羽田のハブ化

2009年10月19日 月曜日

airport


超音速旅客機、コンコルド。2003年を最終フライトとして姿を消しました。もともとコンコルドは運用段階から赤字が出る事が判明していました。しかし、それまで行ってきた事が無駄になる事を恐れて英仏当局により開発が続行されます。そして僅かな数が生産され、商業でも大失敗をおこないました。

行動経済学では、これらの行動を「コンコルドの誤り」といいます。また、ファイナンスでは、これらの行動を「サンクコスト(埋没費用)」と言います。

現在、羽田空港を国際的な空港のハブにするという議論がなされています。前原国土交通相が推進の口火を切ったことが始まりです。

首都圏には羽田と成田の2つの空港が存在します。羽田は国内線、成田は国際線のイメージが強いと思います。しかし、もともと羽田は国際と国内の両方の路線を運航していましたが、1978年の成田空港開業に伴い、現在のようにすみ分けを行いました。

当時から羽田の利便性は考えられていましたが、かつての技術水準では沖合への拡張が困難で、旅客が増えても航空機の物理的な着陸回数を増やす事ができませんでした。そこで成田を開業したという背景があります。

しかし現在は技術水準が大幅に向上しました。困難だった海上埋め立ての技術が革新して羽田の沖合は現在は埋め立てを拡張して来年の10月頃には4本目の滑走路の利用も始まる予定です。

前田国交省はこのタイミングで「羽田の国際枠を増やして24時間の国際線のハブを目指す」と述べたのです。日本が、今後アジアの中心になるのであれば、シンガポールのチャンギ国際空港やソウルの仁川(インチョン)国際空港に負けない設備は必須です。

これに対して千葉県の言い分が少し稚拙だと思います。まず、「成田には突然降ってわいた議論です!」などと発言しています。しかし、上記の背景を考えるとこのような議論が何時起こってもおかしくない流れです。また、成田は誰が考えてもハブ空港にするためには陸路の便が悪すぎます。

そしてもう一つ。千葉県が主張しているのが「成田空港は完成までが苦難の歴史であり、事はそう簡単でない」と主張している点です。議論の対象は過去の話ではなく、これからを基軸に将来に向けての発想です。つまり、これまでの事は明らかにサンクコストとして考えるべきです。国際的なハブ空港という発想は国全体の最適を考えるべきで、県の部分最適を考える議論では無いと思います。

羽田に4本目の滑走路が出来ると段階的ではありますが年間に11万回の発着枠が増えます。国の方針では、現在国際線に3万回、国内線に2万回を割り当てることが決まっています。前原国交相は残る6万回を国際線の枠に考えているのでしょう。


早嶋 聡史(はやしま さとし)


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