早嶋です。
企業価値を評価する手法はいくつかあります。
企業の資産をベースに事業価値を判定する方法。こちらは資産を時価で評価するので透明性は高い一方で顧客との価値や将来のキャッシュフローやこれまで培ってきたブランドの価値などを無視することになります。
類似企業の事業価値を鑑みて判定する方法。この場合は、類似する企業を上場してる企業から選択して、その企業の一株あたりの利益の何倍株価がついているかをベースに、対象会社の株価を算定する方法です。こちらはそもそもどうやって類似会社を選択するかの難しさがありますし、上場している企業のいつ時点の株価を正しいとするかなども議論が生まれます。
企業のキャッシュフローをベースに算定する方法。大企業は得に、事業計画を策定して将来のキャッシュフローを予測し、そのキャッシュフローを今の価値に割り引いて算出する方法が用いられます。しかし、事業計画の算定ですでに推定が入りますし、現在の価値に割り引くことで算数的な処理が必要になります。また、通常は5年から8年程度の事業計画を策定して、それ意向は一定利率で成長する仮定を起きますが、そこにも議論が生まれます。
他にも回収する期間や過去の収益を示す利益で企業ののれん代を算出する考え方もあります。この手法は主に非上場企業の場合に用いられることが多いですが、上場していない企業の場合は利益はかなり調整が可能です。したがって、何を基準に利益を確定していくかも議論が生まれます。更に、回収期間は買い手と売り手によって異なりますし、投資が必要な業界は回収期間が長くなる傾向があり、事業が混合している企業においてはその期間の判断がやはり議論が必要になります。
従って一つの手法が正解という考えかたよりは、複数の手法を用いた場合に、合理的な事業の価値がいくらから、いくらの間にあるという区間を推定して、その後は買い手と売り手双方の交渉によって決まる。というのが実際行われている方法です。
M&Aアドバイザーと話をしていると、少し企業規模が大きい売買を頻繁にしている方は、回収期間の目安としてEBITADAの何倍ということで判断をされている方も散見します。例えば、ファンドが調達した資金を元に投資をする際にEBITADA倍率が10倍で回収に10年などかかるなのです。
しかし、回収期間とみる場合は、実際に手元に残る金額をベースに鑑みたほうがよいので、本来の実質収益としてみることをおすすめします。EBITADAは利息や減価償却、税金控除前の利益です。単純化すると税金を負担する前のフリーキャッシュフロー相当です。当然、どこの世界も企業の勤めとして納税は必要です。
例えば年に1億のEBITADAの事業価値を10億として10年で回収と考えると、ちょっと狂いますよね。1億から税金を差し引けば実際は7,000万円程度が手元に残るからです。10億/0.7億=約14年です。
2000年頃IT革命が始まった世の中は、実はIT屋さんはサーバーやコンピューターなど結構設備投資が必要な業界でした。そのため減価償却の負担や支払い利息の負担などが今と異なり発生していました。そこで彼らが考えたのが自分たちのキャッシュをより良く見せるための見せ方です。それがEBITADAという指標として残っているのです。
事業の価値を算定するための考え方は沢山ありますが、結局は売り手と買い手が握った価格が正解で、その手法が正しいという議論は実務的ではありません。それでもある程度の合理的な幅で金額の算出を行う必要があるのでファイナンスの手法で語られる方法論が複数あるのです。それでも、背景や内容を知らないで活用していると誤った投資や本来もっと高く売れる可能性があったのに低く売却してしまった。とならないように背景の理解はあったほうが良いでしょうね。
‘ファイナンス’ カテゴリーのアーカイブ
事業価値の算定方法あれこれ
目標にも短期思考の愚
早嶋です。
企業活動において、目先を意識するがあまり数字あそびに走る中間管理職、マネジメントが増えています。例えば、数年先のビジョンを経営者が示しても、その意味を解釈できずに、過去の数字の積み上げにとどまります。通常は、数字にギャップがある場合は、そもそもの取り組みを否定して、ゼロベースで過去から現在の取り組みを見直し、場合によっては、全く異なる行動を試すなどを行わなければなりません。が、そのような思想はないので、今の数字をどうにか調整してPLを作る発想が蔓延しています。
