TOTO歴史資料館に行ってきました。
こちらは別名トイレ博物館ともも呼ばれ、大正~昭和初期の衛生器具(大便器や初代ウォシュレット、小便器、各種水栓、浴槽)などが展示してあります。極めてまじめな博物館です。
TOTOの創業は1917年。創業前に欧米視察に行った際に海外で見た衛生器具の清潔さに衝撃を受けた創業者。彼らが、日本にまだ下水道が整備されていなかったこの時代に、国民の健康で文化的な生活向上を願い、水洗便器の製造に着手したのがTOTOの始まりです。
展示品の中に蛇口の由来となった共用栓なるものがありました。ライオンの口から水が出る共同の水道の蛇口です。当時欧米では、水道の蛇口に相当する部分はライオンの口などの装飾がされていました。これが日本に渡ってきて、しばらくそのモチーフが使われていたのですが、日本では水が龍ということで、次第に水道の口の部分が龍の口になってきました。ところが日本人は龍と蛇の違いをあまり意識していなかったのか、ある時、流の口が蛇の口になり、それが徐々に普及していきます。なんとこれから『蛇口』という言葉が生まれたそうです。
展示品の中に古いユニットバスがありました。東京オリンピックの施設は当時、急ピッチで進められます。そのため、トイレとお風呂を一つの塊として別の工場で作り、そのまま建物に施工するというアイデアが生まれました。これによって建設の時間をショートカットしたのです。このアイデアが現在のユニットバスになっています。
展示品の中には、両国国技館で使用されている力士用の便器がありました。通常のものよりも大きく、強度も強い使用です。確かに、普通のトイレではお相撲さんの体重は支えきることができないでしょうね。
最後にウォシュレット。早嶋これは日本の発明品だと思っていましたが、1970年代のアメリカから輸入したのが始まりだそうです。当時のアメリカではこれを医療機器として使われ痔に悩んでいる患者用の治療器具として使用されていました。これを現在のように普及させたのがTOTOだったのです。
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2011年1月 のアーカイブ
TOTOトイレ博物館
消費税、所得税、相続税について考える
消費税を上げる効果はいかなるものでしょうか?
IMFが指摘しています。仮に消費税を5%から15%まで上げたとしても増分は10%。つまり年間に25兆円の収入が増です。現在、年間に50兆円の借金を増やすやり方をしている政権では、その額の半分程度、無駄使いをすることも考えられます。
消費税を上げると消費が冷え込みますので、上記の税収が上がらず、消費が冷え込むことも考えられます。
現政権では、法人税を5%下げ、35%程度の検討をしています。その一方で所得税の最高税率を引き上げることを考えています。日本は現在でも先進国としては地方税の10%を含めると50%で、これを更に上げるという考えは選挙対策にしか見えません。
世の中の国々を見ているのでしょうか?所得税を上げるよりも下げたほうが税収は増えることが実証されています。一見???と思うかもしれません。しかし事実、所得税を下げて税収が減った国はありません。
レーガン時代のアメリカ、サッチャー時代のイギリス。理由は極めて明快で心理的な虚を突いています。高い所得税だと節税対策ということで頭を使って、最低の税収に抑えるように動きます。ただでさえ日本の税法は複雑で知っている者と知らない者では税率が違うんじゃないの?と思うほど節税対策の解釈が難しいです。従って、高い税率であれば、頭と労力を使ってでも節税対策を行うでしょう。
しかし誰もが節税対策をしたいわけではありません。所得税率が下がれが正直に申告したほうが良いと思う人が増えるのです。更に、お金を持っている人に現金が残れば、そのお金は経済の消費を牽引する働きも加速します。
ロシアのプーチン大統領はまさにこの発想を行いました。これまでの累進課税制度を廃止して一律のフラットタックスを導入します。正直に申告した人は所得の大小に関係なく13%の税率に統一しました。すると上記の理由で地下に眠っていたお金が一揆に地上に出てきてロシアの税率は2年続けて毎年25%も増加しました。
それでもお金の大小によって税金をとるのにこだわるのであれば、フローに注目するのではなく、ストックに注目すると良いとおもいます。つまり所得は一律。しかし、資産に対して課税をかける考えです。所得が多い人は別に金持ちではなく、通常の人よりは平均以上の努力を行っているひとです。しかし、資産をもっている人はそうとも限りません。そこで、その部分に課税をする方がよりフェアだと考えます。
現在、日本の個人の金融資産と固定資産の合計は3500兆円程度と言われます。仮にここに1%の税率をかけても35兆円の税収になります。もし、このことに不満がある資産家は、持っている余計な資産を市場に手放すでしょう。これによって、資産が市場に効率的に流れる効果も考えられます。
相続税も撤廃すると良いと考えます。例えばアメリカのように期限を決めて相続税を撤廃することも良いでしょう。例えば5年間の相続税には税金をかけない。そのご、再び相続税を再開する、などです。これにより高齢者に過剰なまでにたまっている資産が最も経済的な活動でお金を欲している若者にお金が流入するようになるでしょう。
多くの先進国のうちイタリア、オーストラリアなど17程度の国々では相続税を免除しています。理由は、高齢者に貯まりやすい資産を若い世代に譲り経済を活性化することです。資産に課税をする方法により、相続や贈与は税収中立になり、資産を譲り受けた人が同じ額の税金を支払うことで保たれるのです。
現在の日本のように、所得を持っていない人が資産を譲りうけても、その瞬間に課税されるので、相続をすることで逆に不幸になることだってあるのです。このような方法は同考えても、これから所得が伸びないで資産が増える日本のような国にはフィットしないですね。
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目標設定に思う
2011年の目標設定は終わりましたか?
