カンボジア出張 2016年6月

2016年7月1日 金曜日

早嶋です。

カンボジアに6月26日から7月1日の現地3泊の旅程で出張しました。現地のクライアントと戦略会議をすることが主の目的です。今回はプノンペンではなく、アンコール遺跡群が点在する観光都市であるシェムリアップに行ってきました。3日間で感じたことを備忘録的に記述しています。長いです。

■入国
日本から入国するにはビザが必要。と言っても空港で簡単に習得できる。飛行機を降りるとビザ発行センターがあり、証明写真と飛行場で入手できるビザ書類に記入して30ドルの手数料を払うと手続き完了。混んでいなければ数分で発行される。写真がなければ追加で2ドル払えば取得できるようだ。

今期は雨季で、ピークシーズンの乾季にはシェムリアップの空港からビザ取得、入国まで1時間程度はかかるそうだ。なお、今回はビザ取得から入国まで20分もかかっていない。

■一般的な情報
面積は18.1平方キロメートルで日本の半分弱。人口は2013年の政府統計によれば14.7百万人。首都はプノンペンで民族の9割がクメール(カンボジア)人。言葉はカンボジア語だが主要な施設は英語が通じる。宗教は一部でイスラムの流れを観察できるがほぼ仏教国。治安は良い。

■国民性
仏教国独特の国民性を感じる。敬虔な仏教徒が多く温和で控えめな性格。一方で協調性があり、家族や仲間と過ごす時間を大切にする傾向。しかしながら進んで仕事をしたり考えたりすることが苦手。サービス業としての素質はあると思うので教育の仕方によってはピカピカになる。そもそも人懐っこい性格とニコニコの笑顔が素敵。

国民は概して親日であり目が合えば優しく微笑んでくれ、友好的。一方で、学歴や身分で相手を判断する傾向は日本より強い。見栄やプライド意識が強く、足りない人はコンプレックスを抱えている。

また面白い一面に平等を好む傾向を強く感じる。選択肢として成果報酬か皆平等のペイが良いかと提示した場合、後者の平等を選択する人が多い。カンボジアの社員満足度に昼ごはんの質を高めることがある。従って、ある程度の人数を雇用しているところは、昼ごはんを作る料理人の選択が社員満足度を高める要素の1つのなっている。

部下や社員として注意をする際は、人前で行うのではなく、恥をかかされたと思わないように注意をすると良いと感じる。指摘の仕方を間違うとこちらに意図が無くても、恨みを買うことになるかもしれない。

カンボジアの挨拶にソンペアがある。合掌の形をとりながら、相互に挨拶をする。どうも年下、格下の者が先に挨拶をする傾向があるようだ。目下のものが合掌を鼻のすぐ下あたりで行い、受けた目の上の人は胸のあたりで合掌して返す。位の高い人には、加えて少し膝を曲げて行うというのが正しい礼儀。

■宗教
現在の憲法では上座部仏教(小乗仏教)が国教。管理は宗教省が行う。一方で宗教の自由も認められているので他の1割はイスラム、キリストなどの少数派もいる。

上座部仏教は、日本での主流である大乗仏教とは異なる。試走は大乗仏教の「信じるものは皆救われる」的なものではなく、「生きることは苦しみで、出家をして功徳を積むものが救われる」という出家主義に基づく。また思想の中に輪廻が重視され人々は現世の汚れを清め、来世でのよりよい身分の生まれ変わりを願い功徳を積む。

■ざっくりとした歴史背景
9世紀から13世紀にかけて現在のアンコール遺跡地方を拠点としてインドシナ半島の大部分を支配していた。14世紀以降にタイやベトナムの攻撃を受け徐々に衰退。1884年にフランス保護領でカンボジア王国に、それから1953年にカンボジア王国としてフランスから独立。

歴史上最も悲惨な時期が1970年代から。ロン・ノラら反中親米派がクーデターを起こしシハヌーク政権を打倒。王政を廃止してクメール共和制に移行。親中共産勢力であるクメール・ルージュとの間で内戦。クメール・ルージュが1975年に勝利し、民主カンボジア、いわゆるホル・ポト政権が樹立。ここから大量の自国民虐殺が始まる。1979年にベトナム軍がポル・ポトを攻撃してカンプチア人民共和国(プノンペン政権)を擁立。それからプノンペン政権とタイ国境地帯を拠点とする民主カンボジア三派連合との内戦が始まる。

1991年にパリ和平協定。1992年に国連カンボジア暫定機構の活動が開始され国連カンボジア暫定機構の監視下で制憲議会選挙、新憲法で王政が復活。それから2人首相制連立政権がはじまる。1999年にASEANに加盟、2004年にWTOに加盟、2012年にはASEAN議長国に。現在に至る。

■ざっくりとした外交方針
上述のような歴史的な背景から中立、非同盟、近隣国をはじめとする各国との平和共存を基本的な外交方針にしている。一方で、経済がこれから発展するであろうため国際社会からの援助と投資の取り付けをうまく行っている。

■ざっくりとした経済
2014年のADBの資料によれば、農業がGDP費の30.5%。次いで工業が27.1%。サービス業は42.4%。2015年のIMFの推定値によれば、一人あたりのGDPは1140米ドル。シェムリアップでの新卒採用の月給が120ドル程度、英語が出来て筋が良い若者で200ドルだと高額ということから上記のGDPの肌感覚はあたっていると感じる。

