水素自動車FCVの普及は非合理だと思う

2021年3月5日 金曜日


伊藤忠商事は2020年代なかばに、世界最大級の液化水素製造プラントを中部地方に設置します。液化天然ガス(LNG)から製造する方式で、現状よりも安価に水素を製造してFCV(燃料電池車)に供給する計画、水素活用のスタートを切るエポックな取り組みです。日本国政府は2050年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする取り組みの中、水素活用は有力ば脱炭素エネルギーと位置づけています。そして2030年のKPIに年間最大300万トンの水素供給を掲げているのですが、現実的な水素供給インフラが課題だったのでこのニュースは評価されていると思います。




新プラントが完成すると1日あたりの液化水素はFCV4万2000台をフル充填する約30トンです。現時点で岩谷産業などが1日に約44トン生産しているので結構な規模だと言えます。





が、、、。





2030年の政府のKPIは年間最大300万トン、つまり1日に8000トン程度を目標にしています。仮に今回のプラントが完成した場合は追加30トンに加えて従来の44トンで約80トンですから、目標値の1%程度しか生産確保できていないことになります。まさにスタートの瞬間ですよね。




今回の新プラントはエア・リキードが米国ネバダ州で約200億円投じて建設している世界最大級の液化水素プラントと同規模ということです。つまり、1日8000トンの水素を供給するためには200億円で30トンですから、8000トンの確保のためにプラント投資が未だざっと5兆円程度必要なことがわかります。




もし、この水素をFCVなどに供給するには、ガソリンスタンド相応の水素ステーションが別途必要です。現時点で水素ステーションの数は140個所程度です。2030年の政府のKPIは900個所ですので、ここにも少し数字の疑問を持ってしまいます。現存するFCVは4000台。560台あたり1個所の水素ステーションの規模です。仮に900個所だと50万台程度のFCVに対応しようとする計画なのでしょうか。





今回の新プラントが製造する水素30トンでFCV4万2000台をフル充填できる規模なので、水素ステーションの設置目標が明らかに少ないのかなという印象です。一方で、もし1日に8000トンの水素を供給できるプラントが出来たとしたら、4.2万台✕(8000/30)≒1,000万台程度分のFCVを毎日フル充填できる規模になります。こう考えると水素はFCV以外の使徒があるのでしょうね。





別の方法で考えてみます。FCVはフル充填で300キロから800キロ程度走ることができるとしたら、今のガソリン車やハイブリット車の満タンとさほど変わらない走行距離数です。現在のガソリンスタンドの数は29,000個所程度で、登録されている車両はざっと7,000万台です。つまり2400台に対して1箇所のガソリンスタンドという規模で全国にスタンドがあります。昔と比べるとスタントを探すことがありますが、それでも不便なく使える規模が現在の数だとしましょう。やはり政府目標の2030年の水素ステーションの900箇所は少ないですね。





いずれにせよ、今回の新プラントは水素の供給のスタートを切った取り組みと言えます。ただ、水素の製造コストやFCVの普及、そして水素ステーションの普及を考えるとガソリン車を水素にという発想はやや難しいかな。という印象を持ちました。






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