新規事業の旅202 権威の終焉とオーセンティック・リーダーシップ

2025年8月2日 土曜日

早嶋です。

かつて、情報は限られた人々のものであり、組織の中心に集められ、都合の良いように操作されていた部分もあったと思う。従い、何か不都合が起きたとしても、それは握りつぶされ、なかったことにされるのだ。情報の非対称性は、中央集権的な構造と相性がよく、権威による統制の温床でもあった。

しかし、今は時代が変わり、情報そのものが民主化された。誰もが自由に発信でき、簡単に記録でき、ネットにアクセスできる。SNSによる瞬時の拡散は、事実を押し込めることを不可能にした。そして皮肉なことに、昨今のニュースソースは内部からのリークが最も信頼される情報源となっている。

そうであれば、組織が進むべき道は明白だ。隠すことではなく、開くこと。否定することではなく、認めること。黙ることではなく、語ること。だ。

予定調和のシナリオで全てを進めることは、もはや幻想に近い。さらに、これまでと違い、誰もが対処したことが無い社会課題に取り組まなければならない。計画は大まかに立てても、そのとおりにはいかない。予測不能で、変化も激しく、方向性すら示すのが難しい。つまり、試行錯誤が必然であり、失敗はセットである。むしろ失敗をしていないといことは、その取組にチャレンジしていないことすら意味するのだ。

そのような背景を積み重ねれば、失敗そのものよりも、もっと大きな問題がある。それは「失敗を隠す行為」だ。嘘をつき、誤魔化し、逃げる。そこに芽生えるのは、否定的な感情と信頼の喪失。たとえ小さなミスでも、隠されることでその何倍もの悪影響を及ぼす。信頼は一度壊れると、簡単には戻らない。

一方、世の中は、まだ誤った権威主義的な発想で隠し通すリーダーがいる。未だに「記憶にありません」「確認中です」と言い張り続けるのだ。明らかに黒なのに、それを認めようとしない。むしろ、その嘘を抱えたまま、元のポジションにしがみつき続ける。透明性という時代の空気を1ミリも読もうとしない。そもそもその概念が無いのかもしれない。

ある意味、すごい。鋼鉄のメンタルだ。しかし、確実に時代遅れだ。今のような社会環境、時代背景で求められるリーダーシップは、オーセンティック・リーダーシップだ。

これから求められるのは、オーセンティック・リーダーシップだ。自分に正直で、誠実に人と向き合うリーダーシップ。失敗したら、すぐに認めて謝る。過ちがあれば、隠さずに明かす。未熟であることを、正直にさらけ出せる勇気。そして、周囲の信頼を土台にして進んでいく力。未来を切り拓くのは、「完璧なふりをする人」ではなく、「不完全さを引き受けられる人」だ。

対局は、権威型リーダー。完璧を装い、強さを見せる。立場、利益、上の顔色を伺い、悪いことは隠す、操作できると考える。信頼の源を肩書や実績においてしまっている。

繰り返すが、今、正解が見えない。正論や上からの命令だけでは、人はついてこない。そんなときは、「正しいかどうか」よりも、「この人の判断なら信じられる」という感覚が、人を動かす。その信頼の源は、本物(オーセンティック)かどうかだ。つまり、どれだけその人が「自分に正直に」「ごまかさずに」生きているか、の蓄積によるのだ。



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