多くの経営者とお話をすると、現状の仕事に追われていて将来のことなど考える暇がない、というお話を伺います。まったくその通りだと思います。しかし、将来の種は今まかないと刈り取る事はまず不可能です。これもまったくその通りでしょう。現状の仕事を解決しなければ将来はない。しかし、将来の仕事を今取りかからないと将来の伸びはない。パラドックスです。
しかし、伸びている企業や景気の良い会社の経営者は両方を行います。
私は、企業が伸びる瞬間は、人間が伸びる瞬間と同じでフィードバックすることが大切だと感じます。フィードバックが有効な瞬間は事前に目標や向かうべき指針がある時です。そのために、時間を確保して目標を設定します。これは直近の目標だけではなく、やや遠い未来の目標も併せて行います。目標という言葉を書くと構えてしまうかも知れないので、やや遠い未来の自分の夢や願望でもよいと思います。遠くの目標を初めに考えて、その目標をブレークダウンしてやや近い将来の目標を設定するのです。
目標を設定したら現状の自分や自分の企業の現状と比較します。足りない部分、ギャップが見出されます。後は、このギャップを埋めるための行動を考えて実行に移せば、設定した目標を達成する確率が0から1に近づきます。その目標の達成は、遠くの目標のマイルストーンになっているので、結果的にこのサイクルを繰り返すことで、やや遠くの目標達成の確率も1に近づくはずです。
フィードバックが効果を生むのは、上記の作業を行っているときです。目標があれば、実際に行動を行った後に、一定時間経過して、目標通りに達成したかどうかを確認することができます。
ポイントは、予定表の中に目標設定を行う日とフィードバックを行う日を同じ日に設定して、その行動を繰り返すことです。このタイミングを元旦に行っても、決算の時に行っても良いでしょう。また、その頻度を年に一度から年に二度に増やしても良いでしょう。大切なことは、この行動を継続することです。
もう一つポイントは、設定した目標や夢やビジョン、その時に考えたことを必ず書きとめておくことです。理由は簡単。一は忘れるからです。忘れてしまっては、フィードバックした時に、何を基準に考えるとよいかすらも分からなくなります。また、どのような形であれ、考えを形式化しておけば、再び考える始めるとき、最後に考えた内容をベースに深化させることができます。しかし、毎回忘れていたら、その考えは深堀されず、いつも同じところまで行って終了でしょう。
初めは何となくモヤモヤした感じでしょう。それで良いと思います。そのモヤモヤした目標を紙にでも書いて、それは具体的にどのようなことだろうか?と考え、少しづつ目標を明らかにすると良いのです。
モヤモヤの目標をモヤぐらいにする。初めはこの程度でも良いでしょう。私が目標設定をする時に意識する視点があります。良くSMARTでまとめられた視点です。明確か?つまり、モヤモヤした内容が徐々に何か自分が何をすると良いのかが見えるような目標になっているかです。もし、立てた目標を見て、そのために何をしなければならないのか、?イメージがつきにくければ、もう少し明らかにしてみよう!と言う事で深く考えるのです。
次に、測定することができるか?です。立てた目標に近づいたか?遠ざかっているか?それが分かれば問題ないです。
そして、最も重要な視点。ワクワクするか?です。立てた目標がワクワクしなければ、多分途中で行動を止めてしまうでしょう。また、ワクワクしなければ達成しよう!という努力も続かないでしょう。時々、目標を立てましたが、これで良いですか?と尋ねられることがあります。その時は、その目標を達成した自分はワクワクしますか?と質問します。
残りの2つは現実的か?そして時間の設定があるか?です。明確、測定、ワクワク、時間を考えていけば自然に現実的なモノに近づいていくでしょう。
時間を設定する理由は、いつか達成したい!は絶対達成することがありません。いつかする!は絶対取り組みません。ですので締めきりを決めて、お尻に火をつけるのです。
目標を大きく2つに分けると結果とプロセスがあります。結果に対して目標を設定する場合。例えば、資格を取る、100点を取る、優勝する、などです。このような目標設定をすると、目標を達成するまでは急激にドライブがかかりますが、一度達成してしまうと燃え尽き症候群になり、二度とそのことを行わない、という本末転倒の結果になる場合があります。
