ソマティック・マーカー

2009年1月14日 水曜日

早嶋です。



これから東京です、明日は富士フィルムさんでマーケティングの研修です。



年末年始、母の買い物についていきました。牛乳、豚肉、食パン、・・・と日用食品をかごに入れていくのですが、棚に行っても迷うことなく各々の商品をかごに入れていました。



牛乳コーナーに行って、明治のおいしい牛乳を手に取って、次の売り場に行く。ものの2秒ほどで商品を選んでかごに入れています。母の頭の中で商品の判断は合理的に行われているのでしょうか?



例えば、牛乳。昔は青いパッケージのスノーブランドを選択していました。しかし、不祥事が起きたころから、母の中で毒印牛乳というレッテルを張り、別の牛乳を選ぶようになります。しばらくすると、今度は赤いパッケージのメグミルクです。ある期間はメグミルクを購入していたようですが、メグミルクは日本ミルクコミュニティが雪印乳業の市乳部門から独立した会社ということを認識したのでしょう。急に赤いパッケージを避けるようになります。そしてまた、色々な牛乳を購入します。そして現在、明治のおいしい牛乳に落ち着いているのです。



母が牛乳を選ぶ時、これまでの牛乳の変遷を考えながら、ああでもない、こうでもないと、頭の中でぶつぶつ考えているのでしょう。と言っても、声に出すことはありません。無意識というよりは瞬時においしい牛乳を選んでいます。脳が作り出した瞬間のショートカットを利用して購入の判断をしているのです。



母に選択の理由を尋ねても、おいしいから、なんとなく、などの理由が帰ってきます。しかし、確実にこれまでの購入経験から構築された商品のイメージや印象によって購買の意思決定を行っているのです。もっといえば意識していないのです。



つらつらと脳の一連のショートカットについてコメントしましたが、これ、ソマティック・マーカーと呼ばれています。上記の例のように購入の判断を行うとき、脳は膨大な量の記憶や事実、感情を引き出しては分析し、瞬時に反応するのです。そして、このショートカットによって、ありとあらゆる事象を瞬時に判断し、購入する商品を決定してかごに入れるのです。この分野に詳しい研究者の話によれば、買い物による購入判断の半分以上は、店頭で瞬時に、しかも無意識に行われるといいます。



幼いころ、石油ストーブの天盤を無意識に触ったことがあります。あつ!指先を火傷しました。と言っても、30分も経たない内にけろりとして、玩具で遊ぶことに熱中します。しかし、脳には記録されています。



脳のニューロンは、石油ストーブ、天盤、熱い、やけど、・・・と概念を関連付けています。そして、この関連付けがソマティック・マーカーなのです。脳のしおりとかショートカット。報酬といったポジティブな要素や、罰則といったネガティブな要素などの過去の体験により、マーカーは経験や感情を具体的な反応に結びつけるといいます。



なんとなーく行ってきた判断も直感というより、このソマティック・マーカーによるものだと説明できるのです。そして、人間の脳は日々、このマーカーを作りだし、すでに存在している膨大なマーカーの集まりにせっせと情報を蓄えているのです。



購買の意思決定がソマティック・マーカーに起こるのであれば、マーケターは考えます。ソマティック・マーカーを意図的に作って自社製品を購入してもらうことができるのでは?と。



ニューロマーケティングという分野では脳科学の研究成果をマーケティングに取り入れて売上の仕組み作りを構築する、ということを行っています。



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