中途半端な正義

2025年3月13日 木曜日

早嶋です。

国際刑事裁判所(ICC)は、フィリピンの元大統領ロドリゴ・ドゥテルテ氏を、ダバオ市長および大統領在任中に行われた「麻薬戦争」における超法規的な殺人や人権侵害に関与した疑いで逮捕し、オランダのハーグに移送た。 ICCは、ジェノサイドや人道に対する罪など、最も重大な国際犯罪を扱う国際的な裁判所だとされる。各国の司法制度がこれらの犯罪を適切に追及できない場合に介入するのだ。 フィリピン政府がドゥテルテ氏の行為に対して適切な法的措置を講じていないと判断したのだ、ICCは独自の捜査を開始し、逮捕に至った。この逮捕は、ドゥテルテ氏の「麻薬戦争」において数千人が殺害されたとされる事件に対する国際的な責任追及の一環で、被害者やその家族にとっては正義への重要な一歩と受け止められている。一方で、「麻薬戦争」で被害を受け続けたた一般市民からすると英雄であるドテルテの逮捕には反対の声があり、フィリピン国内では賛否両論の状態だ。

ICCについて思い調べた。上記が正義ならば、なぜに北朝鮮に目を向けないのかだ。調べてみると、政治的、法的な理由があった。ずばり北朝鮮はICCの管轄外なのだ。そして、フィリピンは過去にICCの加盟国であり、ドゥテルテ政権の人権侵害について捜査を受ける根拠があったのだ。しかし、北朝鮮はICCの加盟国ではない。ICCは加盟国の犯罪、または国連安全保障理事会(UNSC)の決議を受けた場合のみ捜査権を持つ。そのためICC単独では北朝鮮に対する法的な管轄権を持たないのが大きな理由だ。

もし、ICCが北朝鮮の犯罪を捜査するには、国連安全保障理事会(UNSC)の承認が必要となる。しかし、中国とロシアが北朝鮮を擁護し、拒否権を行使する可能性が非常に高いため、ICCによる正式な調査が進められないのだ。ドゥテルテの場合、フィリピンは国際社会との関係を持ち、国内にICC加盟国の協力者がいたため、圧力をかける余地があった。一方で、北朝鮮は完全な独裁体制で、国内での逮捕は不可能なのだ。さらに、金正恩は他国へほとんど渡航せず、身柄を拘束するチャンスがほぼなかった。今回、ドテルテは香港から家族で帰国する際に身柄を拘束されている。ドテルテ自身も考えが甘かったのだ。

何人かは茶番だと思わなかっただろうか。ICCの今回の動きに対して。

ICC(国際刑事裁判所)が北朝鮮、中国、ロシアのような国に対して直接手を下せないのは、現実的な国際政治の力関係が影響しているからだ。強国や独裁国家が加盟していないために、ICCの影響が及ばないというのは、まさにICCの限界であり、国際法の矛盾だ。

正義と矛盾は今後もなくなることはないだろう。ICCのような組織は、「普遍的な正義」を掲げているが、実際には「加盟国の合意と協力」がなければ機能しない。そのため、欧米や一部の国には影響を及ぼせても、中国やロシア、北朝鮮のような独裁国家にはほとんど何もできない。さらに、アメリカもICCの管轄を拒否しており、自国民(特に軍人)をICCで裁かれることを認めていない。

これは国連も同じだ。大国には無力なのだ。国連(UN)も、大国(特に安全保障理事会の常任理事国)は拒否権を持っており、実際には国連の介入を封じ込めることができる。たとえば、ロシアのウクライナ侵攻では、ロシアが拒否権を行使したため、国連は何もできず、国際的な圧力は経済制裁などにとどまっている。常任理事国は、ロシアにまるソビエト連邦の時の権利なので、本来はその権利を一旦剥奪してゼロベースで議論すべきだが、常任理事国がそのような美味しい権利を手放すことなく、今もその椅子に座っている。国連は見た目だけの組織であり機能しないのだ。

従い、国際組織は結果的に都合が良い相手にしか裁きをできなくなる。ICCも同じなのだ。権力基盤の弱い国や、欧米諸国と関係の深い国の指導者しか裁けない。例えば、アフリカ諸国の元指導者や、フィリピンのドゥテルテのようにICC加盟国であった国の指導者には裁きの手が及びやすい。一方で、中国やロシアの指導者を裁くとなると、軍事力や外交の壁に阻まれるため、ICCは事実上何もできない。

従い、何かの違和感が強烈に湧き上がったのだ。本当に裁かれるべき指導者たちが野放しになっている状況は、多くの人々にとって言語化できない要因だ。もしICCが「本当に公平な国際法機関」なら、ウイグル問題やロシアの戦争犯罪、北朝鮮の人権弾圧などを率先して裁くべきだからだ。しかし、現実には国際政治の壁があり、裁ける相手だけを裁いているということだ。

ICCのような国際組織は正義を掲げているが、結局は国際政治の力関係に縛られている。強国や独裁国家が加盟しない限り、ICCの権力は及ばず、本当に裁かれるべき指導者は「特権階級」として逃げ続けることができる。この状況が続く限り、ICCが「公平な正義の機関」ではなく、「都合のいい国だけを裁く組織」と見られるのは避けられないだろう。実現するには、国際社会が本気で大国の免責をなくす仕組みを作るしかない。が、それが現実的に可能かどうかは…無理だろう。



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