やる気を高める考え方と行動

2020年3月23日 月曜日

早嶋です。

モチベーションが上がる時ってどのようなときですか?と尋ねた時に上がる上位に目標を自分で決めて挑戦しているとき。と回答される方が多々います。実際に目標を上手に設定することは組織やリーダーシップでも研究が進んでいます。

1981年、カナダの心理学者アルバート・バンデューラは算数が苦手が小学校中学年の子供40名を集めて実験を行いました。実験は40人の子どもたちに、7回に分けて42ページの問題を解かせます。その際に子供を3つのグループに分けました。

A:毎回最低6ページ終わらせようと伝える
B:7回で42ページ終わらせようと伝える
C:できるだけたくさんやろうと伝える(具体的な指示なし)

結果、グループA、B、Cの順に問題集を終わらせることが出来たのです。ちなみにAは74%、Bは55%、Cは53%が無事に問題集を終わらせました。

Bは通常結果目標とか遠隔目標と言われます。マラソンで例えると42.195kmです。結果目標は最終的に達成すべき成果お意識させるため非常に大切です。しかし、行動を毎日、あるいは一定期間コツコツと積み上げている手の仕事や取組に対しては、結果目標だけでは上手くいきません。

そこで大切になるのが通過目標とか近接目標です。通過目標は、結果目標を達成するためのマイルストーンで、達成すべき小さな目標です。マラソンで例えるとまずは5km、そして10kmといった具合です。通過目標を細かく達成することが全体の結果目標につながるイメージをもたせ達成感とともに”できるぞ!”とやる気を保つことが大切です。

上記の実験では、Aは最終的な問題集のクリア(結果目標)と同時に6ページという通過目標を示したため全体よりも平均で2割の小学生が達成できたと説明できます。一方で、BやCのグループは目標設定(結果目標)は立てたものの、通過目標の設定が無く、結果的に達成度合いが低かったのです。

ここで通過目標の設定についてもポイントがあります。それはその積み上げが結果目標に到達するというイメージが常に持てることです。人は結果が予測できたとき(結果予期)は”できるかも”という高揚感が高くなります。また、通過目標を達成するための行動をイメージできる(効力予期)とやる気が出てきます。

このような研究を整理してみると、人がやる気を高めるためには、1)自分の成功体験を持っている、2)他人の成功体験を知っている(疑似体験)、3)勇気づける言葉を知っている、あるいはかけられている、4)心身の状態が良い。と言われています。

そして上記4つのポイントの内、最も重要視されるのが成功体験です。自分で成功できれば自身につながるというのは当たり前のようですが、他者の疑似体験を知っているというのもとても大切なのです。

1985年、心理学者のデール・シャンクとアントワネット・ハンソンは自分よりも立場が上の人の成功体験を知ることよりも、同じくらいの立場の人が成功した体験を知っているときのほうが、自己交換力が高まることを実験で示しています。

一方で、自己学習をしているときに成果が出ない場合は、急激にやる気が出なくなる経験を多く積んでいることでしょう。これは学習性無気力と呼ばれます。この時は、身近な自分を応援している人の言葉がパワーを発揮します。上記の3つ目のポイントの他人の支援そのものです。他社の支援があったり、他社に相談することで、その人のやる気がもとに戻り、再び行動を続けようとするのです。目標達成のための行動持続には、感情的なサポートや他社の支援も大切なのです。

私は、やる気に関しては慣性の法則を信じています。そもそもやる気なんて存在しない。だから、するか、しないか、だと。やる気がでないのではなく、していないからやる気が出ないだけだと思っています。そのために、とにかく何かやり始める。というのがポイントです。すると行動しているからやる気になっている。という状態になり、自己交換力が高まるのです。ちなみに、このような動機づけは着手動機づけと呼ばれているようです。

更に私は、先に言い出しっぺすることもします。つまり、自分が掲げた目標を、周囲の人に話をすることで、なんとなく自分を追い込んで行動するのです。ある意味プレッシャーを掛けて自分を動機づけする手法です。これは宣言効果と呼ばれます。

一方で、目標宣言を行うこと自体が、やる気の喚起に対して逆効果を生む場合もあります。2009年にドイツの心理学者ピーター・ゴルヴィツァーは法学者を目指す32人に実験を行いました。学習意欲を問うアンケートで「できるだけたくさん勉強したい」という内容を答えて頂いているのです。そこで学生を2つのグループに分けました。

A:アンケート結果を他者に見せた上で回収
B:アンケート結果を他者に見せずに回収

その後、AとBに対して様々な対照実験を繰り返した結果、Bの方が平均的に良い成績を収めたのです。これらは代償行為と呼ばれるようになりました。ある欲求が達成されないとき、別の欲求を達成して満足する行為です。目標達成に対して、他者に目標宣言することで満足してしまい、実際に行動をしなくなるというのです。不言実行というのも実は有効というのがここから導かれます。

私の場合で当てはめると、追い込むために他者に目標宣言をする前に、その準備をモクモクとしている。その時は、他者に知られないようにコソコソと取り組む。そしてある程度見えたところで他者に宣言して最後の追い込みをする。というのがこれまでの人生の中で多かったです。



コメントをどうぞ

CAPTCHA