本来経営においては、長期と短期の思考を繰り返し行き来して、現在と将来を常に見ることが大切なのですが、過去と今にしか視野が向かないことが原因です。結果的に、将来に渡る取り組みを理解していないので、目先の数字をすべて一律にカットして、将来の価値を毀損する投資判断を行います。目標設定に対して一律で増加することには反対する人も、経費の一律カットは割とすんなりと受け入れる。うーんです。
背景には、企業のマネジメントに戦略の理解が乏しいことと同時に、ファイナンスを理解する人材が不足していることに有るでしょう。PLは誰でも直感的にわかりやすいということがあるでしょう。従い、売上、利益のみを数値として目標に掲げる。当然、その意味を理解した目標であればよいのでしょうが、最終的には意味のない数字だけが独り歩きしてしまい、将来を失った取り組みをするハメになるのです。
地域で儲けるビジネス
原です。
「地域にはビジネスの可能性があふれています」と言う人と「地域には何もない」と言う人がいます。
私は、「地域にはビジネスの可能性があふれています」と前者の考え方です。
理由は、都市とは違う地域特有の資源があるからです。
地域資源とは、経営資源と同様に「ヒト、モノ、ブランド」などです。
ヒトでは、地域住民や地域出身者に文化人や有名人など活躍されている方がいます。
モノでは、地域の食や一次産品、2次加工品、自然、観光地、文化伝統などが豊富であり地域ブランドとして海外にも通用する商品やサービスもあります。
一方で「地域資源はあるのに、人と金が減少している」という誰でも知っている地域の現状があります。
そして、地域に関係する組織や人々は、地域の問題は知ってはいるけど解決できていないのが事実です。
原因の一つには、地域では特定の人だけが儲けることが「善」ではないという考え方があります。また、儲けないとビジネスは継続できず地域は衰退していくことも事実です。
私は20代前半のバブル崩壊後に大都会から地方に戻りましたが、地域で儲けるのは経営環境を考えると困難だと感じました。それと、地域では儲けることができないという思い込みもありました。地域活動のエリアを広げ多様な地域の人達と関わることによって見えてきたことがあります。
それは、人口の少ない小さな地域でも、かなり儲けている人達がいます。そんな経営者さんらとも語り合う機会を頂きました。決して儲けているからという理由からではなく、とても人間力が高く共感できる人達です。
このような方をもっと増やしたい。理由は、地元の災害から気づいた私の使命感からです。あとは、どうやって儲けるかの仮説づくり、実行、仮説の検証が必要です。
そこで、地域で儲けるビジネスを創り増やすために、月次セミナー「ローカルベンチャー(地域ビジネス)」を開催します。儲ける地域ビジネスの創り方を受講者さんと一緒に考えていきます。考えるだけでなく、自己所有の地域資源を活用して仮説検証を実践していきます。または、受講者さんにも仮説検証を実践して頂きます。
それと、資金調達やマーケティングに役立つクラウドファンディングについても活用策を伝えます。
月次セミナー「ローカルベンチャー(地域ビジネス)は、弊社webからご覧になれます。
是非、ご参加お待ちしています。
アーリーステージの資金調達
早嶋です。
アントレプレナーと会うことが多いです。その中で感じることがあります。アーリーステージの段階で資金調達に恵まれ比較的余裕がある組織とブートストラップで自前で資金を調達してかなりギリギリの感じで取り組んでいる組織。
もちろんどちらも一生懸命にビジネスの立ち上げに取り組んでいます。しかし前者はちょっと経費の使い方に疑問があります。なんというか体裁を繕い過ぎているというか、費用の使い方が荒いというか。結果、常に資金調達をしているのですが、使途がビジネスのために消えているのではなく、自分たちの給与や家賃に消えているのです。
