上司のコーチング-11 問題の本質を探る-2 0324
前回のコラムでは、下のような上司からの問いかけで終わっています。これらの問題が起きた理由は何だろうかと考えることに、コーチングを進めて行きます。
1.売上の少ないお客様に訪問が集中している原因は何だろうか?
2.前年の売上が大きいお客様への訪問が少なくなっているのは何が原因だろう?
皆さんも一緒に考えてみませんか、営業パーソンが売上の少ない顧客に何度も訪問して、多くの時間を費やしているのはどのような理由によるものだろうか。実はこの現象はどこの会社にも少なからず見受けられることなのです、私がこれまでにデータを分析した企業は、大企業から中小企業までこの傾向が顕著に見られました。
今までに研修でお尋ねした時の受講者からの答えは以下のようなものでした。
・ 行きやすい所に行っているのではないだろうか?
・ 都合良く遣いっパシリにされているのではないだろうか?
・ 仕事の段取りが悪く、同じことで何度も足を運んでいるのではないか?
・ 急な呼び出しで仕方ないのではないだろうか?
いろいろな理由が考えられますね、どれも間違ってはいないと思います。しかしここで大切なことは、それが起きている理由は何かということです。どれも決して容認できることではありません、そして改善するためにはその原因を見つけることが必要です。
考えてみる点は以下のようなことです;
・ 行動計画のスパンが短いのではないだろうか?
・ 営業管理のあり方が結果志向になっているのではないか?
・ 行動計画が個人任せになっていて、上司が見ていないのではないか?
このように問題がある部下をコーチングする場合に大切なことは以下の三つです。
1. フレームワークを使う、ここでは「問題解決のプロセス」を使っています。
2. 仮説を立ててコーチする、これには知識と経験、そして人間理解が必要です、
3. データを使う、ここでは前回から引き続き「散布図」を使いっています。
2010年7月 のアーカイブ
上司のコーチング その11
上司のコーチング その10
上司のコーチング-10 問題の本質を探る-1
先月までと同様に、営業管理者が部下の営業パーソンをコーチするという想定で進めて参ります。データを使って問題の本質を探ります、何が原因でそのような問題が起きているのかを部下と一緒になって考えることです。
今回のような問題“上位20%までの優良顧客で、昨年年初から顧客シェアが約20%低下している”では「散布図(グラフの一種)」を作ることをお勧めします、これはエクセルを使えばだれでも簡単に作ることができると思います。
必要なデータは、3つだけです。1)顧客ごとのポテンシャル(購買力)、2)顧客ごとの年間売上高、3)顧客ごとの年間の訪問回数です。例えば2)と3)の組み合わせで、グラフにしてみます。見えるのは時間の使い方が適切かと、営業が効果的かということです。
ここから部下とのやり取りを想定してみましょう。
上司:このグラフが表すのは君の営業活動だけど、これを見て何か感じることある?
部下:何をみればいいのでしょうか、よくわからないのですけど。
上司:横軸が訪問回数、縦軸が売上高なんだけど、どんな形の分布が理想的だと思う?
部下:そりゃ右肩上がりです、訪問回数が多いほど売上高も多いのが自然ですから。
上司:君のグラフはそうじゃないよね、これが問題の原因じゃないかと思ってるんだ。
部下:つまり、営業活動のあり方が問題なんじゃないかということですね?
上司:そうだな、売上の大きい所で訪問が少ないし、売上が少ない所に訪問が多いね。
部下:確かにそうですね、何となくそんな気がしていたのですが・・・。
上司:そこには何か意図があったのかい、それとも無意識だったの?
部下:無意識です、何となくそうなっていたようです。
上司:そうか、二つ考えてみようか。
売上の少ないお客様に訪問が集中している原因は何だろうか?
前年の売上が大きいお客様への訪問が少なくなっているのは何が原因だろう?
