早嶋です。約2100文字。
「最近の若者はすぐ辞める」「3年で3割が離職」という言説は、一見、最近の現象のように語られるが、実際は誤りだ。大卒の3年以内3割離職は、1995年以降ほぼ30年間ずっと続いている構造的傾向で、直近だけが特別に離職率が高いわけではない。むしろ高卒では、2000年前後は3年以内に5割が離職というより厳しい時期があり、現在(約38〜40%)は改善しているのだ。そのため「最近の若者は〜」という議論は、データを見る限りミスリードであり、早期離職は昔から一貫して存在する労働市場の特性と捉えるべきなのだ。
厚労省「新規学卒就職者の在職期間別離職状況」および同内容を引用した統計記事より数字を引っ張ってきた。
■ 大卒「就職後3年以内離職率(%)」(主要年のみ抜粋、1990年代〜2020年代)1995年から2025の約30年間、ずっと「3年で3割前後」でほぼ固定している。直近だけが特別高いわけではなく、むしろ2000年前後の方が高かったことが分かる。
卒業年 離職率
1992年 23.7%(突出して低い)
1994年 27.9%
1995年以降:30%台が定着
1996年 33.6%
1999年 34.3%
2000年 36.5%
2001〜2004年 35〜37%(山の時期)
2007年 31.1%
2009年 28.8%(リーマン後の低さ)
2013〜2019年 31〜33%
2021年 34.9%
2022年 33.8%
■ 高卒「就職後3年以内離職率(%)」(主要年のみ抜粋、1990年代〜2020年代)
2000年前後は「3年で半分が辞める」という極めて高い水準だった。現在(約38〜40%)は当時より明確に低く改善していることが分かる。
卒業年 離職率
1995年 46.6%
1996〜2004年 47〜50%(ピーク帯、最大50.3%)
2006年 44.4%
2007年 40.4%
2008年 37.6%
2010〜2016年 39〜41%
2018年 36.9%
2021年 38.4%
2022年 37.9%
厚生労働省の統計を30年スパンで確認すると、離職率は構造的な数値でむしろ高卒の離職率は改善していることがわかる。
大卒に関しては、就職後3年以内に約3割が離職するという構図は、1995年以降ほぼ一貫して続く。むしろ2000年前後には35%から37%と、現在より高い時期もあった。言い換えれば、現在の離職率は例外的に高いどころか、過去30年間の延長線上にある安定したトレンドなのだ。
一方で高卒については、2000年前後は3年以内に5割が離職するという極めて高い水準だった。しかしその後は改善が進み、現在は約38%から40%程度まで低下している。つまり、高卒の早期離職率は長期的にはむしろ良くなっているのだ。
これらを総合すると、「最近の若者はすぐ辞める」という言説は、統計的には支持されない。若者の離職率はこの30年間で大きく増えていないどころか、部分的には改善すらしている。早期離職は現代特有ではなく、日本の労働市場に長く根付いた構造的な現象であり、若者の気質変化ではなく、職場環境・労働条件・キャリア観・産業構造などの要因に左右され続けてきた結果なのだ。
ここに一つ、補足の議論を加えたい。それは、高卒離職率の高さを説明する要因として、しばしば挙げられる「女性の結婚退職(いわゆる寿退社)」についてである。確かに1990年代前半までは、女性が20代前半で結婚を機に離職することが一般的で、高卒女性の離職率を押し上げていた側面は否定できない。これは統計の年齢帯とも重なっており、一定の影響を与えていたことは確かだろう。
しかし、結婚退職は高卒離職率のピーク(1996年から2004年、離職率47%から50%)を生み出した主因ではない。理由は明確だ。
まず、女性の結婚後の就業継続が本格的に増加したのは2005年以降で、離職率ピークの時期と一致しない。次に、同時期の高卒男性の3年以内離職率も40%から45%と極めて高く、女性だけに起因した現象とは言えない。更に、企業側要因、バブル崩壊後の雇用悪化、非正規化の進行、労働負荷の高い業種構造、小売・飲食・製造などにおける労働環境の厳しさが高卒離職の主因として強く作用していたことが分かっている。加えて、2010年代に離職率が低下した背景も、女性の継続就業が増えたからだけでは説明できない。むしろ、人手不足の深刻化に伴う企業の離職防止施策、労働条件の改善、若年層に対する研修整備、働き方改革に伴う時間外労働の抑制など、企業側の努力による部分が大きい。結果として、かつてよりマッチングが改善し、辞めにくい職場が増えたことの方が説明力を持つ。
以上の事実を踏まえると、「最近の若者はすぐ辞める」という言説は、データにも歴史的推移にも支えられていないのだ。むしろ、1990年代後半から2000年代初頭にかけての方が、離職率は高卒・大卒ともに高かった。早期離職は新しい現象ではなく、労働市場の構造変化、景気循環、業種ごとの労働環境、企業側の受け皿の質といった要因の中で長く続いてきたものである。若者の気質の変化よりも、労働環境や採用構造の側に目を向けた方が、実態に即した理解につながるだろう。