もちろんそれらをヘッジするために株式という発想があります。しかしギリギリで行っている企業は、インキュベート施設をうまく活用したり、自宅兼事務所の発想で、資金ショートに備えて目一杯に経費を抑えて、必要な開発にもメリハリをつけてお金を使っています。
この差ってなんでしょう。うん、どちらも成果を出して、株主に還元すると良いのですが、その株主がアーリーステージの場合お友達が多いです。とすると、その資金はひょっとして使い方がルーズでも良いと考えているかもしれません。もし、その資金の使い方が個人保証をした上でのデットだったらどうでしょうか。元本返済と利息を支払えなくなると最悪住んでいるところや全ての資産を金融に抑えられます。きっと、かなりギリギリに金銭をつかうのではないでしょうか。
アーリーステージの資金調達には様々な考え方があると思いますが、テストマーケティングのフェーズでは、少なくともデットの緊張感もあっても良いのかな。と思っている次第です。
関係性で地域と都市の役に立つ
シニア・コンサルタントの原です。
私は、移住人口や交流人口の増加策だけでなく、第3の「関係人口」による地域政策を実践的に研究しています。
関係人口とは、地域への移住や観光ではなく、都市住民が定期的に想いのある地域を訪れることです。
私の取組事例では、平日は地方都市の福岡で仕事をしながら暮らし、休日の一部は、大分県の小さな田舎町に拠点をもつ「ダブルローカル」を実践しています。
私は、幼少時代を過ごした田舎町で、想いのある100年の歴史ある古民家を譲り受けました。数年前からリノベーションにより古民家再生に取り組んでいます。
その再生活動の中で、都市の仲間を古民家に招き、体験企画を一緒に楽しむ場づくりから、関係人口が増加していく変化の兆しを体感しました。
都会で暮らす人の中には、移住までは無理だけど時には地域に行き、自然や文化、伝統などに触れたいというウォンツ(欲求)があります。
このウォンツを満たす提供手段には、シェアハウス構想、ワークショップ体験の企画運営などが考えられ、私が都市と地域を結ぶハブ的存在になれると考えました。来年は、さらに企画を増やし関係人口の増加に取組みます。
以下には、既存の人口増加政策である「移住人口」と「交流人口」の限界について論じます。
2015年の国税調査では、日本の人口が減少したのは、47都道府県のうち39都道府県となりました。
「地方消滅」などの書籍が出版されるなど、人口減少が続いている地方は、将来に消滅の可能性が出ることが予測されています。
このように、日本全体の人口が減少する中で、既存の地域政策である「移住人口」と「交流人口」の増加策には限界があると考えます。
1つ目の「移住人口の増加策」については、どこかの地域が増えれば、どこかの地域が減るゼロサムゲームを繰り返すだけです。
全国の20歳以上を対象にした2014年の内閣府による世論調査では、地域への移住願望がある人は31.6%で、2005年調査に比べて11ポイントも増加しているデータもあります。一方、実際に移住予定がある人は1%台と、移住へのハードルが高いことが事実なのです。ハードルが高い理由には、仕事先、住まい、友人関係など人生の一大転換となり、理想と現実の間に大きなギャップがあるからです。
2つ目の「交流・観光人口の増加策」については、移住よりはハードルは下がりますが、一過性で地域の仲間づくりにはつながっていません。また、観光集客目的のイベントや祭りでは、地域住民が運営に疲れる「交流疲れ」が課題となっています。
以上から、私のように都市と地域で暮らすダブルローカルが普及すれば関係人口が増え、都市住民も地域住民も豊かになれると考えます。
そして、ダブルローカルへの想いを実現するには、企画アイデアだけでなく、仲間と資金が必要となります。その仲間と資金を集める手段として、クラウドファンディングがあります。私も古民家再生には、クラウドファンディングを活用し仲間と資金を集めることができました。弊社では、地域クラウドファンディングFAAVOの福岡エリアオーナーとして、地域づくりや企業を応援しています。
弊社の月次セミナーでは、クラウドファンディングの仕組みや事例を紹介する実践的な内容です。是非、ご参加お待ちしています。
クラウドファンディング活用に企業参入の兆し
シニア・コンサルタントの原です。