部下:そうですね・・・。
こんなやり取りで進めることができます、そしてそこから“その問題を解決するためにどんな方法があるだろうか”を考えて行きます。データを使った問答無用のコーチングです、皆さんもやってみませんか?
スペインのオリーブオイル
オリーブオイルの主要な生産国は世界的にみるとスペインなのに、多くの消費者がイタリアのオリーブオイルに好意を抱いています。生産量でいうと世界の約半数はスペインで生産されています。そしてイタリアの生産規模は世界で2番目。
イタリアは上手くブランドを築いたのが理由です。話はこうです。スペインからオリーブオイルを輸入してそれを缶やボトルに詰めてイタリアのオリーブオイルとして輸出するのです。
これに対してスペインは対抗策を講じました。まずは、スペインのオリーブオイル生産は世界で一番ですよ!と明確に位置づけたのです。事実、消費者の頭の中にはスペインのオリーブオイルなど存在していなかったので、世界一のイメージをしっかりと植え付ける作戦でした。これを実現するために、スペイン産のオリーブオイルの全てにスペインの産地証明書を付けました。
二つ目の作戦が素晴らしいのです。「二千年前、私たちのお得意様はローマ人でした。それは今日でも変わりません。」という事実に基づいたメッセージを上手く活用してスペインのオリーブオイルの認知を得ようとしたのです。
そして最後のステップでは、顧客がスペイン産のオリーブオイルである事を容易に知れるように、スペイン産のオリーブオイルの商品には全て、それと分かるシールを貼ったのです。
早嶋聡史
富士通ファイリー会@鹿児島
本日は鹿児島です。
先月末からシリーズで行っています富士通ファミリー会の若手社員のビジネス力強化研修。本日鹿児島、明日宮崎です。九州各県を巡業中。参加者の皆さま、本日はよろしくお願いします。
利益志向と目的志向
目標を設定して、その目標に向かって進むことは自分の状態をハッピーに保つための一つの方法と言われます。目標はないよりも確実にあったほうがよい、というのは実際に現在進行形で行動している自身の体験からも頷けます。
さて、その目標の設定に対してですが、大きく2種類の考え方があります。1つは外発的な抱負をたたえた利益思考型の目標です。例えば、金持ちになりたい!とか、有名になりたい!などです。
もうひとつは、内発的な抱負を湛えた目的志向型の目標です。例えば、途上国の人々の暮らしを向上させることに従事しながら、自らも学びたい!とか、世の中の助けになる技術開発に従事して、開発をしながら自らも楽しみたい!などです。
上記の目標設定に対して、様々な所で実験され研究結果が報告されています。学生時代から目的志向型の目標を設定して、それを達成しながら生活していると感じている人は、過去よりも大きな満足度と習慣的な幸せを抱き、不安や落ち込みは極めて低いレベルにあると報告されています。
一方で、利益志向型の目標設定をしていた人は、実際に富を蓄積したり、賞賛を得たりしている確率は高いのですが、過去よりも満足度が向上したり、ポジティブな感情を自分の中で抱いていることが低いと言われています。目標を達成しているにも関わらず、以前よりもハッピーになっていると感じないのです。それどころか利益志向型の目標設定をしていた人は、過去よりもネガティブな感情が強くなったり、不安や心配などを自身の感情レベルで察知するようになっているそうです。
これらから導き出された結論は、人生をハッピーに過ごすためには目標設定だけでは十分ではないということです。正しい目標の設定が大切であるということです。
つまり、利益志向型の目標ではなく、目的志向型の目標を設定すると良いのです。
早嶋聡史
人間のOS
ダニエル・ピンク氏の新著、Drideでは、モチベーション2.0とモチベーション3.0と言うように2つの表現を用いています。モチベーションは、人間を何かに集中させて取り組ませたり、何かを活動する場合の基となります。そう考えると、パソコンにおけるOSのようなものです。
モチベーション2.0はタイプXの行動を前提に考えられています。タイプXとは、内発的な欲求よりも、外発的な欲求を行動の源として、活動から何か満足感を得るというより、活動の結果得られた外的な報酬と結びつきます。
この仕事を期日までにこのレベルまで仕上げたら、ボーナスが加算されます。このような行動がタイプXです。
モチベーション3.0はモチベーション2.0のアップグレードバージョンみたいなもので、OSが更新されたイメージです。そして、こちらはタイプIの行動を前提に考えています。タイプIの行動は、活動によっていられる外的な報酬というよりも、むしろ活動自体から得られる内発的な満足感に結びつきます。
仕事で成功を収め、プライベートの活動までを充実させるためには、タイプXの行動よりもタイプIにシフトしたほうがよりハッピーに過ごせると思います。
著書では、この行動は先天的なものではなく後天的なもの、つまり後から培うことが出来るとしています。タイプIの行動は更に、パフォーマンスの向上、健康の増進、全般的な幸福度の向上につながります。
