早嶋です。
2018年2月期、主要な小売業57社の8割弱で純利益が増加。セブンアイなど3割の企業が最高益になる見通し、と日経にありました。消費者の傾向が継続的な節約志向はあるものの、健康、安全に対しての価値を認め単価を引き上げているのが背景にあるようです。
以下、2017年4月13日の日経新聞抜粋ーーーーー
イオンは12日、18年2月期に売上高にあたる営業収益が前期比1%増の8兆3000億円、純利益は33%増の150億円になる見通しだと発表した。総合スーパーを運営するイオンリテールの岡崎双一社長は「顧客は価格だけでなく価値を評価している」と話す。
「高め消費」を取り込もうと旧ダイエーの店舗を総菜やワインを取りそろえた「イオンスタイル」などに転換する。プライベートブランド(PB)商品は低価格品だけでなく、安全認証を受けた魚や自然肥料で育てた肉など高価格品が好調だ。
ーーーー終了
総務省が発表するエンゲル係数も2016年に26%とおよそ30年ぶりに高い水準になっています。この数字の背景は共働き世帯の増加によって惣菜や冷食の需要が増加したことがあります。また、高齢化層は食やファッションの消費は全体として細っています、健康配慮の商品、家の中を快適にする住居関連で付加価値が高い商品は好調になったのでしょう。
結果、業態としてはコンビニ、スーパーには追い風、生活雑貨も機能や付加価値を提供する企業は追い風になったのです。もちろん企業も努力をしており不採算事業を縮小して不可価値品を揃えている企業が結果業績をあげています。
◯セブンアイ。不振だったスーパー事業で不採算店舗を閉鎖、総菜に力を入れた。
◯イオンも同様の取り組みをしている。
◯ローソンは健康志向の商品が最高益を牽引している。
◯家具のニトリは大都市の百貨店の進出をおこない高価格帯の商品が伸びた。
今後の小売業のマクロ環境は、1)ネット通販、2)人手不足、3)物流費の高騰をどのようにマネジメントするかが課題になりそうです。
インバウンドの爆買いはリアルからネットの世界に移行して越境ECが活況です。百貨店などリアルの投資を続けた業態はネット通販の変化に大きな打撃を受け続けるでしょう。一方で、ネットが扱いにくい生鮮や総菜は、先に延べて健康、安全とあいまって今後注力するジャンルの1つになるでしょう。
人手不足について無人レジの導入や高度化した物流センターに投資をした企業の先見の目というか戦略の勝利ですね。無人レジ関連ではテラオカや東芝テック、NECや富士通フロンテック、富士電機やOKIなどには追い風になりますね。一方、物流センターでは、前回起きたアスクルの火事を受けて大規模倉庫の3割が消防法違反だったので、業界には追い風ながらも追加の設備投資を余儀なくされます(当たり前の投資だが、安全面で)。結果、規模の経済で資金的に余裕がある企業が更に設備投資を行い業界の再編が進むでしょうね。
2017年4月13日 のアーカイブ
小売業界の明暗
ポテチショックにみるカルビーの強さ
早嶋です。
全国のスーパーやコンビニからポテチがなくなる、或いは品薄になっています。いわゆるポテトショック。そしてネット時代の反映を受けて早速、一部のポテチ銘柄がオークションサイトで数万円近くの出品もで始めました。4月10日にカルビーと湖池屋のポテチが品薄になることが報道されているので、やはり最近の投機筋の動きはすごいなと思うばかりです。
さて、国内の製菓メーカーの売上高を調べてみました。1位は山崎製パンで3700億。ヤマザキビスケットや不二家、東ハトなどをもつ企業です。2位はカルビーで2400億。スナック菓子最王手です。3位が江崎グリコで2000億。チョコレートなスナック菓子、アイスなどを製造販売しています。4位は森永製菓の1800億、5位は明治HDで1600億。
報道で気になったのはカルビーと湖池屋の社名が並んでいたことです。上記の国内の製菓メーカーの上位ランキングにはでてこない湖池屋がなんでだろうと調べてみました。
するとスナック菓子というジャンルでくくって見たところ1位がカルビー、2位が湖池屋だったのです。なるほど、今回はポテチだったので合点がいきました。湖池屋の商品ポートフォリオは1)ポテトスナック、2)コーンスナック、3)タブレット製菓で売上比率にするとポテトとコーンで99%の売上比率です。
全日本菓子協会の菓子統計をみると、スナックの国内市場規模は1980年から1990年にかけて上昇、2005年ころまで減少、そして現在まで再び上昇しています。1980年の規模は2800億円程度で1990年が4000億円、そして3500億前後まで下がったあと、2015年で4200億円程度まで上がっています。同統計にはチョコ、ビスケット、米菓子がありましたがこの菓子小売市場は緩やかなものもありますが成長していることを知りました。
富士経済の食品マーケティング便覧2017年によれば、スナック菓子メーカーのシェア100(規模3188億円)とした時、カルビーは50%、湖池屋が12%、山崎製パンが僅差の11%、おやつカンパニーが6%、日本ケロッグが4%、森永製菓、明治、ハウス食品がおよそ2%です。
カルビーの主力商品はポテトチップス、かっぱえびせん。湖池屋の主力はカラムーチョ、スコーン、ドンタコス。山崎製パンの主力はチップスター、キャラメルコーン。おやつカンパニーはベビースター。ということで各社報道はポテチに限ってはカルビーと湖池屋を引き合いに出したのですね。
ちなみに富士経済の食品マーケティング便覧でポテトチップスのシェアを見てみました。全体を100(売上規模1102億円、2015年)としたときカルビーは71%、湖池屋22%、他7%とカルビーが圧倒的に強い領域がポテトチップスなのですね。
2社のポテチを調べて見ました。1962年に湖池屋がポテトチップスを発売。その8年後の1975年にカルビーもポテトチップスを発売しています。湖池屋がポテトチップスについては元祖のようです。湖池屋はその後ポップコーン、カラムーチョ、スコーン、ポリンキー、ドンタコスを1985年頃から1995年頃に発売してスナック菓子の統合企業になり売上を200億規模に成長させています。2000年初頭に海外展開をはじめ2004年のJASDAQ上場の頃に300億円の規模の会社になっています。
一方のカルビーは1975年にポテトチップスを発売する頃の規模は200億後半。1990年台には1000億規模、2010年頃に1500億、現在は2500億の企業規模になり企業としての格差は拡がっています。元祖湖池屋がポテチの市場を創造してカルビーとともに市場を拡げ、現在はカルビーがその市場を牽引している絵図なのです。
因みにポテトチップスのシェアを調べてみると1990年はカルビーが7割、湖池屋が1割、2割は複数社のの頃。それが2015年にはカルビーは7割、湖池屋が2割になっているので湖池屋が挽回に向かっていることはわかります。それでも7:2の力の差。恐るべきカルビーというのがポテチ業界の事情なのです。
少し海外に目を向けます。カルビーの2015年のアニュアルレポートにカルビーはジャパンフレトリーを完全子会社化して、ペプシコに20%の出資をしている記述がありました。ペプシコは米国のスナック市場の5割を牛耳る会社でその日本の会社をカルビーが傘下においている。つまり、カルビーはポテチに対して国内最強、海外(米国)でも最強のペプシコと手を組んでいる。日米のトップ同士がガッチリとポテチを牛耳っているのです。これでは湖池屋は2割のシェアを更に伸ばすことはかなりハードルが高いと言えそうですね。
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