購入型クラウドファンディングの市場は2016年で58億円となり、2015年の32億円から倍増しています。私たちへのセミナー依頼も増えており、2017年に入ってからは、セミナーに参加していない方からの問い合わせも増えています。彼らに共通するのは、自分が取り組んでいる活動への想いが強く、行動力があること。仮にクラウドファンディングで資金が集まらなくても、自分たちでプロジェクトを進めるような人たちです。
FAAVO全体では、この5年で約1000件の実績があり、目標金額の達成率は約70%です。4500万円集まった案件もありますが、平均すると1件あたりの支援金額は50万円弱です。支援者は大半が個人で、20~40代のFacebook世代が中心です
目標とする支援金額の設定は任意ですが、オール・ナッシング方式(目標金額に1円でも足りなければ、入ってくるお金はゼロ。達成した場合は集まった金額から手数料20%を引いた分が、起案者に入る。)とオール・イン方式(達成金額に関係なく集まった金額から手数料20%を引いた分が、起案者に入る。)の2パターンがあります。
募集時期は基本的に30~60日で設定しています。達成する場合は、最初の10日間で目標金額の20%程度まで伸び、締切前の10日間で再び伸びます。その間の期間は、イベントを行うなど特別な活動を行わない限り大きく動くことはありません。様々なデータを分析した結果、今のところ30~60日が適切だと考えています。
テーマと金額を決めた後は、ブログを書く感覚でページを制作できるシステムを用意していますので、プロジェクトの目的や起案者の想い、リターン(お礼)内容、写真などを入力してもらいます。支援者層を明確にし、その人たちに届く内容になるよう助言しながら、一緒に作っていきます。公開後は、FacebookやTwitterなどのSNSでいかに拡散させていくかが課題になります。
達成にはいくつかのポイントがあります。まず、告知ページのタイトルが何より重要です。支援者はページを見て約3分で支援をするか否かを判断するというデータもあり、タイトルと写真のインパクトが達成に大きく寄与します。
公開後は、プロジェクトに向けた取り組みや動きを発信することも大切です。FAAVOでは「レポート」という機能があり、そこに情報や想いを多くアップするほど達成率も上がる傾向にあります。こうした情報が共感を呼び、締切直前に最後の支援の伸びにもつながることもあります。支援者層を明確にして、彼らが喜び、参加意識が高まるようなリターン(達成時のお礼)を用意することも達成へのカギになってきます。
これまでは社会的、イベント的な案件が中心でした。ただ、2017年に入って商品開発や販路展開などビジネス要素の強い案件の相談・セミナー依頼が増えており、今年はビジネス系にも広まりを見せていくと思います。これまで企業は様子見のところもありましたが、目的やテーマ、ターゲットを明確にして魅力的なリターンがあれば、これまでの案件と同じ、もしくはそれ以上の結果が期待できます。
クラウドファンディングは、テストマーケティングの一環として活用できるうえ、融資を受けた場合と違って返済も不要です。通常は投資後に、販売や来店につながるかという不安がありますが、クラウドファンディングでは支援者=強力な見込み客であり、顧客リストになります。仮に達成できなくても特に費用が発生するわけでもなく、コンセプトの見直しや分析に役立てることもできます。
こうした市場の伸びに、金融機関も注目しています。面白そうな事業だけど、融資まではできないプロジェクトには、クラウドファンディングを紹介するケースも増えています。そこで成功すれば、次は融資交渉に利用できる実績にもなりますし、投資額が少額(100万円程度など)の事業には、ぴったりということもあります。
★ー9月セミナー開催のお知らせー★
『クラウドファンディングFAAVOを活用した、テスト・マーケティング』
●日時 2017年9月22日(金)19:00〜21:00
●対象 経営者、後継者、商品やサービス開発、企画立案、人事ご担当者、
クラウドファンディングに取組みたい方
●定員 10名程度
●会場 福岡市中央区赤坂1-13-10 赤坂有楽ビル3F
「㈱ビズ・ナビ&カンパニー セミナールーム」
