クボタの戦略

2020年6月8日 月曜日

早嶋です。

クボタはインド農機大手のエスコーツとタッグを組んで半額程度の農機を生産して新興国市場を開発します。プロジェクト名はEクボタ。食料需要が高まる新興国の機械化の需要に合わせて販売が増加すると考えているのです。新興国は先進国と比較してまだまだプレーヤーが乱立しており市場を取りに行こうと考えているでしょう。

クボタは1890年創業で設立は1930年です。資本金は2019年12月現在で841億円。同時期の売上は1.9兆円です。主な事業は農業機械・エンジンが66%の1.27兆円。水環境インフラが16%の3,100億円。そして建設機械が16%の3,100億円です。

クボタの各事業の順位は農業機械は国内トップで世界では2位(売上ベース)。建設機械は小型建機に強みがあり、ミニショベルなどは世界シェアトップです。そして、水環境インフラ事業の主力でもある鉄管においては国内シェア6割と安定した事業内容です。

それぞれのポートフォリオは、農機エンジンは国内は99年頃よりステイで海外が増加。建設機械も国内はほぼステイで海外が激増。水環境インフラは減少傾向でここ5年程度にそこをついた感じでステイです。利益は農機と建機で稼いでおり、水環境はとんとんより少し良いくらいです。

国内の競合環境は、ヤンマーと井関農機がありますが売上も営業利益でもクボタがダントツです。

一方、国内の市場を見てみると農家戸数もトラクタ出荷台数も田植機出荷台数もコンバイン出荷台数も90年をピークに減少しています。一方で世界の農業機械の市場規模は平均成長率で9%近い成長がみこまれています。

その海外の首位はなんと言っても米国のジョンディアです。売上はクボタのざっと2倍で、EBITADAベースで利益はクボタの2.5倍程度。そのため時価総額がクボタの1.9兆に対して、ジョンディアは5.5兆の金額です。

他にも世界を見ると競合するメーカーは多く、どの企業もM&Aを繰り返して規模を拡大。そして積極的に自動運転の技術を取り入れる活動を行っています。どのメーカーも自国の成長がステイもしくは日本のように減少するなかで、成長を海外や途上国に向けているのです。

今回の日経の記事ではクボタは積極的にインド市場に進出することを狙っています。インド3位の農機メーカーとタッグを組んで簡易な設計と部品の大量購入の強みを持つ同メーカーと組んで廉価版の商品を開発販売するのです。

クボタの競合であるジョンディアも他の競合も大型機種の売上比率が高く、利益率も高いです。しかし市場は成熟国で新興国の市場伸長ほど期待できません。新興国の食料事情は2010年と比較して2050年には58億トンと1.7倍位伸びる予測です。その市場を席巻する新興国にクボタは勝負をかけ始めているのです。

クボタは海外比率は上述の通り7割をしめますが、低価格帯の弾数は殆どありません。作戦としては、新興国での低価格帯のたまを準備して市場の成長と共に農家の所得を期待して高価格帯のブランドにシフトしてもらう体制を考えているのでしょう。

一方、農家のことを考えた場合、農家は農機を買いたいのではなく、農機を使って自社の農業で儲かりたいのです。格安の農機を提供する作戦だけではローカル企業がやはり優位なはず。パートナーと組んだところでの廉価版の提供は私はうまくいかないのではと考えます。それよりも、農業の主活動である肥料や農薬、土地の開拓や管理、水の管理や天候の予測など、日々の農家の人が自然と対話しながら行っている活動そのものをAIなどを活用して提供し、結果的に農家が儲かる仕組みを導入する。そのツールとしての農機という位置づけを新興国でこそ打ち立てればと思います。

基本的に貧困層ほど利益にうるさいのです。高価な投資をしたら、相応のリターンが戻るのであれば農家は迷わず収益性の良い商品を選択します。いわゆるスマートアグリの取り組みをガンガン普及させることが私は戦略の方向性では無いかと思っています。





参照:日本経済新聞 朝刊 2020年5月26日
参照:各種WebサイトとIR



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