早嶋聡史
島留学
日本海の島、海士町で活躍している友人の岩本さんからです。
—-
以下は告知ですが、次々世代の地域起業家を育成する海士町・島前高校への「島留学」について、全国各地の未来の地域リーダーたちと出逢いに仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、広島、米子、福岡で島留学説明会の全国キャラバンを行うことになりました。
皆さんとつながりがある地域の、志ある教育関係者や将来は地域社会を変えていきたいという想いのある中学生また保護者さんにお知り合いがございましたら以下、共有していただければ非常に嬉しいです。
岩本悠
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
~高校選びの新しい選択肢~
一人ひとりの夢を育む『島留学』
仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、広島、米子、福岡
日本海の小さな島から説明に伺います
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
□ 学力は大事。でも高校時代に身に付けて欲しいことは
それだけじゃない。
□ 豊かな自然・文化・人とのつながりの中で、これからの
未来を自ら切り拓いていく人間力も身につけて欲しい。
□ 全寮制の全人教育も良いと思うが、私立校や海外留学は
経済的に少し厳しい。
□ 子どもの可能性を存分に伸ばせる教育環境を探している。
そんな保護者の皆さまや教育関係者の皆さま向けに
都会の進学校とは違う隠岐島前高校(公立・普通科)の
取り組みと島留学についてご紹介します。
□ 高校生活は、豊かな自然や素適な仲間と、個性溢れる
先生に囲まれながら、充実した3年間を送りたい。
□ 教室内の勉強だけでなく、一生の想い出に残る貴重な体験や
おもしろい活動もやりたい。
□ もっと人間的に大きく成長したい。強く優しい人間になりたい。
□ 将来は自分の好きなこと、得意なこと、やりたいことを
活かして、地域や社会に貢献するシゴトがしたい。
□ たった一度の人生、夢を見つけ自分らしく挑戦したい。
そんな好奇心に溢れた中学生の皆さんのための『島留学』、
高校選びの新しい選択肢をご紹介したいと思います。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
『島留学』訪問説明会の概要
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
■ 内容:
島前地域の紹介、島前高校の取り組み紹介、島留学の紹介など
■ 日時・場所・会場
●7月16日(金)18:00-19:00 仙台
駅前のぞみビル 4F会議室
http://www.ibuki-sendai.co.jp/index.html
●7月18日(日)18:00-19:30 広島
JALシティ広島 ペガサス
http://www.hiroshima.jalcity.co.jp/
●7月20日(火)18:00-19:30 岡山
岡山コンベンションセンター 402会議室
http://www.mamakari.net/
●7月21日(水)18:00-19:30 米子
米子コンベンションセンター 3階 第二会議室
http://www.bigship.or.jp/
7月29日(木)18:00~19:30 大阪
大阪産業大学梅田サテライトオフィス 大阪駅前第3ビル19F
http://www.umeda-osu.ne.jp/
7月30日(金)18:00~19:30 名古屋
AP名古屋.名駅 8F E+F室
http://www.ap-nagoya.com/
8月1日(日)15:00~17:00 東京
アーツ千代田3331 1階 バイテン
http://www.3331.jp/access/
8月6日(金)18:30~20:00 福岡
福岡交通センター 9F 第二ホール
http://www.f-kc.jp/
■ 対象者
・興味関心のある中学生
・中学生のお子さんをお持ちの方
(中学生同伴でも、保護者さんのみの参加でも可)
・中学校や学習塾など教育関係者
■ 参加費:無料
■ お申し込み方法
こちらの専用フォームよりお申し込みください。
https://dozen.ed.jp/shimaryugaku/form.html
* 申込み多数の場合は、先着順とさせていただきます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ お問合せ先
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
島前高校魅力化プロジェクト 担当:岩本、濱板
電話: 08514-2-0731
メール: dozen-01@shimanet.ed.jp
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
隠岐島前とは?