※地下鉄赤坂駅から徒歩1分。1階に「カフェ ベローチェ」があります。
●内容 商品開発や企画サービスのテストマーケティング手法
毎回、新商品・サービス開発または改良に、実際に取り組んでいるプロジェクトテーマについて、テスト・マーケティングの手法を取り入れた実践的な勉強会です。
●タイム・スケジュール
【1部】
・クラウドファンディングFAAVOを活用したテスト・マーケティング(30分)
・事例紹介(30分)
(休憩5分)
【2部】
・参加者によるワークショップ(60分)
・「もしも、あなたが起案者だったら?」
●講師 原 秀治
●参加費 5,000円/人
※当日、現金にて徴収いたします。領収書は準備しておきます。
●申込 弊社、申込みフォームよりご連絡下さい。
経営者が知っておくべきM&A
早嶋です。
目標とギャップの売上が確保出来ないから、とりあえずM&Aでシェアを買おう的な発想があります。しかし、その後、どのように買い手にアプローチするのか?M&A全体のプロセスはどうなっているのか?資本を入れた組織をどのように同業していくのか?などを考えずにFA(M&Aを進めるコンサルタント)に丸投げする場合があります。
ギャプを埋める行動があればまだいいほうです。中には、余裕資産があるから、とにかくM&Aしたいというのもあります。その場合、明確な投資ルールや買収方針があれば良いのですが、勢いだけで何もでてこない場合、買収することができたとしてもその先がありません。
そもそもM&Aとは、企業の合弁や買収を指します。また、企業や事業、あるいは資産を取得する際の方法は様々なものがあります。吸収合併、株式取得、TOBなどの移管、事業譲渡、会社分割、業務提携、OEM提携等です。つまり、その手法そのものは単なる手段であり戦略を実現するための選択肢に過ぎないのす。
近年、大企業を中心にM&Aは盛んです。理由は国内のビジネス環境が低迷しているので、異業種参入や新規ビジネスを目的として時間やノウハウを取得する。或いは、同じビジネスを海外で展開する時にやはり時間やノウハウを取得するという場合です。
どちらも明確な目的がありますので、その目的を達成するための手段として自前で行うか、資本を入れて行うかの選択が戦略になります。従って、M&Aの成功の定義は戦略のゴールである目的を達成できたか否かが重要です。
企業によっては、明確に企業戦略に紐付いた形でM&A部隊が組織されているところもあれば、単にM&Aという言葉が独り歩きして、案件を持っていくも、或いは案件が外からやってきても、その企業は詳細な分析ばかりに時間をかけて精査することに時間を費やしている担当者を多数みます。
そもそも戦略があれば、案件が持ち込まれた時点でその案件が当初の目的を果たすか否かはある程度スクリーニングできます。しかし、始めからその方針が不明確な場合が多いと感じます。
企業の評価に対しても同様です。その企業がバリューか否かは、最終的に買い手が判断することになります。他の同業者が価値を感じなくとも、自社の明確なゴールを満たすために、この部分を補ってシナジーを出すことがでることが分かった。そしてそれを自社で行った場合の比較をすると、資本を入れた方が遥かに合理的だという仮説が立てば、高いものではありません。
つまり、企業の評価をするにも、主体は買い手になるということです。バリュエーションも基本的には業者に丸投げをしてしまうと、全く意味のない算数で鉛筆ナメナメの数字が出てくるだけなのです。
M&Aで成功しない企業の特色は、買うことがゴールになっていく企業です。そもそもの目的がないので、今取り組んでいることがゴールになり、交渉を進めるうちに案件の不備が見つかっても、ウィナーズカースに陥りとにかく進めるスタイルです。この場合は、企業に資本を入れることは出来ますが、その後の経営が全くみえません。
通常は、基本合意を結ぶ段階で、その後の統合チームをまとめ買収完了ともにどのように統合して、自社の戦略を進めるかを議論し始めます。当然、この段階で誰が新しい組織をマネジメントするかも明確になっています。が、実際はPMIなどもあまり行わない。そもそも買収後に誰が社長とするかを決める企業も案外と多いものです。それは上手く行かないでしょう。
