同僚、ワトソン君

2018年1月18日 木曜日

早嶋です。

AIが出来ることは、様々にあると思いますが、その特徴は1)理解する、2)推論する、そして3)学習することです。

これらの特徴をビジネスで活用する場合、正確な情報を求められる問い合わせに対して、確度が高い答えを根拠とともに答える照会応答が考えられます。電話やメールでの問い合わせなどに対してAIを活用することです。次に、膨大なデータを基に、正解が必ずしも存在しない問に対して答えの候補をリスト化する、或いはその答えのサポートをするような探索や発見が考えられます。医薬の研究などはこれに相当します。そして、特定のケースが規約やガイドポリシーに適合しているかの判断である意思決定支援です。保険の支払いをするか否か、するのであれば満額か一部かの判断やローンの審査などが相当します。

上記のようなビジネス活用をIBMのワトソンは2年間で世界の45カ国、20種類以上の業種に対して導入しています。ワトソンは現在10カ国の言語を理解し、2018年はビジネスの活用が更に本格化されると考えられます。

現在、AIでビジネスの活用が見出しやすい分野は、上述の通り照会応答、意思決定支援、探求発見です。ここに対して、IBMは顧客接点を活用した業務、業務プロセスに関わる業務、新サービスや製品を開発する業務において今後積極的な活用を進めています。

例えば、コールセンタ。音声で記録されているデータをワトソンに取り込み、今後の質問に対してアドバイスを提示する。データを活用してチャットボットを動かし、電話の受付そのものを減少させ、深夜はチャットボットで対応出来るようにする。業務プロセスを分析して人が行わなくてもすむ非効率的な部分をワトソンで置き換える。等々です。

保険の支払いは、保険商品の主目的でもありますが、実際その判断をするのはその道のプロに頼ったサービスでした。何かあって入院、退院した際、患者さんは保険会社に書類を提出します。その書類をベースにこれまで8割り程度は自動で判定が出来ていましたが、残りの2割は判定が困難で専門職に頼っていました。それは、該当する項目が保険の規約に当てはまるかの判断で、適切に行うには保険商材の知識はもちろんのこと、医療、医薬、薬学等々の知識が綜合的に必要です。仮に人間で対応が可能だったとしても今後、そのような高度な判定が出来る人材を育成する時間とコストが議論の対象でした。

みずほ銀行の取り組み事例です。2015年2月にコールセンタのリアルタイム支援に導入されました。顧客から受ける問い合わせに対してリアルタイムでオペレーターに質問の回答に必要な情報を提示するシステムです。導入時は正答率は高くなかったものの、フィードバックループを回して都度学習させ制度を高めていきます。結果的に正答率はあがり、オペレーターの通話対応時間を短縮(平均9分を8分に)、サポートを通じた育成期間の短縮と効果を発揮しています。今後はこの取組を資産運用や相続のサポートへと展開します。当初10席からの導入が今では300席に対してワトソンが使用されています。

ネスレはネスカフェアンバサダの問い合わせや注文にワトソンを活用しています。27万人のコーヒーアンバサダ、450万人の会員から年間100万件に近い問い合わせがありました。問い合わせの殆どが商品に関する質問と機械の使い方や状態に対してです。現在では、その履歴情報をワトソンが学習して殆どの質問に答えるレベルになっているそうです。

フォーラムエンジニアリングは、人材派遣の会社で、エンジニアの仕事のマッチングをワトソンで実現しました。エンジニアの情報をかなり細かい階層までカテゴリ分けして、そこに特徴などを入力。仕事の問い合わせに対して瞬時に候補者を絞り出すのです。

金沢工業大学は学生の自己成長支援に活用しています。過去10年間の学生のデータ、卒業論文、サポート情報など100万件にのぼるデータを連携して、学生の夢や目標を実現させるために活用しています。進級時に将来の職種や夢に対して履修する科目をアドバイスしたり、将来の職種に応じた提案をしたりします。また、ゼミの選択等にも対応しているようです。

現在、ワトソンを活用するためにはネットに繋がったPCがあれば可能な状態までになっています。クラウドを使ったサービスなので自分たちでサーバを準備する必要は無いのです。既にIBMの過去の事例で取り扱っている比較的にAIが活用し易い領域(スイートスポット)に対しては最速で3週間での導入が実現します。企業が準備するデータが問題なければ、システム構築にかかります。スイートスポットの開発はほぼ不要で進める案件もあります。データがない場合や、アセスメントが必要な場合はIBMが関わってコンサルするサービスもあります。準備が整ったらデータをワトソンに読み込みトレーニングを開始します。入出力の正解例を作成していくのです。そして、ある程度出来上がったらテストを繰り返し、間違っている場合は適切な答えを教え込む取り組みを繰り返します。これを要求レベルに満たすまで繰り返すと本番稼働となります。



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