早嶋です。
ビジネスアイデアの出し方の極論は、自社(自分)の強みと何らかのチャンスを掛け合わせてアイデアを抽出することでしょう。この考えの基となる概念はシュンペーターの頃なる概念を組み合わせて新しいイノベーションを生み出す話にもつながりますし、戦略の教科書でおなじみのSWOT分析からも分かります。
アイデアがある程度整理できたら、次はビジネスモデルとして成立することを考えます。基本的には価値を生み出す組織と価値に対して対価を払う組織、そしてそれらに付随する組織を整理して、価値と対価の流れを考えます。この概念を絵に表現する技法をピクト図などと称しますが、要するにお金と価値の交換のイメージを整理することで事業価値を提供する側と価値に対価を払う顧客、それからその利害関係をサポートする登場人物を明らかにすることができます。
これらが上手くいきそうであれば、次はビジネスモデルキャンパスなどを使って、価値を提供する側のメカニズムと価値に対価を払う側のメカニズムを整理します。提供する側のメカニズムは、その価値を再現的に生み出し提供できるかを考えます。一方で、対価を払う側のメカニズムは、その価値に対して対価を払う理由を明確にします。市場の規模や価値の合理性を対象顧客が理解することを明らかにするためです。これらの関係が商売として成立するためには、生み出した価値の費用と頂いた対価の差分に対して、提供側に利益が残ることが大切です。そのため、提供側は価値を生み出すための費用を明確にする必要があります。
費用は通常は何もしないでも出ていくであろう費用、価値の提供の回数や量に応じて比例して出ていくであろう費用に分かれます。いわゆる固定費と変動費です。加えて、その事業に新たな投資が必要でしたら別途投資についての議論を加えます。
一方、顧客が支払う対価は通常は提供される価値に対しての単価とその量の積によって売上が算出できます。複数の商品ラインナップがある場合も、ある程度の単価を平均的に捉え、その価値に対してある単位期間、例えば1カ月とか1年とかで区切ることで、単位期間の売上を想定することができます。そのために、ビジネスモデルで考えてた価値と対価の交換を1つのモデルと考え、それが複数回、ある期間に行われることによって売上が発生すると考えるとある程度のモデルを推定することができます。
例えば、コンサルタントとして独立したとしましょう。社員を1名雇い、そこそこの立地条件にオフィスを構えたとします。Webサイトや何かしらの広告宣伝費等なども加味して、月の固定費を50万円とします。話を簡単にするためにオフィスはシェアオフィスで家具等は全て揃っていることにしましょう。その人が1回のコンサル費として5万円の単価をつけたとして、その際の変動費に交通費やその他諸々を入れて20%の1万円かかるとしましょう。
すると一つのモデルで発生する単位当たりの変動費は1万円。単位当たりの単価は5万円。毎月かかる固定費は50万円となります。では、ビジネスモデルで考えた商売が成り立つためには、月に何回程度のコンサルを提供することが出来れば成り立つでしょうか。これはいわゆる損益分岐を探す考え方と同じですね。
例えば、売上は単位当たりの単価UP(Unit PriceでUPとしましょう)に提供した回数Q(QuantityでQとしましょう)の積(つまり掛け算)で求められます。
売上=UP*Q
一方、費用は変動費と固定費に分けられます。固定費はサービスを提供する回数Qに関係なく一定ですのでF(Fixed costでFとしましょう)、変動費は提供する回数Qに比例する費用ですので、単位当たりの変動費V(Variable cost)とすると、提供した回数Qの積VQと表現できます。
変動費=F+VQ
これから上記のビジネスモデルが成り立つときの提供回数は、売上と変動費がトントンになる際のQになります。従って、
売上-費用=0
UP*Q-(F+VQ)=0
上記をQについて解くと
Q=F / (UP-V)
ということで、実際の数字を当てはめてみます。損益分岐となる回数は、
Q = 50万円 / (5万円-1万円)=12.5回
つまり、月に5万円程度のコンサルを12、13回行うことが出来れば50万円の固定費は捻出できることが分かります。が、50万円から社員に給与やオフィスの支払いやその他経費を払ったら、自分の給与が無いですね。そこで固定費50万円に自分の給与100万円を追加しましょう。その場合に成り立たせる回数は、
Q = 50万円+100万円 / (5万円-1万円) = 37.5回
つまり、月に5万円程度のコンサルを38回程度実施できれば給与100万を安定てきにとっても問題ないことになります。もし、これらを実施しようとした場合、1カ月30日の内、実働を20日としたら1日に5万円のコンサルを2回安定的に提供できれば成り立ちますね。
或は月額5万円程度の顧問料を頂いてコンサルを40社程度持つことで対応できますね。ただ、40社を1人で相手するとなると結構大変ですのでアシスタントを1名増やして行うか、単価を上げるかと考えるはずです。
でも、ここでイメージできたように、実際のアイデア⇒ビジネスモデル⇒事業計画にする際に、自分たちが提供する価値を相応の単価を頂いて提供するために、どの程度の回数や数量をこなせばよいか?という数字がイメージできれば、その後のシミュレーションが行いやすくなると思います。
その意味で、はじめて事業をおこなう場合は、先ずは自分たちのビジネスモデルから単位当たりの売上と変動費を大まかに算出して、そこから回数や数量であるQを推定することで、実際の市場規模とマッチするかとか、提供することが可能な数字かなどを議論することができるようになるのです。
是非、起業する際や、社内で新規事業を立ち上げる際に活用してみてはいかがでしょうか?
2021年4月19日 のアーカイブ
ビジネスモデルから事業計画を描く際の基本的な考え方
2021年4月19日 月曜日
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