買い手企業として案件を獲得する場合も考えるべきことがあります。M&Aの案件、つまり売り物件は水物だということです。デパートに行って、そこに自社の戦略を満たす案件があるかと言えば、その確率はほぼゼロに近いです。買い手の意志で明確に探す必要があります。
理解していない経営者は、M&Aで解決したと思います。そこで部隊を作り丸投げします。実際、その部隊も試行錯誤しながら案件を探しに行ったり、案件のオファーをもらうようになります。しかし、FAの立場からして、その組織に何度か話をして、経営者の判断が遅い場合は、次から案件を持ち込まなくなります。理由は、商売にならないからです。
M&Aの案件の性質を考えた場合、通常の経営の意思決定をしていては時間がかかって、逃してしまいます。従って、M&Aを考えているのであればその判断や意思決定は経営陣の中でどのようにすべきかを明確に議論しておくことも必要です。
ビックデータの市場の番人
早嶋です。
「市場の番人」ということで、公正取引委員会がデータの独占にメスを入れ始めます。主な概要は、ビックデータを企業活動の資源と捉え、不当なデータ独占や囲い込みを独占禁止法の適応にする方向性を示したことです。事例を説明する報告書の中では、グーグル、フェイスブック、アマゾンなどのプラットフォーマーの名称が出ていました。
このニュースを見て3週間くらいの前の日経新聞に、強すぎる米ITビック5として、アップル、アルファベット(グーグルの持株会社)、マイクロソフト、フェイスブック、アマゾンが紹介されていたのを思い出しました。米国ではこの企業が圧倒的にITの分野を中心に勢いがよく、他のIT企業が苦戦している、顧客を奪われているという内容の記事でした。
実際、当時の記事を参考にするとビック5と他の企業の時価総額に大きな差が出ています。
アップル:8252億ドル
アルファベット:6522億ドル
マイクロソフト:5273億ドル
アマゾン:4661億ドル
フェイスブック:4365億ドル
です。
対して、IBMは1410億ドル、スナップで238億ドルと上位トップ5の時価総額が突出していることがわかります。時価総額は株価と発行枚数の積算で、株価そのものは将来の収益の現在価格で示されますから、差がついていると言っても過言ではありません。
ビック5に代表される企業は、世界中に億単位の利用者がいて、誰が何を買い、どのようなワードに興味があり、どのような行動の傾向が高いか、などの情報を常に蓄積していきます。
今回アップルも発表したようにAIスピーカーなどは、この情報収集を加速する動きになると考えることも可能です(アップルの場合、情報を一度分析して、その情報はクラウドに上げないと表明していましたが。)。IoTの進歩により、ウェアラブルデバイスのデータや身近なデータが全て統合的に分析され蓄積されていきます。
このデータを活用して利潤を追求する動きは自然な流れです。顧客よりも顧客のことを知ることが出来る次期もすぐやってきます。実際に、ビックデータから言えることは人間以上に人間の行動を理解しているケースも多数でています。
一方で、個人情報を提出しなければサービスを提供させない、他社へ乗り換えを阻止するために必要なデータは他者に開示しない、などです。これは明らかに独占禁止にあたるよね、という報告書です。
当たり前ですが、公取委はこれまでの領域は交渉による談合のような伝統的な、アナログなやり方に目を光らせていました。しかし、ここにもデジタル化の波がやってきて、ようやく追いつくカタチになっています。
一方で、プラットフォーマーも企業努力を重ね、莫大な利益を更にシステムやコンピュータに投資した結果出来上がった仕組みなので、すんなりそうですねとも行かないでしょうね。
今後、更にAI化とIoT化は進みます。このような議論が始まることは消費者側と企業側にも良いことだと思います。この流れはウォッチしていきたいですね。
統合と数字の細分化を強めた時の愚。
早嶋です。
ある企業では、年間の数値目標を490に設定しています。期首から2ヶ月たった現時点で実績は105。ギャップは今の時点で385です。この時点で年間の達成の確率をどのように考えるか。これは実際の事例で、ある地域である事業を行っている企業の事例です。