プロセスは、やっている行為を楽しめるような目標設定です。もっと周りから喜ばれる、みんなから尊敬される、人から感謝される、などです。プロセスに対しての目標設定は、長続きします。しかし一方で、急激なドライブはかかりにくいでしょう。
そこで、達成することがむずかしそうな長期的な目標をまずは見つけるのです。これは企業にとってはミッションに相当するかもしれません。世の中の社会貢献として人から喜ばれ、感謝される企業になる。などです。このミッションは、一代の経営者で達成されることなく、二代、三代と会社が継続していってもなかなか達成することが難しいでしょう。つまり、長続きします。
一方で、急激なドライブがかからないので、そのミッションを達成するための通過的な目標が必要です。これがビジョンに相当するかもしれません。日本のリーディングカンパニーになる、などです。
さぁ、いまからちょっと長期的な自分や会社の夢を見て、それから今年1年間の目標を設定してみませんか?
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世界がマーケット。日本は縮小。
年に2回~3回程度、海外に行く機会があります。これは大学生のころから続けていましたが、行くたびに思うのが日本人の少なさです。
大学生のころは、どこに行っても僕のようなバックパッカーか団体旅行のおじちゃんとおばちゃんがいたものです。そんなに遠くない昔の話です。
しかし、これはとても深刻な話だと思います。特に若い世代に対してです。日本は島国だから世界が一つになりつつあることを実感するのは実に難しい国です。ネットで自由に海外とやり取りができる昨今。それでも海外にが物理的に一つになりつつあることは実感しにくいでしょう。
なぜ若い世代の人が海外に出たほうが良いのか?これは今元気な国にお金が集まるからです。日本は人口構成が高齢者中心になっているので、どうしても景気というかお金を使う力が無くなりつつあります。一方、途上国は平均年齢が20代、30代とまだまだ若く、経済の成長に加えて、その世代が勢力的にお金を使います。この差は大きいです。
大学生と話をする機会を多く持っています。起業してから定期的に学生のネットワークに顔を出してお話をしています。今の大学生は就職難と言う事で、2年生、3年生から就職活動を行い、ろくすっぽ遊びもせずにもがき苦しんでいます。何かかわいそうに思います。それでも企業はNGを出します。もっと、なぜNGを出すのか?考えて見れば良いと思います。
国は新卒者の支援をしています。しかし馬鹿げていると思います。日本は就職難と唄われていますが、この比較を世界ですると逆転します。そもそも92%という就職希望者のうちの大学生の内定率は世界レベルに高いです。他の国はもっと低くて厳しいモノです。しかし、その数字が独り歩きして最低のように見られています。
そもそも何十社も会社を受けて内定をもらえない人の支援をするのは企業にとっても迷惑な話のように思えます。
もっと国や学生が取り組むべきことは、企業に必要とされる人間になるように教育する、あるいは学習することではないでしょうか?つまり、世界のどこにでても活躍できる人材です。昔は情報格差が問題視されていましたが、今後はモビリティ・ディバイドが問題になるでしょう。
国がもっと自由度の高い人材を教育して輩出するためには大学を含めた教育を根本的に見直す必要があるとおもいます。今の大学を見ていて企業の目から欲しい人材が育つとはなかなか考えにくいからです。新興国や途上国であっても、バリバリと出向いて働く意志のある人材です。
と言ってもなかなか響きません。それは知識としての海外を知っていますが、経験としての海外が無いからです。是非是非、大学生の一番大切な時期の2年生や3年生に、あるいは数年くらい留年したり休学しても良いので、この時期にこそ世界とつながっていきネットワークを世界中につくっていく準備をしてほしいと思います。
日本のマーケットは必ず縮小します。世界がマーケットになるからです。
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マネジメントは何とかすること
途方もくれた時、何とかなるさ!と開き直ることがあります。しかし、こんなときこそ何とかする事こそがマネジメントだと思います。
マネジメントはドラッカー教授が産みの親です。経営資源を活用して目的を達成することです。上記の何とかするはやや乱暴な言葉ですが、マネジメントの説明としてぴったりだと思います。