2015年のIMF推定の物価上昇率は1.1%だが、観光地や主要都市での物価はもう少し高いペースで上がっていると思う。

貿易総額は、輸出が107億米ドル、輸入が255億米ドル。内訳は、
輸出が衣類50%、印刷物37%、履物が4%、穀物が2%、ゴムが2%。
輸入が織物が35%、機械9%、電気機器5%、石油製品4%、車両4%。

国内を走っている車はトヨタ自動車が多いが庶民の足はホンダのドリームかその類似商品。フィリピンやベトナムと比較するとバイクの数も未だ少ない感じを受ける。

国の通貨はリエルだが、米ドルがどこでも流通していう。ただし紙幣のみなので、普通にドルと現地通貨のリエルが混合されて流通している。不思議な感覚を受ける。

サブプライムローンで世界経済がダウンする前の2004年から2007年は10%の勢いでの経済成長があった。その影響で2009年までは経済成長率が0.1%まで落ち込んでいるが2010年から再び6%の成長を回復。2011年以降は7%の成長を続けている。この成長率は現地に行けばまやかしの数字ではないことを実感出来る。交通のインフラや建物が急に近代化している中、人の考えや混沌としたところが欧米の感覚になるなど、ソフト面での成長も急速に進んでいる。

建設業とサービス業は今後も安定した成長を見込むと思う。カンボジアでの政治リスクはあるものの、先行者の日本人やパートナー企業とタッグを組みながらの投資活動は他国よりも可能性を秘めていると感じる。

■税金
政治や国のインフラがこれから整備されていることもあり、税金の取り扱いが日々変わっている。カンボジアにもVAT(付加価値税)があり原則は10%で翌月20日までに月次での申告納税がかせられる。また受け取りVATが支払いVATよりも多い場合はその差額を納税する。逆に支払いVATが受け取りVATより多い場合は、差額を翌月以降に繰越し、要件を満たせば感布施申請をすることもできる。つまり10%課税、0%課税、非課税の取り扱いがありややこしい。日本と違ってインボイス方式を取りVATインボイスに従って支払う必要がある。が、カンボジアらいしいところはVAT登録を行っていない業者が実に多いことだ。仮に非登録事業者からVAT請求をされ、VATを支払ったとしても相殺や還付が認められないため事実上のコスト負担になる。更に非登録業者からのサービス提供は源泉徴収税15%の対象となるためダブルパンチでのコスト負担となる。

■車事情
工業の発展が遅れている部分があり、車は輸入になる。従って自転車、バイク、車の順で憧れの対象となる。が首都のプノンペンでは栄えているアジアの都市と同様に超高給者のオンパレード。今回訪れたシェムリアップでは、レクサスのLXやレンジローバーなどの高級車が一部で後はトヨタのSUVが比較的多く走っている。

車には新車では100%税金がかかるため、日本車が500万円だとすると1000万円の価格になる。10年落ちのトヨタのSUVで中古で150万円から200万円が相場のようで公務員の月給レベルが100ドル前後から考えるとものすごい高い買い物であることが分かる。

道は主要なところはアスファルトで舗装されているが、まちなかでも小さな道に入ればドロドロが当たり前。従ってSUVが重宝されるのも理解できる。

交差点などには殆ど信号がなく、皆が適度に譲りあうために交通は流れている。都市部や人がいる箇所では運転手も速度を落としてゆっくり走っているところは他のアジア地域からして考えられない。

マレーシア、インドネシア、フィリピン、カンボジア、タイ、ベトナム。車事情はやはり高値の華で、庶民派頑張ってバイク。車を手にするも中古車のポンコツでもステータス。ブランドニューの車に乗るのは、土地バブルや利権で収益を上げている一部の人に限られている。が首都に行けばそのような人がゴロゴロしてるので、普段見ない車が色々観察できるということだろう。

■タクシー
まちなかを走るタクシーは、トゥクトゥクかバイク。タイのトゥクトゥクと違って、リヤカーを50ccのバイクで化人するタイプでのんびりと移動ができる。初乗りは2ドルで距離は10キロ程度までであれば、この金額で乗れる。他のアジアの国々と違って、思いっきり運転手が高い値段を提示することがない。

■日本との関係
1992年に駐カンボジア特命全権大使を任命して、在カンボジア大使館を17年ぶりに再開している。一方でカンボジア側は1994年に1975年以降閉鎖していた在京カンボジア大使館を再開。2013年に両国関係を戦略的パートナーシップに格上げしている。

日本の援助実績として2014年までの累計で有償資金協力が880億、無償資金協力が1790億、技術協力が800億。2014年のCDC及びCRDBの推計値では主要援助国・機関の支援額は中国318百万ドル、日本が153百万ドル、ADBが126百万ドル、米国86百万ドル、EU75百万ドル、豪69百万ドル。

在留邦人は2014年の数字で2270名。

■アンコールワット
国旗にも記されているように、カンボジアを代表する世界遺産。2011年から2013年の3年間は日本人に人気の観光地ランキングで1位。2014年にはサグラダファミリアと逆転したものの2位で安定した人気を誇る(カンボジアの観光サイト調べ)。

アンコールワットは日本人意外にも人気で訪問する観光客の5割は欧州人。従ってシェムリアップにも多数の欧州系のバカンスを愉しみ人々、その方々を受け入れる施設が多数ある。観光大臣は2020年までには年間400万人の観光客をアンコールワットに誘致する目標を掲げている。従ってシェムリアップの待ちの発展も力を入れている。

カンボジアの三大産業は農業、縫製業、観光。日本恩GDPに対する観光業の比率は3%程度だが、カンボジアの同数字は15%以上。そのためサービス業、それに付随するインフラ設備の投資、資源保護にかかわる予算などを積極的に投資している。



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