元々、そのビジネスは地域ごとに細分化されており、全く別組織として運営されていました。それが2000年頃に複数の地域が統合され1つの組織として運営されるようになりました。しかし、その組織はそれから10年以上経過しているにも関わらず、管理の仕方は昔のままで、未だにその地域単位で計画を立て、地域から積み上がった計画をベースに全体の目標を設定しています。
例えば、統合する前の地域はF、N、S、M、O、Kという地域でした。そして各地域には統括本部があり統合する前は各本部が地域の数値管理を行っていました。各地域には10から20の支店があり、その支店の売上合計が各地域の売上になっていました。
Fの実績は60、年間目標は140、ギャップは80。
Nの実績は10、年間目標は60、ギャップは50。
Sの実績は10、年間目標は60、ギャップは50。
Mの実績は10、年間目標は70、ギャップは60。
Oの実績は10、年間目標は90、ギャップは80。
Kの実績は5、年間目標は70、ギャップは65。
これをみると、
計画を上回る地域はF
概ね計画通りの推移を示す地域は、N、S、M
若干未達になりそうな地域は、M、O
計画を下回る地域はK
ということがわかります。
通常の感覚であれば、2ヶ月経過した段階でKの進ちょくを確認し、10ヶ月後も大幅に計画未達と推定された場合は他のエリアで調整できないか等の検討を行うでしょう。しかしこの組織は、各地域のセクショナリズムが極めて強く、かつ計画に対して期中にフィードバックする文化が全くありません。
驚くべきことに、それが各地域の支店に対しても同様でした。例えば、計画通り経営しているように見えるNの地域は、10の支店があります。それぞれの支店にも上記のように年間の目標、月間と詳細に目標が設定されています。そして、毎月目標とギャプの管理をしています。ある店舗は計画を上回るペースで推移していて、ある店舗は計画を下回るペースで推移しています。だからと言って期中に店舗ごとの調整を行うことはありません。しかも計画を律儀に守る文化があり、期中に調子の良い支店は年間の売上に帳尻があるように後半はペースを落とすため計画を大幅に上回った実績を上げる店舗がないのです。
つまり、計画を下回る店舗の数だけ目標とのギャップが増えて行くのです。景気が良くて、経済が右肩あがりの時は良かったでしょう。おそらく全店舗目標達成という絵図がかけていたと思います。しかしここ10年以上は経済は低迷して、店舗が全て計画通り行っていません。
文化や慣れというのは怖いもので、店舗の統合や地域の統合を行うことも無く、見た目上は統廃合を行っているのですが、実際の運営は20年以上も前からの仕組みで、全くと言ってよいほど統合効果がないのです。
整理すると、この企業の特徴は次の通りでした。
●組織運営形態は昔からの取り組み方を守り、戦略と一切紐付けられていない。
●目標と計画は細かく設定している。各地域、各支店レベルで細分化し、年間、毎月、毎日のギャップを速報で管理している。にも関わらず、担当地域、全体での整合性の調整などは全く行われない。
●強烈な部分最適に陥り、全体がどのようになっているかを組織で把握している人が殆どいない。
●計画を修正するどころか、徹底的に守る文化が強く、計画よりも伸びる可能性があっても途中でスピードを緩めてしまう。
少しデフォルメして書いている部分もありますが、全国に一律に存在していて、何らかの規制やルールで守られていた企業に観察できる事項です。このような企業は企業戦略や事業戦略の区別が無く、また組織の効率化を鑑みて機能を全店舗で統合する動きも極めて鈍いです。組織の規模が大きくて、ネームバリューが高いから離職する人も少ないのでしょう。結果的に、その組織でどっぷりと時間を経過した社員は、何ら疑問を持つこと無く仕事を続けているのです。
日本企業の生産性が低い理由は、非常に単純なことがベースで、外の組織の人間が診断するとあっという間に原因がみえてしまうかもしれません。しかし、その仕組はその組織に根付いています。強烈な刀を振りかざさねければそう簡単には変えられないのが現状です。
なぜ成長戦略は達成しないのか?
