本の委託販売の落とし穴

2010年7月1日 木曜日

箱の外で考える。think outside of box. 業界に長くいるとその商習慣が当たり前になってしまう事が多々あります。つまり、箱から出る事が出来なくなるのです。

例えば書籍や雑誌の商習慣です。書店は本の取次会社から販売を委託される形で仕入を行います。そして一定期間内なら自由に返本ができるようになっています。出版社と取次会社と書店の3者の契約に基づくもので、国内の実に9割以上が上記のような委託販売で取引されています。

ちなみに返本OKの期限は新刊本が4カ月。雑誌は45日~60日。

これって書店にとってみれば在庫を抱えるリスクが無いのですが、実は盲点で、書店が経営を甘くしている理由になっていると思います。

出版科学研究所の調べでは、書籍や雑誌の出版点数は年々増加しており2009年で8万点を突破しています(確かに、私も出しているくらいなので、なっとくです)。では返本率はどのくらいなのでしょうか?なんと2009年の返本率は書籍で40.6%、雑誌で36.2%です。書店経営の営業利益率が1%の理由もうなずけますね。

書店の仕事は極点に言うと、売れない本を仕入れては店頭に並べ、返本のために梱包作業を繰り返しているのです。儲かるのは物流屋さんくらい。作業にかかる人件費、物流コスト、時間。ただでさえ低い利益率を圧迫しているのです。

注文しても売れない本は返品するからリスクは無い。このような浅はかな考えが書店の経営を根本的にダメにしているのかもしれません。


早嶋聡史





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