養殖ビジネス

2012年9月20日 木曜日

早嶋です。


天然の魚と養殖の魚、さて、どちらが美味しいでしょうか?
多くの方が間違いなく天然!と答えるでしょう。天然の魚が美味しくて、値段が高い。そんな先入観があるとおもいます。しかし最近の養殖技術の進化は素晴らしいものがあり、養殖の魚が美味しい場合が多くなったそうです。また、天然に比べると管理コストがのり、値段が逆転する場合もあるとか。

考えてみれば、魚以外は天然のほうが珍しいです。肉などは交配を重ねて品種改良され、飼料にビールを混ぜて肉質を良くするなど、よく知られています。

養殖ビジネス関連の仕事をしたことがあります。魚種にもよりますが、天然の魚と比較して養殖の魚は身の持ちが良く味も安定しています。天然の魚は直ぐに悪くなりますが、養殖の魚は鮮度あるていど鮮度を保つそうです。実際、ブラインドテストで味を比較しましたが、どっちがどっちかわかりませんでした。むしろ、養殖の魚のほうが身がぷりぷりしていた記憶もあります。

養殖の魚の味が進化した背景の1つに餌の改善がありあす。通常、養殖の魚はいけすの中で市場が好む大きさまで育てられ、出荷前に身質を改善するための餌を食べさ、出荷されます。この身質改善の餌は研究が進み、この餌を食べることにより、出荷時に身が天然の魚のように引き締まり、味が良くなり、鮮度を保つようになるそうです。

養殖の魚が天然の魚と比較して高い理由は、実は流通側のわがままも関係します。例えば、市場が求めるサイズが育てるまでに2年間程度かかる場合、養殖業者は出荷したくても魚のサイズが受け入れられないので、出荷できません。その間、養殖業者は魚に餌を与え続ける必要があります。当然、餌を与え続けることはコストです。そこで、おかしなカラクリが成立しています。

養殖の魚が市場に流れるまでに、養殖業者⇒仲買人⇒小売⇒消費者という流通経路が一般的です。養殖業者は昔からの漁師が行なっている傾向が強くて浜値というのが存在します。市場価格を無視して養殖業者が値段を決めて仲買人に買ってもらうのです。場合によっては仲買人は高い値段で買って安い値段で小売に下ろすこともあります。極端な話ですが。いづれにせよ、これでは仲買人は損をすると考えるのが自然です。

カラクリがあります。養殖業者に餌を提供するのは多くの場合、仲買人なのです。従って、浜値で買っても餌を提供している限り利益をえるのです。よく考えると、仲買人は大きな魚が市場から求められる!という理由でもう少し育てて、と養殖業者に言いますが、これは餌代がかかり、仲買人が儲かる仕組みにもつながります。

因みに、私が取り組んでいたビジネスは、この文化を一気に壊して、養殖業者⇒仲買人⇒消費者の中抜きを行う支援でした。その企業は仲買人としては後発でしたが、餌の技術と飲食店のネットワークがあったので徐々にその文化を壊しています。現在では浜値を徐々に市場価格に合うようにして、一方で市場が求めるサイズももっと柔軟に対応してもらうように仲買人が調整しているのです。つまり、むかしからの文化は、生産者と消費者が情報を交換することができませんでした。それを仲買人が情報を流す役割をはたすことによって、おかしなギャップを解消する、それによって適正なサイズの魚が適正な値段で流通するように工夫していっているのです。

ただ、未だに問題があるのが養殖という消費者の反応。冒頭に書いたようにどうしてもイメージが天然よりも圧倒的に弱い。そこで、新しいブランドを付ける試みも始めています。つまり、認識を変化させるのです。例えば、『育魚(いくぎょ)』『選魚』『ハンドメイドフィッシュ(HMF)』『漁師手作り』などです。アイデアはまだまだ陳腐ですが、養殖のイメージを払拭する新たな呼び名を考えています。どなたか良い呼称は無いでしょうか?



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