早嶋です。
本日の日経の社説は「成長戦略はなぜ成果を出せないか」でした。その内容は久々に的を射ていると感じました。
成長戦略において、矢継ぎ早に新政策を打ち出している一方で、過去の政策目標が未達になった原因を分析していないという指摘です。要は、数値目標を高々に掲げるものの、未達になったらあたかも無かったかのようにして別の新政策を掲げて利害関係者の記憶から消し去ろう的な意図を感じるのです。
今回の社説は国の政策に対してですが、企業にも当てはまる部分を感じます。計画を立て、その計画が達成出来ない場合に、伸びしろを感じる企業や実際に収益を上げている企業は徹底的に原因を究明して、将来の経営に活用しています。
一方、どんどん業績を落としている企業は、原因を追求しないで、あるいはその解明の仕方が分からないまま、その場しのぎの対応を続けています。それらは値下げ、人件費削減、子会社や関連会社、或いは下請けの会社に責任を押し付けて終了という極めて意味のない行動です。
何故、そのような取組になっているかと言えば、私の仮説ですが、目標数字の細分化ができていないか、そもそもの目標に対して合理性がないかです。世の中の上場企業は別として、非上場企業のガバナンスは驚くほど低いと感じます。
計画は存在するものの、一切メンテナンスがされていなく作ることが目的になっています。或いは、大枠の数字のみが記載されていて、それらを達成するために、誰が、いつまでに、どの程度の確度で、どのくらいのボリュームをすべきか?が机上の空論レベルでも議論がされていません。
酷い例で言えば、売上目標の根拠は無く、毎年1億積み上げる。というような気合と根性の世界で数字を創っているところもあります。或いは、足りない部分を新規ビジネスで創出するとして、具体的に何をどうするのか?を考えないで終わっている企業も多数観察してきました。
計画を立てたからといって、達成できない。だから立てるのは意味はない。というのではなく、ある程度、考えて整理する。それらを実行しながら修正して、何故できたのか?何故達成できないのか?を常に考えて貪欲に達成するための方法を考えて実行することに意味があると思うのです。
弊社では、事業実践塾として弊社に来社して頂き、事業計画をブラッシュアップして達成するための塾を毎月開催しています。
最新記事の投稿
最新のコメント
カテゴリー
リンク
RSS
アーカイブ
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2021年1月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年4月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年9月
- 2017年8月
- 2017年7月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年9月
- 2016年8月
- 2016年7月
- 2016年6月
- 2016年5月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年9月
- 2015年8月
- 2015年7月
- 2015年6月
- 2015年5月
- 2015年4月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2015年1月
- 2014年12月
- 2014年11月
- 2014年10月
- 2014年9月
- 2014年8月
- 2014年7月
- 2014年6月
- 2014年5月
- 2014年4月
- 2014年3月
- 2014年2月
- 2014年1月
- 2013年12月
- 2013年11月
- 2013年10月
- 2013年9月
- 2013年8月
- 2013年7月
- 2013年6月
- 2013年5月
- 2013年4月
- 2013年3月
- 2013年2月
- 2013年1月
- 2012年12月
- 2012年11月
- 2012年10月
- 2012年9月
- 2012年8月
- 2012年7月
- 2012年6月
- 2012年5月
- 2012年4月
- 2012年3月
- 2012年2月
- 2012年1月
- 2011年12月
- 2011年11月
- 2011年10月
- 2011年9月
- 2011年8月
- 2011年7月
- 2011年6月
- 2011年5月
- 2011年4月
- 2011年3月
- 2011年2月
- 2011年1月
- 2010年12月
- 2010年11月
- 2010年10月
- 2010年9月
- 2010年8月
- 2010年7月
- 2010年6月
- 2010年5月
- 2010年4月
- 2010年3月
- 2010年2月
- 2010年1月
- 2009年12月
- 2009年11月
- 2009年10月
- 2009年9月
- 2009年8月
- 2009年7月
- 2009年6月
- 2009年5月
- 2009年4月
- 2009年3月
- 2009年2月
- 2009年1月
- 2008年12月
- 2008年11月
- 2008年10月
- 2008年9月
- 2008年8月
- 2008年7月
- 2008年6月
- 2008年5月
- 2008年4月
- 2008年3月
- 2008年2月
- 2008年1月
- 2007年12月
- 2007年11月
- 2007年10月
- 2007年9月
- 2007年8月
- 2007年7月
- 2007年6月
- 2007年5月
- 2007年4月
- 2007年3月
- 2007年2月
- 2007年1月
- 2006年12月
- 2006年11月
- 2006年10月
- 2006年9月
- 2006年8月
- 2006年7月
- 2006年6月
- 2006年5月
- 2006年4月
- 2006年3月
- 2006年2月
- 2006年1月
- 2005年12月
- 2005年11月
- 2005年10月
- 2005年9月
- 2005年8月
- 2005年7月
- 2005年6月
- 2005年5月
- 2005年4月