マネジメントで最も重要なことは「何をするか?」というゴールです。そして後はそのゴールを達成するために、何とかして達成すること、そのプロセスがマネジメントです。
年末、大寒波のヨーロッパを旅していました。到着した空港が一時閉鎖になり着陸する事、結局定刻よりも7時間遅れ。まぁ、ともあれ現地に到着したのでラッキーだと考えましたが、手荷物が出てきません。そこで、夜も更けていたのでバゲージ・クレームを申請してホテルに届けてもらうようにお願いして空港からホテルに移動します。
ホテルについて次の朝、荷物が届く気配がなかったので、そのままアムステルダムの街を散策しました。昼には連絡があるだろう、そんな気持ちで散策していましたが、一向に届く気配がありません。スキポール空港に連絡しましたが電話も通じない。KLMに連絡しても同様。
ふと、荷物が届かないのでは?と考え、2日目の夜には、荷物がないまま、旅行をすることを考えました。目的は、予定通り楽しみながら観光、仕事をこなすこと。まさに、目的達成のために何とかすることでした。あきらめて、何とかなると考えるのではなく、自分から何とかすることを考えました。
何とかするにあたって、注意すべき点は、考えてもコントロールできないことは考えないで忘れる。あるいは何ともならないと理解することです。そして、自分たちでコントロールできることに注力して、何とかする方法を考え行動します。マネジメントにおいても、自分たちの内部資源と外部環境を良く把握しておき、コントロールできることとできないことに分けて考えます。
結局、荷物が届いたのは、日本に帰国して、更に年が明けてからでした。
もう一つ学んだことは、冬のヨーロッパは計画通り動かないことでしょう。
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知識と行動
2011年がスタートしましたね。あけましておめでとうございます。
ブログ『落ち目な日本?』(http://www.biznavi.co.jp/blog/archives/2679)でもコメントしているとおり、落ち目な日本の反対は、日本はまだまだ、やることだらけ?と言えることです。
そのために個人が意識することは、行動だと思います。知識を身につけるのではなく、身に付けた知識を実際に活用して行動することです。
世界レベルで活躍している人は確かに知識を沢山持っていると感じますが、それよりも何も、高い夢を持ってとにかく努力していると思います。そして実際に動きます。中には、行動が先に行われることもあります。
日本での義務教育を振り返ると、常に知識で勝負してきたように思います。例えば学力テストですが、ペーパーテストの結果で勝敗が決まりました。これは知識です。しかし、社会に出るとこれだけでは満足ではありません。実際に行動して結果を出してこそ意味があるからです。結果を出すためには、必ず一歩を踏み出さなければなりません。しかし、多くはその一歩が踏み出せません。
これは教育の中で行動の競争が少ないのも原因かもしれません。海外の人や若くして社会のために働いている人の共通点は行動していることです。
例えば、カンボジアで社会企業家として現地の材料で現地の雇用を生むためにビジネスを行っている篠田さん(http://krukhmerprojuct.jimdo.com/)も初めに行動を起こしています。カンボジアに単身渡り、現地の企業で半年経験をつんだのち社会企業家としてカンボジアで独立しました。何かがあるわけではなく、独立してから様々な困難に立ち向かっています。
例えば、世界中の水をきれいにするために、営業会社を辞めインド、ブラジルを転々としながら活動をしている原田さん。彼も、大枠のイメージはあったものの、行動を先に起こします。志のために、足りないお金は肉体労働を行ってでも稼ぎ出し、そしてそのお金で志達成のために動きます。
知識がなければ行動出来ないという事はありません。行動しながら知識を身につけることができます。ただし、闇雲に行動することを言っているわけではありませんが、考えるだけよりは行動していることが良いかもしれません。
ポイントはバランスですが。何事も結果は行動しなければ生まれないことは事実です。
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華麗なる小さな国 ルクセンブルグ