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
島根県の北60キロ、日本海に浮かぶ隠岐諸島の中の
3つの島(西ノ島町、海士町、 知夫村)で、世界第一級の
景勝地である「摩天崖」や日本の名勝「赤壁」に加え、
後鳥羽上皇や後醍醐天皇が配流された地としても有名。
また、神楽や民謡、俳句などの歴史文化を誇る一方、
3島すべてが国立公園に指定されるほど自然豊かな島々である。
最近では、まちづくりも非常に活発で、独自の産業創出、
人づくり、教育施策により全国から多くの若者が移り住み、
地域活性の先進地として海外からも視察が来るようになっている。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
隠岐島前高校(おきどうぜんこうこう)とは?
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
隠岐島前地域における唯一無二の高校(県立)。一学年約30人、
全校生徒約90人という、手厚い指導が可能な規模を活かし、
一人ひとりの可能性を伸ばす少人数指導を行う一方、
著名講師を招いた特別プログラムや、海外研修旅行、
国際交流なども行っている。
総体16年連続制覇を誇るレスリング部をはじめ部活も活発で、
生徒一人ひとりの夢の実現を目指し、進路先は多様である。
(H21年度は筑波大学から大相撲力士まで)
地域活動も盛んで、昨年度は生徒達が企画した観光ツアーが、
全国観光プランコンテスト「観光甲子園」で日本一に選ばれ、
更に生徒達が島民と一緒になってそのツアーを実現化させている。
近年は島前3町村と島前高校、島根県が連携し、全国から生徒が
集まる特色ある学校づくりも始まり、高校との連携型公営塾
「隠岐國学習センター」の開設など魅力ある教育実践校として
島根県の「平成21年度優れた教育活動表彰」を受賞。
次年度からは、島の豊富な地域資源や人材を活用し、
次世代の地域リーダーの育成を目指す「地域創造コース」と、
夢に向け国公立大学などへの進学を目指す「特別進学コース」の
2コース制が開始される。
●隠岐島前高等学校HP: http://dozen.ed.jp/
●島前高校レスリング部HP http://www.oki-wrestling.com/
●観光甲子園でグランプリになった島前高校生の発表はこちら。
http://vids.myspace.com/index.cfm?fuseaction=vids.individual&videoid=1010463
15
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
島留学制度とは?
