早嶋です。
キャノンの業績に回復の兆しがというニュースが。2017年12月決算の連結業績の見通し発表(1月31日)によると営業利益は2550億円と前期比で11%増。
参照:http://jp.reuters.com/article/canon-earnings-idJPKBN15F0OL
キャノンの製品別売上は、医療機器等のM&A前はレーザープリンタが2割、複写機が2割、商業・産業プリンタが15%、インクジェットプリンタが1割とプリンター関連で7割近くを占め、残りの2割がカメラ機器関連、産業機器関連でした。
これまでの業績は2007年頃が4.5兆の売上でピーク、利益も7000億を越えたところから直近は売上が3.5兆円m利益が3000億強で推移していました。
2割のカメラビジネスと残りの産業機器関連は構造的に低迷。プリンタ関連のうちインクジェットは市場が激減という環境。しかもプリンタ事業のビジネスモデルが従来のリース契約や機器販売と消耗品販売の流れからゼロックスやリコーが主導を握るMPSという形態に移っていました。
MPSはマネジメント・プリンティング・サービスで自社のコピー機に関係なく、ドキュメント関連の機器をネットワークでつないで最適に制御する仕組みです。これは機器販売やリース販売の形態からサービスにビジネスモデルがシフトしたことを意味します。シェアが高かったキャノンは、自社の仕組みを維持するためにMPSに出遅れたと考えることもできます。
また前述したカメラに対しても、デジカメ、レンズ交換式カメラ共にキャノンは首位をキープしています。ソニーや富士やオリンパスなどは、その地位が早い段階で失われたので、事業ポートフォリオを光学の技術を活かして医療分野などにシフトを進めていました。キャノンはこの事業でも首位を守っていたために、既存の事業から梶を切るのが遅れたともみることができました。
従って、キャノンの方向性はオフィス向けのソリューションまわりを強化するか、医療や理化学分野への強化をするか、商業・産業要のプリンタを更に強化するか、などが考えられていました。
上記の方向性の転換は、1位の企業だったからこそ中々上手く進まなかったと考えると、競争の構造ってやっぱり難しいと思います。実際、キャノンは2000年代後半よりM&Aを積極的に進めていましたが中々その成果が出なかったというのが結果から見える事実だったと思います。
2007年には有機EL製造装置のトッキをM&A買収。2010年頃からM&Aの規模が拡大してオランダの商業印刷大手のオセ(買収額は約1000億円)、ネットワーク監視カメラ最大手のウェーデンのアクシスコミュニケーションズ(約3300億円)、東芝メディカル(約6655億円)を相次ぎM&Aして参加に統合してきました。そして上記のM&Aはいわゆるこれまでの事業ポートフォリを変えるべきうちてのなっています。
日経の報告では、
■■引用
今期のセグメント別の営業利益予想を見ると、利益の増加額が一番大きいのが、新規事業で構成される「産業機器その他」。利益は前期の3倍の210億円となる。新たに連結された東芝メディカルが無形固定資産償却後に100億~150億円の利益押し上げ要因となる一方、監視カメラや商業印刷でも利益成長を見込む。投資が盛り上がる有機ELの蒸着装置では、キヤノントッキの製品が「業界標準」となっており、大幅な販売増が期待できるという。
■■引用終了
とのこと。御手洗会長はキャノンの事業ポートフォリオを今後、ヘルスケア、監視カメラなどのセキュリティビジネス、商業印刷、そして勇気ELや半導体関連の産業機器としていますが、その動きが利益という投資のリターンでようやく形になり始めたところでしょう。おそらく同社は過去のピークの利益7000億オーバーを意識されていると思いますが今期予想はピークの3割り程度。まだまだこれまでの規模感からすると事業ポートフォリオを活かしてビジネスの構造を変えないといけない状況だと思います。
2020年の経営目標は売上5兆の営業利益7500億円。がこれまでのビジネスの積み上げでマックス4兆円といったところ。残り1兆円をどのように考えているのか、公開資料だけでは読み取れません。計画ではそこは新規ビジネスで伸ばすと書いていますが、既存の5倍は苦労するであろう新規。そう簡単に変革がすすむとも思えません。これが近年のユニコーン企業のように、本当に必要な部分を残して他はアウトソーズ。そしてスマフォセントリックのような発想でビジネスを行うのであれば別ですが、やはりそこにあるのは資源をベースにする昔の大企業の発想があります。成長が2の乗数で伸びることは考えにくいと思います。
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キャノンの構造改革
2017年2月7日 火曜日
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