ルクセンブルグ。きっと、国の名前だと知っている日本人は少ないでしょう。ドイツのどの地方?と聞こえてきそうです。ルクセンブルグは、ドイツ、フランス、ベルギーに囲まれた小さな国です。面積は佐賀や神奈川と同じくらい。
首都はルクセンブルグ。四方を切り立った谷に囲まれた独特の地形は、その地を見なければ想像がつかないほどユニークです。訪問した季節は12月だったので渓谷の新緑をみることができませんでしたが、谷に掛る橋を渡った旧市街はタイムスリップしたような中世の街並みが広がっていました。
ルクセンブルグ、世界最高水準の豊かな国でもあります。これは1人あたりの国内総生産において世界トップの座を維持しつづけていることからわかります。国内総生産が高い国はカタールなどの産油国がありますが、ルクセンブルグは先進工業国であり金融で栄えています。
ルクセンブルグの経済は毎年4%から5%の範囲で推移しており先進国としては例外的な高成長を遂げている国の一つです。また、フィンランドのように福祉国家ではないにも関わらず、失業率も良好に推移しています。また国内の所得差が北欧の国々並みに小さいという特徴を持っています。
かつてルクセンブルグは鉄鋼で栄えていました、アルベット製鉄会社。この名前を聞いたことがなくともアルセロール社はご存じだと思います。歴史的には第一次世界大戦でのドイツの敗北により、ドイツがそれまで所有していた製鉄業がフランス、ベルギー系に渡ります。このタイミングでルクセンブルグの工場にも大きな資本が投入され、アルベット社は、当時としては世界的にも有数の製鉄会社でした。
アルベット社(現アルセロール社)の成長が経済大国の基礎を築いていきますがオイルショックを契機に低成長に突入します。この頃より、ルクセンブルグは産業構造の変換を行います。金融サービスをはじめとする第三次産業にシフトしたのです。実際、現在のGDPに占めるサービス業の割合は8割程度あります。
2006年、インドに本拠地を置くミタルスチール社のアルセロール社買収は鉄鋼衰退の象徴的な出来事でした。ただし、現在でも合弁後のアルセロール・ミタル社の本社機能は、ルクセンブルグにおいています。アルベット製鉄社の前で写真を撮りましたが、アルセロール・ミタル社の本社とは知らずに、帰ってから知ったのでした。もっと調べておけばよかったと思います。
他の製造業としては、科学や繊維、自動車部品、プラスチック、ゴムと言った分野でも実績があるようですがかつての鉄鋼ほどの影響力はないようです。また、隣の国のベルギーはダイヤモンド取引が中心とあって、ダイヤモンドの加工などの産業もちらほらあるようです。
そして工業製品として忘れてはいけないのが陶磁器です。ビレロイ&ボッホ社。ルクセンブルグに工場を置き、ハプスブルグ家の御用達となったことから世界的に名声が広がりました。メード・イン・ルクセンブルグ。名前を聞いたことがない人でも、器を見たら、ああーと思うでしょう。日本では百貨店を中心に取扱があるようです。それから、結婚式の引き出物として好んで選ばれています。ビレロイ&ボッホ社、陶磁器として世界最大規模を誇る売上高です。
ルクセンブルグ市の旧市街を取り巻くように走るロワイヤル通りにモダンなビルが立ち並んでいます。これらの全てが銀行の建物で、ルクセンブルグには140以上の世界中の銀行が集まっています。鉄鋼が陰りを見せ始めること、国策として金融センターを目指したのです。1960年代以降です。
金融間系の人から聞いた話ですが、ルクセンブルグ市の昼間人口は500万人で、夜間は100万人まで減るそうです。フランス、ベルギー、ドイツなどの隣国からルクセンブルグにやってきて仕事をこなしてはまた帰る。ルクセンブルグの外国人比率が40%であることを考えると納得できます。ルクセンブルグの金融業は、特にユーロ圏におけるプライベート・バンキングの中心地で、世界的に見てもスイスに匹敵する規模があるそうです。金正日氏の隠し財産の半分もルクセンブルグの銀行に預けられているとか。銀行の秘密保持は法によって保証され、欧州地域内での資本も自由に移動できるのです。
ルクセンブルグの金融ビジネスは、国全体として30万人の労働人口に対して、7万人近い雇用を生み出しているので、労働人口全体の2割をカバーしていることになります。
