高年齢者雇用安定法~70歳雇用時代の到来~

2021年3月3日 水曜日

安藤です。

2020年3月に改正高年齢者雇用安定法が成立しました。高年齢者雇用安定法は、少子高齢化が急速に進む中、働く意欲がある誰もが年齢にかかわりなくその能力を発揮できるよう、高齢者が活躍できる環境整備を図るための法律です。働く世代が今後も減っていく以上、高齢者が元気で意欲のあるうちは、少しでも長く働いて社会を支え、若い人達の負担を軽くするという理由があります。改正では、従業員の70歳までの就労確保を努力義務とする規定が盛り込まれ、2021年4月1日に施行されますが、今後の進捗状況を見ながら努力義務から義務化への検討に入ることも成長戦略で名言されています。そして、全ての企業が対象になります。もうあと1か月です。

これまでの高齢者用安定法は、高齢者雇用確保措置は、60歳未満の定年禁止(事業主が定年を定めている場合は、その定年年齢は60歳以上としなければならない。65歳までの雇用確保措置・定年を65歳未満に定めている事業主は、①~③のいずれかの措置を講じなければならない。①65歳までの定年引上げ ②定年廃止 ③65歳までそして、の継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)です。

多くの企業で、上記の③65歳まで再雇用を選択されているかと思います。理由は、再雇用というのは、社員をいったん定年退職させて賃金体系をリセットして新たな雇用契約を結ぶため、企業側からすれば、それ以降は、安い賃金で雇用することが可能になるためとみられます。今回の改正では、この65歳までの雇用義務はそのまま残ります。その上で、さらに65歳から70歳まで働けるようにすることが、努力義務として新たにプラスされることになります。そして、そのために新たに五つの選択肢から選ぶことになっています。

具体的には、最初の三つは、65歳までの選択肢とほぼ同じ内容です。①定年を70歳まで引き上げる。
②定年の廃止。③ そして70歳までの再雇用。これに対して、問題は、後の二つです。④業務委託契約を結ぶ ⑤会社が行う社会貢献事業などに従事するの業務委託契約というのは、いわゆる請負のことです。
会社の仕事を、個人事業主やフリーランスとして業務委託を受けて働く。⑤ の社会貢献事業というのは、会社などが社会貢献のために行っている事業、たとえば復興支援事業とか、こどもへの教育支援とか、そういった活動に参加して一定のお金を会社からもらう働き方です。日本商工会議所(2020年)などが発表した中小企業を対象とした調査では、最も多いのは③の再雇用で56.4%となっています。雇用でない業務委託契約も17.4%に上っています。

一方で、産業・組織心理学では、40~45歳の人生半ばの過度期、50~55歳の50歳の過度期を経て、55~60歳を中年の最盛期、60~65歳を老年への過度期と説明しています(レヴィンソン D.J.Levinson)。定年退職の時期(60歳~65歳)は、準備段階50歳代から含め、ライフサイクルから見ると中年期から老年期の移行期であると捉えています。この時期の変化は、既に身体的な衰えは40代から始まっており、家族関係や夫婦関係の問題も顕在化してくることがあります。職業面では、定年・引退によって地位役割が喪失し経済的にも収入が減少します。定年退職に伴う不安としては、①自分の生活を守っていくことに対する不安 ②帰属集団から離れていく不安③これまでの蓄積を無にされることに対する不満 ④自己実現の場を失う不安が上げられています。


今後70歳まで雇用にあたり、働く側からすると自身の働き方を、ライフシフトの視点で有形資産・無形資産を含めた生き方の視点も捉えながら、社会価値・個性価値・生活価値を整理して働き方を選択していくことも必要になると考えます。また、コロナ禍で益々、自律・自立型のキャリア形成、プロティアンキャリアの時代に
なってきています。70歳まで働くにおいても30代、40代からのキャリア形成、ライフシフトの視点は必須ではないでしょうか。

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