自動車と自動運転の車は全く別業界として見る

2019年3月20日 水曜日

早嶋です。

自動運転が普及すると、車そのものの概念が大きく変わると思います。

所有者。自動運転になると、車が停車して持ち主がいない場合は、潔癖症でも無い限り、他のかたを載せて、運賃を稼ぐ仕組みになるでしょう。ウーバーやグラブなどは、乗りたい人と載せたい人をマッチングするツールですが、徐々に運転手が場所によっては不要になり自動運転の車のマッチングアプリとして機能しはじめるでしょう。そうなると、個人が所有するよりも資本を持っている法人が所有して収益を得る仕組みに流れるでしょうから所有者の多くが法人に移行していくと思います。

当然、個人での所有も一定数以下は減らないでしょうが、自動運転が普及して、法人がいたるところで自動運転を配置していれば個人で所有する意味がほぼなくなります。もし、自分で運転したいという場合は、カーシェアなどの仕組みで車を一時的に借りて楽しむ目的になるでしょうから、余裕がある人や潔癖症やマニアといった特に車に思い入れが在る人以外は企業が提供するサービスで事足りるようにななります。

車種。所有者が法人になれば車種が限定されていくと思います。タクシーを見ると一目瞭然です。多くのタクシー屋さんは共通の車を使っています。メンテンナンス、性能、耐久性、使い勝手等々を考えていくとたくさんの車種を持つよりも同じ車種に限定したほうがより規模のメリットを追求できるようになります。そのため自動運転事業が普及されるようになった場合は、法人が選ぶポイントはその車が事故を興した履歴が少ないことです。

先日の日経に自動運転技術に関する記事がありました。米国カリフォルニア州では世界中の自動運転技術者があつまり日々行動でテストドライブを行っています。そして、毎年カリフォルニア州に各社報告を上げる義務があるのです。日本経済新聞社がその報告を分析した資料によるとグーグル系のウェイモがぶっちぎりで公道の走行試験を行っているおとがわかります。報告には、試験走行した距離と実験中に事故回避のために人が介入した回数が記録されています。

現在、カリフォルニア州では62社に対して公道実験の許可をだしています。走行距離1位のウェイモは直近1年間で98台の車両を使って地球50週分に相当する202万キロメートルでトップです(ちなみに、2位はGMクルーズで72万キロ)。それだけ走って人間の介入は114回。1万7千キロメートル毎に1回の計算です。介入の頻度は毎年報告されていますが、この介入頻度は去年の半分以下になっており技術の進展が見られます。自動運転の開発にはシミュレーターを使って行う企業もあり、そのような企業のコメントは「単純に走行距離の数字で自動運転の技術進歩を示さない」とします。

しかし、最終的に自動運転が本格的に普及した場合、購入するのは人間でかつ、合理的な収益を考えた法人です。シミュレーションの実績と実際に走行した実績を示された場合、両方が高い企業の取り組みをまずは評価するでしょう。おそらく、自動運転になった場合の保険の考え方も変わるはずです。その際もシミュレーションのみの自動運転の車は人間の感情がはいってこわいので、保険の掛け率を高くするでしょう。そうなると走行距離の蓄積は無視することができません。

そもそもの前提でAIで何かを判断する際に必要な情報はリアルデータです。ウェイモは過去から通算するとすでに地球400秋分の公道走行のリアルデータを保有しています。つまり、現時点で世界で最も経験豊富な自動運転のドライバーということになるのです。ウェイモの18年の事故の報告を見ると交通量が多い場所での事故が増加しているとあります。そして別の資料では18件の事故の内、16件は停止中の追突や接触です。つまり、もらい事故なのです。自動運転が充実しても周りが人間であれば、思わぬ事故がある、ということです。これはシュミレーションに入れて計測することはやはりまだ難しいですよね。

ちなみに米国カリフォルニアでの自動運転の公道走行試験の実績では、以下の通りです。10位の中はほぼアメリカ勢で8位のバイドゥと10位のウィーライドエーアイは中国です。

1位:ウェイモ 約200万キロ
2位:GMクルーズ 約72万キロ
3位:アップル 約13万キロ
4位:オーロラ 約5万キロ
5位:ズークス 約5万キロ
6位:ニューロ 約4万キロ
7位:オートXテクノロジーズ 約3.6万キロ
8位:バイドゥ 約2.9万キロ
9位:ビニーエーアイ 約2.6万キロ
10位:ウィーライドエーアイ 約2・5万キロ

ちなみに日本勢は、日産が14位で約0.8万キロ、トヨタは23位で613キロとはるかに出遅れている(少なくとも走行試験という結果においては)ことがわかります。

自動車は自動運転になった瞬間にブランドで選ぶことから、自動運転の安全性で選ばれるようになります。この数字を見るだけでも日本勢が自動運転の世界で首位に立てることはかなり難しことが予測されます。

自動運転の技術がベースになれば、今度はその車体をどのように開発、製造、供給するかが問題になります。自動運転のノウハウというソフトとハードの融合を持った米国、中国のIT系の企業が往年の自動車メーカーを「下請け」として活用して製造委託するという構図もまんざらありえない話では無いとおもいます。



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