ルクセンブルグ市が世界有数の金融都市に発展した理由に国民が外国語を自由に話せることが考えられます。母国語の他にドイツ語とフランス語を殆どの国民が話します。小学校1年生でドイツ語、2年生でフランス語を習います。英語は日本の中学校に相当する課程で学びます。従って、殆どの人はルクセンブルグ語、ドイツ語、フランス語、そして英語を話すという流暢な国民なのです。
金融国ルクセンブルグに発展した理由に、地理的な要因もあるでしょう。ヨーロッパの心臓のような地理に位置し立地条件も最高に良いところのような感じをうけました。アジアで言う香港やシンガポールのようなロケーションでしょう。また、ヨーロッパ連合の強力な推進国であったことも影響しているでしょう。ルクセンブルグは、1921年にベルギーと経済同盟を結び、1944年にはベルギー、オランダ、ルクセンブルグの三ヵ国でベネルクス関税同盟を創設します。後の欧州共同体の第一歩となった同盟です。1970年に欧州通貨統合の概念を具体的に提案したのも当時のベネルクスの首相です。
ベネルクス市の郊外には欧州共同体裁判所、会計監査院、統計局など、数多くのEU機関があります。1986年には単一欧州議定書がルクセンブルグで調印されています。
小さな国なのに、豊かな国。それを国策として形成しています。小さいゆえに官僚主義がはびこらず、煩わしい手続きがいらないのでしょう。ルクセンブルグは先進国の中でも税率が低い国です。更に銀行の利子税もありません。金融取引上の規制の緩さも企業やリッチな個人には魅力的でしょう。実際に数多くの国外企業の誘致に成功しています。スカイプ、eBay、アップルなどのネット関連企業。日本では帝人、ファナック、楽天などが欧州本社を置いています。
これまた金融機関の人から聞いた話ですが、上記のような上から本社機能があるといっても実際は事務所と電話とスタッフが数人。という企業も珍しくないといいます。この点、他国からは事実上のタックス・ヘブンだ!と非難されたこともあるみたいです。実際、ロンドンから毎日飛行機でかようビジネスパーソンもいるとか。そんなことをしてもルクセンブルグに会社をおくことがメリットになるのですね。
ルクセンブルグは最近まで大学を持っていませんでした。ルクセンブルグ大学が設立されたのは2003年。それまでは、大学に行く人は、小学校から高校まで徹底的に語学も学び、国外の大学(ベルギー、フランス、ドイツ、オーストリア、イギリスなど)に行ったのです。理由は、自前でインフラを整えるよりも大学に行く学生に奨学金を出した方が効率よくかつ経済性が優れていたからです。大学の考え方も実に合理的な国だったのです。
ルクセンブルグ。小国な国なのにリッチ。これはルクセンブルグ市の旧市街を少し歩けばすぐに納得します。通りの隅々に世界中の超高級ブランド品のブティックが軒を連ねています。日本ではめったにお目にすることが出来ない食器、時計、衣類、アクセサリー。ちょっとした路地裏のお店に専門店があったり。ウィンドウショッピングをしているだけで飽きません。ルクセンブルグはミシュランガイドにおいて国民1人あたりの星の数が世界一という実績も、豊かな国であることが理解できるとおもいます。実際、ミシュランガイドのステッカーを貼ったお店を何気なく目にする機会が多数ありました。
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ナノの国民車構想が危ない
2003年。1台のスクーターに家族で相乗りするインド人にも乗用車を提供したい!そんな意気込みで開発されたナノ。タタ氏が公言した国民車構想。ふたを開けて見れば所有者はまだまだ富裕層。中間層が多い街並みでは見かけることが殆どないといいます。
そのナノ。ジワリジワリと価格が上昇しています。ナノは地域によって頃なる価格設定を導入しているようですが、ムンバイでは現在14万9357ルピー。去年の7月は13万4294ルピーだったのを考えると11%近く上昇していることがわかります。
国民車構想が宣言された当初は10万ルピーの自動車だったので、このときから比較すると7割もアップしている計算になります。
理由は原材料高。インドでは経済成長に伴い、合成ゴムが過去5年間で5割、鋼板が4割上昇しています。他の部品もかなり値上がりしているようです。今年の9月にタタ財閥はナノが赤字であることを発表していますので、この値上げ対策も赤字を抑えていく対策でしょう。
大きな構想であってもやはり利益を伴わなければビジネスとは言えないのでしょうね。
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