バイオガソリンに想う

2010年4月21日 水曜日

日経新聞によると、新日本石油は6月1日から、植物原料から作ったバイオエタノールを1%強配合したハイオクガソリンの販売を、首都圏約1000カ所の系列スタンドで始める。販売価格は通常のガソリンとほぼ同程度になる見通し。

同社はバイオガソリンの導入を急いでおり、昨年6月にレギュラーのバイオガソリンを投入。2010年度末までにバイオガソリンの取り扱いスタンドを現在の約2倍の2000カ所に拡大するといいます。

バイオガソリンは、環境という面では自動車から排出される二酸化炭素を減少させる決めてと言う事で注目されています。例えば、日本で消費されるガソリン全部がエタノールを3%含むバイオガソリンになったとしたら、運輸部門での二酸化炭素の発生の全体の1%に相当する250万トンを年間に削減できるようです。

バイオガソリン。簡単にいえば、穀物などからお酒を作り、それを車の燃料に用いることです。国内でいうバイオガソリンは、ガソリンにエタノールを混ぜた燃料で、現行の自動車でも改造なしで使用できます。

バイオガソリンで調べてみると、大きく2種類の製法があります。ETBE方式とエタノール直接混合方式です。日本でいうバイオガソリンは、エタノール3%を混ぜたETBE方式が主流のようです。

混合方式は、ガソリンに、エタノール(アルコール)を混ぜただけのもの。環境省はこちらを押しています。対して、ETBE方式は、エタノールからエチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)という物質を作り、それをガソリンに混ぜる方式です。自動車連盟、石油連盟はこちらをおしています。

混合方式は製法は簡単ですが、ゴムを腐食させる可能性があり、自動車の燃料系統への悪影響が言われています。一方、ETBE方式は、ETBEを作るのに大きな施設が必要で普及の足かせとなる可能性があります。

さて、混合方式の問題点である車への影響ですが、実際は車のゴム部品の改良だけで対応が可能なようです。世界のバイオエタノールの主流は現在、混合方式で、日本以外の自動車の多くがこれに適した部品を使用し、エタノール対応自動車として使われています。

その理由は、バイオガソリンの普及を考えた事でしょう。混合方式の優れている理由、簡単に作れるという事に着目して世界は、こちらの方式を進めていると思います。

では日本は何故、混合方式を嫌ったのでしょうか?ガソリン税が取れないから?これは現行の法律のままでは取れないですが、法整備を柔軟に行えない体制にも問題があるのかもしれません。極力、これまで通りで行った方が確かに楽ですからね。

ETBE方式に対して、自動車工業会も石油連盟が主張しているETBEを押しました。自動車のエンジンが不調になり故障の原因になるから!と言うのが根底にあるからです。しかし、これに関しては他の国ではクリアしていますし、部品の問題でクリアできるという見解もあります。

また、日本では3%程度のエタノールで腐食の事を言っていましたが、世界では3%(E3)どころか85%(E85)が普通に運用されている国もあります。EUやブラジル、そしてアメリカは実験的ですが、直接混合方式のE85の乗用車が問題無く使用されています。

極端に言うと、日本の車はエタノールに対応しておらず、従来のガソリン車に特化していると言えます。日本の将来は、ハイブリットとEVを主流に考えていますが、世界はこの2つに加えて、混合方式のエタノール対応自動車とディーゼルで対応しています。ディーゼルエンジンは、日本ではイメージが悪いかもしれませんが、ヨーロッパでは多くの自動車が採用しています。二酸化炭素の排出がガソリンと比較して小さいという理由からです。

ここまで見て見ると、将来の環境と普及を考えるのならば、直接混合方式の方がてっとり早い気がします。ETBE方式は工業化するために大きな製油所を必要としますし製法も難しいからです。確かに現行の車に使える利点もあり、税制を変更させなくて済みます。しかし、普及という点を考えると、解せません。

自動車業界、石油業界、そして政治家がETBEを採用従っている背景も良く分かります。しかし、普及、環境の事を考えれば、わざわざコストをかけて現行の車を使ってETBEを普及することが良いという見解も疑問を感じます。直接混合方式であれば、将来的には3%のエタノールの混合比率を高める事でもっと多くの二酸化炭素を削減する事も可能です。様々な利害関係者のコンフリクト。おさまったところは本来の目的ではなく、互いの力関係が反映した結果にしか見えないですね。

では、エタノールそのものを考えてみます。難しい化学製品のようですが、冒頭で書いたように実体は酒、アルコールです。ガソリンだったら製造元は製油所で大規模なプラントが必要ですが、お酒は昔から日本でも作られていますね。

もしエタノールが車の燃料の主流になれば、石油業界が亜流になり酒造業界が本流になるかも知れません。ただ実際は、燃料用のエタノールを作っても、お酒用に販売した方がはるかに高く売れるので、酒造業界は興味を示さないでしょう。この背景は税金です。

エタノールの普及とガソリン税の話は関連するでしょう。普及させるには、バイオガソリンに対するガソリン税を現行の普通ガソリンの税よりも下げる必要が出てくるからです。この事は国土交通省や道路族議員にとっては直視したくない問題でしょう。

極端な話、そのためにエタノールを海外から買い付けているとも考えられます。国内でエタノールを生産する事は考えていないのかも知れません。

ちなみに、日本でエタノールの業界を普及する事は可能だと思います。しかも日本にとってもメリットがあります。日本には休耕田が沢山あり、また、間伐されていない杉林が至るところで放置されています。ご存知の通り、花粉症を日本国民に普及させている原因の一つです。これらをバイオエタノールのために用いるのです。古米はエタノール化し休耕田を復活させる。間伐材はエタノール化して、山は元来の雑木林に戻し、花粉を減らし、山肌は活性化させる。山が持つ本来の治水機能が増加し洪水の原因も緩和されるでしょう。

仮に、エタノールを輸入に頼ったとしても、リスクが大きいです。世界のエタノール生産には干ばつ問題が絡んでいるからです。水が不足する問題です。アメリカやインドの穀倉地帯は殆どを地下水に頼っており、その枯渇が問題になっています。ヨーロッパの穀倉地帯であるフランスは砂漠化が進んでいます。ブラジルだって近年雨量が減少してアマゾンが消える危機が報道されています。専門的には分かりませんが、大西洋の気候が変化しているのです。温暖化の影響です。

極端な話、これらの地域で生産されているエタノールに頼る事は、リスクが高い事が言えます。そのリスクをヘッジして日本でもエタノールの生産を検討するのは1つの選択肢としては良いと思います。

日本は、温暖化によってサトウキビやコメの生産によりフィットした地域になっています。世界が水の問題で不安を抱えている中、ラッキーな事に雨量は激減しないという研究結果もでています。

エタノールを日本で生産する事は、将来的に見て新しい産業を生む事にもなりエネルギー自給率を向上するチャンスと見る事もできるかも知れません。

早嶋聡史




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