ジョブ型社員の解雇に見る今後の組織戦略

2025年11月24日 月曜日

早嶋です。約2000文字です。

「ジョブ型社員・解雇は容易か?(2025年11月24日・日経朝刊)」をベースに、
日本企業の低迷と今後の提言について考えた。

記事の概要はこうだ。三菱UFJ銀行が、年収3,000万円の専門職人材を、業務廃止を理由に解雇した。その有効性を東京高裁が認め、判決が確定した。大きなポイントは、職務(ジョブ)を契約上限定した高度専門人材は、職務そのものが消滅した場合、整理解雇の4要素を満たせば解雇が可能になる、と司法が明確に示したことだ。

「整理解雇の4要素」とは、1975年の判例以来、日本の労働法で基準となっている判断枠組みだ。人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、手続きの妥当性
の4つだ。この条件を満たすか否かで解雇の正当性が判断される。

人員削減の必要性は、会社が事業撤退や部門縮小など、合理的な理由で人員整理を行う必要があるかだ。解雇回避努力は、配転・教育・再配置・希望退職募集など、解雇以外の手段を尽くしたかだ。3つ目の人選の合理性は、解雇される人の選定基準が客観的で、公正かだ。そして最後は、手続きの妥当性だ。説明や協議を適切な手順で行い、透明性があったかだ。

今回の判決では、三菱UFJ銀行が業務移管先への受入れ打診、別職種の提案、再就職支援金提示(4600万円)など、解雇回避努力を尽くした点が重要だった。裁判所は、年収3,000万円という専門性と市場流動性の高さを考慮し、「同水準の職務を新しく作る義務まではない」と判断した。もちろん、いきなり解雇ができるわけではない。しかし、今回の判決は「市場価値に応じた人材の流動化」を示唆する強いメッセージだ。

今後、ジョブ型採用を前提に、専門性の高い人材を外部から積極的に採用する企業は、より挑戦的で、大胆な経営判断ができるようになると思う。新規事業を立ち上げ、失敗したら解散し、専門人材を次へ送る。この循環が、産業や組織の新陳代謝を生み、競争力を高める。一方で、従来型のメンバーシップ雇用の企業は、労働組合との関係や、社内の「公平感」に縛られ、大胆なジョブ型採用を実行できない。

例えば、新規IT化で1000人分の事務を数人の高度専門職で代替できるとしても、
「平均700万円の会社で、年収2000万円を払うことは不公平だ」という理由で止まるだろう。結果として、変化を恐れて現状維持を選択する企業と、変化を前提に市場と向き合う企業の間に、決定的な差 が生まれるのだ。

たとえば、自動車産業は象徴的だ。世界は、自動運転レベル4・レベル5に向けて熾烈な競争を続けている。テスラ、Waymo、BYDは、膨大な走行データを機械学習し、アルゴリズムを強化し続けている。本質は「データを蓄積した者が勝つ」構造だ。一方、日本はどうか。安全性や法規制、社会受容性を理由に、議論は「慎重」ではなく、ほとんど「停止」していた。そして、労働組合は運転手の雇用維持を理由に、自動運転の本格導入に消極的だった。しかし、反対し続けることで守れるのは数年の猶予だけで、最終的には、変化を受け入れた国と企業が全て奪っていくことになるのだ。

地方公共交通はさらに深刻だ。人口減少、運転手不足、採算悪化。本来なら、AIによるダイヤ編成、自動運転バス、オンデマンド交通が必須になるはずだ。しかし多くの自治体は、「既存雇用の保護」を理由に新しい仕組みを拒んできた。結果として、利用者は更に減り路線は縮小している。サービスの質も落ち、最終的には撤退し、地域ごと交通網が消えるのだ。守ることが目的化する組織は、最後に自らの存在を失う。その典型だと思う。

メディア産業も同じ構造に見える。テレビ局や新聞社は、デジタルへの本格転換を「既存モデルの保護」を理由に遅らせてきた。結果、若者の接触率は激減し、広告はGAFAに吸い取られた。にもかかわらず、彼らが主張するのは日本の文化の危機だ。デジタルは質が低いとか、既存メディアの維持が必要だとか、導入しない前提を軸に議論すら進めていない。しかし市場は既に別次元に移動している。変わるべきは世界ではなく、自分たちなのだ。

短期的に雇用を守ろうとする力は、長期的に雇用を破壊する。自動運転を反対してバス会社全体が衰退する構造と、何も変わらない。雇用の流動性の低さ、労働組合の硬直化、内部の公平性の呪縛。これらは、日本企業が30年停滞した本質的原因のひとつだ、と私は考える。

未来の企業は、二つに分かれるだろう。
① 高度専門人材を市場価値で採用し、新陳代謝を前提に挑戦する企業。
② 内部公平性を守るために挑戦できず、緩やかに衰退する企業。
今回の判決は、日本がどちらの道を選ぶかを問うメッセージだ。未来は、挑戦する者だけに開かれている。皆さんはどちらを選びたいだろうか?



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