磁気記録式メモリー(MRAM)はイノベーションの中心になるか

2021年7月21日 水曜日

◇日経新聞の記事

原田です。

日経新聞7月20日(火)の朝刊に磁気記録式メモリー(MRAM)の記事が掲載されました。普及にめどがついてきたようです。これで日本の産業が、ビジネスのメインストリームに食い込めると期待しています。

この技術は、現在の要素技術のトライアングル、「クラウド」、「AI」、「5G」に続いて、ビジネスに大きなインパクトを与えると思います。

◇テクノロジーの進化は想像以上

データの記録に電子のスピン(回転)を利用するなんて、技術の進化は信じられないです。1ビットの記録が、磁気のS極、N極から、電子のオンオフになって、さらにそこから電子のスピンになって…。

25年くらい前、私はIBMのパソコンをフルセット30万円で購入しました。巨大なブラウン管のディスプレイと、ハードディスクの入った巨大な本体が机の上で大きなスペースを占領していました。その頃は、コンピューターの前でタバコを吸うなといわれていました。タバコの煙の粒子が、磁気ディスクの隙間に入り込むからです。また、ハードディスクが動かなくなったら、ぐるぐる回すといいとも言われていました。そんな物理的な牧歌的な時代から、電子のスピンを利用する時代になりました。もうハードディスクを持ってぐるぐる回ることもないでしょう。なにせ電子がスピンしているのですから!

本当にテクノロジーの進化は予測不可能です。

◇普及と用途

このMRAMは小型の端末に使われます。さらに同時に大量のデータを保存する必要があるAIにも使われます。これらの用途では、従来の1000分の1の電力だそうです。

小型で省電力といえば、まったく同じフレーズだった技術があります。

Bluetoothです。今、Bluetoothはあらゆる電子機器に搭載されています。同じように将来は、MRAMがあらゆる電子機器に搭載されるかもしれません。

ワイヤレスのイヤホンも、スマホにつながず聴けるようになります。同じくスマートウオッチもスマホから独立して機能できるようになります。あらゆる機械に、多くのセンサーを搭載し、同時に利用できるようになります。家畜動物の管理でも活用されるでしょう。牛、豚、鶏だけでなく、魚の養殖も1匹、1匹自動で管理できます。動物や昆虫の生態を観察できるようになります。

もしかしたら人間も徹底的に管理されるかもしれません。今、サッカーは選手一人一人にGPSをつけて、試合の間、選手のデータをとっています。MRAMが普及すれば、さらに進んで、両手、両足、頭にもセンサーがつけられるようになるかもしれません。そうすれば、完全バーチャルリアリティーで選手の目線や動きを再現しながらチャンピオンズリーグ決勝のゴールを選手を選手の立場で体験できるかもしれません。

◇テクノロジーの教養

現代社会はあらゆるビジネスがテクノロジーの進化の影響を受けます。本質的な要素技術のことを理解する必要があります。最近なんでも「DX」という言葉が使われますが、どれだけの人が、本質的なことを理解し、考えているのでしょうか?

「テクノロジーの教養が必要」と、ベンチャーキャピタリストの山本康正さんが著書の「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」に書いていました。この本のなかでは、テクノロジーを関連づける「マップ」の必要性も説いています。

次のテクノロジーで世界はどう変わるのか
最近は、テクノロジーの進化はとても早いですが、山本康正さんの本のように大変わかりやすく全体をまとめた本もあります。「DX」のトランスフォーメーションとはなにか?などという議論よりも、要素技術の基礎知識を理解し、関連付け(マップ)ができるようになったほうがいいです。



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