めている人は企業が代行しているだけで収入に応じた税金を払っています。その理解がなく単価を設定しているため所謂税の引当がなくかってに高いと感じていると思います。
また、フリーランスはブラックだという人は、企業に努めても同じことを言うのではとも思います。何かに取り組む際に、一生懸命に自分ごととして行うときは無理することだってあります。しかし、それを続けると体が持ちませんのでそのバランスをとる。これは基本企業に勤めていても個人で行っていても前提は同じではないでしょうか。
更に、副業に関してのコメントについても思うことがあります。副業を自由に行いたいのであれば、そもそも企業に終身雇用を求めるのではなく、仕事単位、期間単位で業務委託契約を結べばよいのに。と感じます。安定して稼げて、したいこともする。というのは良い面もありますが、かなり雇用される側の都合のみだなとも感じました。
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