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
島外から島前高校の寮に入る生徒を対象に寮費や、
食費、里帰り交通費等の一部補助が出る制度です。
(公立高校のため授業料はかかりません)
国内でも特に治安の良い島の環境に加え、島前高校の寮は
学校隣接のため安心安全です。寮内では現役教員による
学習指導や進路相談もあり、集団生活を通して主体性や
リーダーシップ、自立心を育みます。
島留学に興味のある方は、保護者さま同伴で
8月20日(金)当地で開催のオープンスクール(高校説明会)に
是非ご参加ください。詳細は島前高校HPに掲載致します。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
島留学訪問説明会の各会場に伺う担当者
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
■ 藤岡慎二(東京、名古屋、大阪、福岡会場)
慶應義塾大学修士課程修了。自己発見のキャリア教育・
社会人基礎力・学習意欲向上、推薦AO入試を専門に、
大手予備校やハーバード大学進学塾「Route H」などで
小学生から社会人まで14年の指導歴を持つ。
ベネッセコーポレーションの新商品開発のアドバイザーも務め
現在は島前に移住し、学校連携型公営塾で指導を行う一方、
高校の外部講師として、地域起業家育成などの授業も行う。
島前高校魅力化推進協議会委員
■ 豊田庄吾(仙台、東京会場)
リクルートを経て(株)ウィル・シードにて学校教育部門を担当。
社会人基礎力や生きる力、起業家精神に関する特別授業を
7000人の生徒に実施。人間力の育成などで大手企業の研修も行う。
現在は島前に移住し、学校連携型公営塾のセンター長を務める一方、
高校の外部講師としてキャリア教育・学習意欲向上などの授業も行う。
島前高校魅力化推進協議会委員
■ 岩本悠(広島、岡山、米子会場)
学生時代、一年間アジア-アフリカを「流学」し、
その学習記『流学日記』(文芸社/幻冬舎)を出版。
その印税等でアフガニスタンに学校建設。
幼、小、中、高の教員免許を取得し教育学部を卒業後、
ソニーで人材育成/社員教育や社会貢献事業に携わる一方、
途上国への教育支援活動や国内の学校での開発教育、
キャリア教育などの特別授業を行う。現在は島前に移住し、
高校魅力化プロデューサーとして活動している。
短期的なインセンティブの落とし穴
ダニエル・ピンク氏の著書、Driveによると、これまで信じられてきた報酬による動機付けは、創造的な作業においては全く、逆効果を生むことを触れています。報酬が思考の幅を狭める傾向があるのです。
特に、「もし●●が出来たら、報酬を●●円あげるよ!」という具体的な交換条件付きの動機づけも思考を委縮させる恐れがあるとしています。長期的な思考が出来なくなり、目の前の実利に気がとられる結果でしょう。
報酬による動機付けは単純作業や繰り返し同じ思考を求められる仕事に対しては功を奏してきました。しかし、21世紀に入り、創造的な仕事が求められるようになると、報酬といった外的要因による動機づけは逆にその効果を損ねることがあるのです。
これは近年の株式公開企業を観察しても納得します。株式公開企業は企業ヴィジョンにそくして永続的な発展を求めています。一方で、企業の管理職や役員の多くの日々の業務は四半期の業績を目標にしているかのように働いています。
極端な話、四半期の業績を向上する投資に力を入れ、市場が好意的に反応する状況を好み、多くの時間と英知をアナリスト説明会や株主説明会に注ぎます。実際、四半期の業績ごとに管理職や役員は評価され、さらに株価にリンクした評価もあるため、上記のような行動は理解できます。
しかし、四半期よりももっと先に目を向けないと企業の成長と繁栄はあり得ません。ピンク氏の調査によれば、四半期のガイダンス等に時間を費やす企業は、そこまで頻繁に行わない企業と比較して、長期的な成長率が低い傾向にあるとありました。短期的な目標達成は出来ても、3年先、5年先の中・長期的な健全性は危うくなるのでしょう。
短期的な目標を達成することによって得られるインセンティブにより、短期的な利益を追うような組織になるのでしょう。結果、長期的な影響を与える意思決定に十分な時間を費やさなくなるのかも知れません。
リーマンショックは、上記を代表する例としてとらえる事が出来るかもしれません。住宅購入者、手数料を当てにしたローン・ブローカー、新種の株式を手に入れたいトレーダー、好景気を前面に押し出したほうがよいと考えた都合のよい政治家。経済に加担する全ての役者が短期的な報酬に目を向けた結果がリーマンショックだったのかも知れません。
早嶋聡史
アメとムチの動機付け
アメとムチ。マネジメントを行う上で少なからずとも参照される管理手法ではないでしょうか?
