早嶋です。
スマートフォンが普及し、在りとあらゆるデータが基本的に収集できるようになり、マーケティングはデータ分析が当たり前になった。一方で、顧客との接点(コンタクトポイント)は多種多様になりマーケティング環境は複雑化している。そのような環境下、マーケターは短期的な利益の追求と同時に企業価値の向上に貢献すべく難題と向き合う日々を送る。さて、そんなマーケターは今後どのような取組をすべきだろうか。
(3つの特徴)
企業はミッションやビジョンを追求するために、その原資として必要なキャッシュを稼ぐ必要がある。キャッシュは売上から費用を引いた残りだ。同じような商品であれば、顧客は安いものを求める。一方で、価値を認めればそれなりの単価を支払う。そのため基本的に企業が探求すべき取組は独自の価値、つまり安く提供できる仕組みか、それ以外の価値を創造し提供し続けることが大切だ。
全国に同じような形態で事業を展開する企業の特徴は、次の3つがある。どこの企業も業過のトップをベンチマークしており、独自のポジションを確立できないでいる。今改めて自社や商品のポジショニングを明らかにすることが重要だ。
次に、仕組みとしてマーケティングが定着していない点だ。店舗系の事業であれば、売上拡大のために出店して、新商品を提供することで売上を獲得してきた。優れた商品を提供することで来店者が増し、その顧客に対してリピート策を講じるのだ。しかし、盲点はそもそも来店しない顧客にリーチできていないので、少子高齢化と共に顧客の総数が減少しはじめることだ。そのため来店しない顧客に認知を得る取組が重要になる。
最後に、比較的大きな組織で観察される特徴は、組織が連携せずに各々の機能が独立して縦割化されていることだ。企画は商品を考え、営業は商品を売り、カスタマーサクセスは、アフターフォローを行う。各機能は一見役割分担がきれいに行われているが、カスタマーサクセスから商品企画にフィードバックがいく仕組みがない。営業は常に値引きをしてノルマを稼ぐので、利益の貢献度合いが見えにくい。本来のキャッシュを最大化するための組織的な役割を全社最適に取り組めていないのだ。
(自社のポジション)
一定期間事業活動を行い、顧客が定着している企業は、独自のポジションが必ず定着している。大切なことは、そのポジションを再度言語化して、正しくマーケティング活動に活用することだ。そしてそのポジションをゼロから構築するのではなく、これまでの活動を見直し、実際に構築したブランド資産、顧客の声を確認し、顧客が求める要素を整理する。そして自社が取り組んだ競合との差別化について再び体系的に整理するのだ。
コカ・コーラは長い間、商品に「クラシック」と名前を付けていた。1886年に誕生したコーラ飲料は、1985年に企業独自の取組として新しいレシピを開発して「ニューコーク」を導入したのだ。しかし熱烈なファンはこれに憤慨した。自分達に馴染んだコーラが勝手に味を変えられたからだ。コカ・コーラ社は、結果的に従来のレシピに戻し、伝統的な味やレシピをたたえ「コカ・コーラ・クラシック」と名付けたのだ。
マーケティングを行う上で、自社のポジションを明確にすることは重要だ。通常は、市場分析と競合分析を行い、自社がどのように認知されているかを確認する。そして顧客の声を聴き、分析結果と自分たちが考えるポジションが一致していることを確認する。これらを文字や絵や音などを使ってポジションを概念化するために、商品や価格、流通や販売促進活動などの整合性を取るのがマーケティングの一連の仕事になるのだ。
ポジションとは、商品や企業のイメージをどのように表現するかの指針であり、そのポジションによってコミュニケーションの在り方やパッケージ、時には価格帯だって変わってくる。例えば、クラスに人気者がいたり、優等生がいたり、するがそれぞれが自分のポジション持ち、そのポジションを理解しながら行動をする状況を思い出して欲しい。
ちびまる子ちゃんの主人公、まる子が勤勉でお母さんからも怒られることが無ければ、それはまる子ではない。クラスの花輪クンが、貧乏で勉強もできなくてウジウジしていたらそれは別の登場人物になる。顧客のアタマの中にあるポジションを企業は理解して、それを適切に表現することが重要なのだ。
(マーケターの仕事)
モノが不足した時代は、マーケターの仕事は製造と捉えられた。情報格差があり地域差があった時代は広告宣伝がマーケティングと捉えられた。しかし、いつの時代でもマーケターの仕事は、長期的に利益を生み出す仕組み作りにある。そのために、自社のポジションを明らかにして、対象顧客に対して理想的なマーケティング・ミックスを提供するのだ。
マーケティング・ミックスとは、所謂4Pと言われるフレームワークで、商品、価格、流通、販売促進を俯瞰的に捉えて利益につながる施策を実行することだ。小手先で販促手法を変えても、ターゲットがずれていたら効果は薄い。どんなに素晴らしいコミュニケーション手段を持っていても、対象顧客がリーチできなければ売上に繋がらない。常に、事業全体を俯瞰して利益の追求を最大化する仕組みを考えることがマーケターの仕事になるのだ。
(データ化の落し穴)
スマフォが普及して、顧客情報を獲得するためのツールは、クレジットカードやハウスカードからアプリを顧客にインストールして頂く仕組みが定着した。そして、そこで蓄積したデータを活用して継続的に来店や購買を促す取り組みが当たり前にどの企業でも行われるようになった。
企業はアプリの利用データを分析して購買履歴を元にクーポンを発行したり、利用を促したりしている。しかし、この取り組みは、既に来店してその企業や商品を認知している顧客に限って行われていることを常に理解しなければならない。そしてどんなに優れた仕組みであっても、その取り組みは他社や競合も簡単に模倣ができる仕組みであり、自社のポジションを構築する活動につながりにくいことも理解しなければならない。
この一連の取組であるCRM(顧客関係管理)は、既存顧客とのコミュニケーションを改善して、顧客の再利用や再来店を促すこと、或は満足度を上げて解約率を解消する取組には有効だ。しかし、自社の差別化を実現し競争優位なポジションを確立するためのツールとしては弱い。
今のところデータの活用は、実際のマーケティングの施策がどのように効いたのかを検証し確認するためのツールとして捉えると効果が高い。この場合は、顧客データは非常に価値を生む。多くの企業は商品を市場に投下するまでの過程でデータ分析を駆使するが、一定の商品点数があり、実際に商品を投下しないと効果が見えない場合は特に、データを事後分析に活用すると良いのだ。
(過去の記事)
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