労働分配率の低下が意味すること

2017年11月2日 木曜日

早嶋です。

MITのデービット・オーダー教授は「労働分配率の低下とスーパースター企業の興隆」という研究で、アマゾン、FB、アップル、グーグルなどのIT企業の活躍が労働者の低賃金を招いているという仮説を示しています。

帰納的な裏付けの1つにOECDが集計したドイツ、米国、日本の労働分配率があります。1980年頃より各国の労働分配率は徐々に低下しています。一方で世界のGDP、世界の株式の時価総額は増加傾向にあります。

論文の事例としてFBとトヨタが比較されていました。

FB
○利用者数は世界で20億人
○株式時価総額は59兆円
○従業員は2万人

トヨタ
○毎年1,000万台規模の製造販売
○株式時価総額は23兆円
○従業員は2017年3月時点で連結で36万人

教授の提言は、この傾向が米国では特に顕著に起きているといいます。研究では従業員の給与を国内総生産で割った労働分配率を詳細に調べ、結果、先進各国で低下していることを見出しました。

このような企業を教授はスーパースター企業と称し、その特徴を次のようにまとめていました。高収益でも実物投資は少ない。M&Aを優先する傾向が強い。当然、その際の資本は株主に分配されますので、M&Aによって企業に勤めている社員はなんの変化もありません。

これまでの経済学の前提では労働分配率が低下すると、人件費の割安感が指摘され給与が上がると考えられて来ました。しかし、スーパースター企業の存在感が、そのルールを変えているのです。



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