鳥貴族の戦略

2017年8月30日 水曜日

早嶋です。

全品280円均一でデフレ時代の代表選手である鳥貴族が値上げ宣言をした。デフレ環境下で28年間、280円を貫いた同社は苦渋の決断を行ったようだ。鳥貴族は1986年9月に設立、1号店は設立前の1985年に出店している。それから焼き鳥、鳥貴族の単一業態で全メニュー280円均一というビジネスモデルで成長を遂げて来た。

単一業態なので食材調達のスケールメリットが得られる。更に、オペレーションが簡素化されるたローコストオペレーションが可能だ。鳥貴族のこだわりは、同社のWebサイトによると4つある。国産材料、ボリューム(一串90グラムで通常の2倍から3倍)、各店舗で串打ちと仕込みを行う(つまり、セントラルキッチンを持たない)、テーブル席やボックス席だ。

1号店から10年間くらいは低迷していたが、1997年頃よりジワリと成長をはじめ2008年に100店舗超え、2011年に200店舗、2013年に300店舗、2015年に400店舗、2017年に500店舗を超える勢いだ。立地戦略としては繁華街への出店を狙い、特に首都圏、京阪神、中京地区に集中して展開している。

分析すると、大都市圏の繁華街にドミナント出店を行い、地下や中空店舗でテナント料を抑え、ワタミの近くに出店することでマーケティングコストを抑えている事が分かる。

2016年度の国内居酒屋の売上高ランキングを見てみると、モンテローザが1,341億の2009店舗、チムニーが707億の747店舗、大庄が656億の723店舗、ワタミが480億の479店舗、鳥貴族が387億の515店舗となっている。しかし上位4業態は複合ブランドで鳥貴族のみが単一ブランドだ。つまり、このビジネスモデルはこれまで誰も成功するとは思わなかった業態だ。

鳥貴族は、毎日店舗での仕込みを行うため、凡そ5時間、串打ち作業と仕込みを黙々と続けている。それは逆に言えばランチ営業の機会ロスを生んでいると捉えることも出来る。17時以降の飲みニケーションに集中しているため他の顧客層になかなか展開できない。というような課題感を抽出できる。

鳥貴族は現在、2000店舗までの出店を公言してる。しかし単一業態では、マクドナルドが2900店舗、次いでモスフードが1392店舗、スターバックスが1260店舗、BR31が1179店舗、ミスタードーナッツが1165店舗、ケンタッキーが1149店舗、松屋が1073店舗、サイゼリアが1028店舗を見ると、実際単一店舗での展開は1500店舗が限界なのではにか?とも考えられる。

そこで方向性としては、串打ちをセントラルキッチンで行い効率化をはかること。他の鶏肉の料理を増やすこと、これは唐揚げや網焼きなど。セントラルキッチンを導入するとロボットの活用で更に効率を上げることもできるし、店舗の空き時間にランチ営業が可能になる。或いは鳥貴族のノウハウを他の業態に展開して、牛貴族、豚貴族等の展開で違った客層にリーチすることもできる。

しかし、鳥貴族の戦略はぶれないで価格を298円に値上げしたのみ。ちなみにマーケットの反応は好感で10%の値上げに。まぁ、個人投資家は値上げが好きだから何ともいえない。さて、この戦略、どうなるか注目です。



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