しかし近年の研究では、報酬によってその仕事や作業の成果を最大化することはかえって逆効果を生むことが分かっています。特に、独創的な考えやひらめきを必要とする仕事においてです。
多くの実験結果で、ひらめきや創造性を必要とする作業において、報酬を事前に示した場合、その報酬額が大きいほど良い成果を収めることが出来なくなるのです。一方、その仕事が機械的なスキル、つまり単純作業や繰り返し作業で、頭を使わない手の仕事であれば、報酬は期待通りの役割を果たすと言われています。従って、報酬の額に比例して仕事の成果が向上するのです。
これは非常に重要な研究成果です。人の動機付けをどのようにするのか?それは仕事の種類によって分ける必要があるということです。つまり、創造的な仕事か?そうではない仕事か?によってです。
その仕事が創造的な仕事でない場合、つまり主にルーチンワークである場合、次のような事を考えます。その仕事が仕事に対してのやりがいを増し、機械的な側面を減らすことが出来ない場合、報酬を利用できます。その場合、次の3つの点に注意します。
1)その仕事が必要である事を示します。そして2)その仕事自体は退屈なものであることを通達しておきます。最後に、3)仕事の仕方は任せるのです。仕事はルーチンワークですが、仕事の仕方までは管理せず、自律性に任せるのです。
一方、上記以外の仕事、つまり創造的な仕事である場合、金銭的な報酬をチラチラさせながら動機付けを行おうとすると逆効果になります。従って、次のように進めます。まず、公平な賃金を保証します。自律性があり、仕事を行う事で熟達でき、目的意識を十分に育ませます。そして、何よりも仕事がしやすい環境を整えるのです。
そして、報酬に対しては、これが出来たら、これだけの報酬を上げる!という交換条件付きの報酬を避けます。そのかわり、予期しない、条件のつかない思いがけない報酬を検討するのです。
1)賞品や金銭よりも、賞賛やフィードバックを多用する。そして、2)相手をコントロールしようとするのではなく、相手に役立つ情報を提供する、です。
つまり、クリエイティブで右脳的な仕事に対してもし、条件付き報酬を与えたら、逆効果を生むのです。その場合、結果に対する思いがけない報酬を提供するのです。賞賛やフィードバック、その仕事に対して有益な情報を与える、これは更に高い効果を発揮するのです。
早嶋聡史
不合理
経済学とは金銭に関する学問ではなく行動に関する学問です。一日中誰もが常に自分の行動のコストと利益を計算して、どのように行動するかを決めています。人は自分にとっての最善の行動をとるため経済学者は発言よりも人の行動を研究します。
法律の立場にも似たような考えがあります。人は自己の利益を計算する事にきわめて長けているからこそ、法や規則は、公正な成果に寄与するよりも、それを妨げる場合が多いという考えです。
しかし、この考え方は大きく変わりました。2002年にノーベル財団がノーベル経済学賞を経済学者ではない人物に授けました。人は必ずしも自己の経済的な利益を合理的に計算するわけではないし、当事者は富を最大化する事を目的に取引もしない場合も多い、という事実を明らかにした功績に対してです。ブログでも何度かつづりましたが、行動経済学のダニエル・カーネマン氏に対してです。
経済学と聞くと多くの人が金銭に関してを意識しますが、実際は人間に着目した学問なのでしょう。計算機のような頭脳を持つ合理的な人間は実際にはいないのです。
現実の世界では人間は本に書かれたように行動するのではなく、はるかに複雑な行動をとります。例えば、老後に備えて十分な蓄えをしたほうがよいことは誰もが知っている事ですが、そうはしません。
例えば、儲からない宝くじに必要以上に執着します。株も同じです。
例えば、同じ金額だとしたら、それを稼いだ時の感情よりも、失うときの痛みのほうがはるかに強くなります。
人は不合理なのです。
早嶋聡史
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