中小企業の6つの心得

2012年1月30日 月曜日

中小企業で売上が5億円前後の企業は経営者の方針を明らかにして、自社の得意分野や効率の良いセグメントに力を注ぐことで、驚くほど成果があがってくる場合が多いです。これまで100社を超える企業で課題共有ワークショップを行っています。
その中で共通に感じることは、
 1)将来のシナリオが曖昧
 2)顧客ターゲットがあいまい
 3)提供する製品やサービスが多すぎる
 4)営業のリソースを管理出来ていない
 5)既存顧客のフォローが手薄
 6)顧客が抱える不満を放置している
という共通点があります。

1)将来のシナリオが曖昧
多くの中小企業では、時間に追われていて、先を考える暇がありません。しかし、落ち着いて考えてみると、今追われている仕事の多くは、過去に発生した仕事の後処理です。過去に発生した仕事の処理をしている限りでは、現状を乗り越えることが出来ますが、飛躍した将来を迎えることは難しいでしょう。一方で、現状の仕事をおろそかにすると、その時点で会社経営が成り立たなくなるので、放置する訳には行きません。経営者にとって非常に悩ましい限りです。

しかし考えてみると、このような状況で誰が将来の姿を考え、誰がそこに社員をリードしていくのでしょうか。そう、それを考えるのは唯一経営者しか居ないのです。将来のシナリオを考え整理出来ていれば、今取り組んでいる仕事が必要なのか?飛び込んでくる仕事を全て引き受ける必要があるのか?様々な局面に置いて判断することができるようになります。

企業規模の大小に関係なく常に経営資源は不足しています。従って全てを行うことは、何も出来ないことを意味します。経営資源を有効に活用するためにも将来のシナリオは大切なのです。逆を言えば将来のシナリオが曖昧だから、無駄に経営資源を使うはめになり、結果的にいつも追われた状況になるとも考えることができます。

2)顧客ターゲットがあいまい
中小企業の経営者に誰が顧客ですか?と質問をすると、多くの場合、かえってきません。或は、お金を払って頂けるヒト全てとか、通りを歩いているヒト全てとか、特定する考えがありません。従って、顧客からあがった要望に色分けすること無く、全てに対応しなければと考えます。もしくは、自分たちの持っている強みを総動員して、誰が買うのか分からない商品を提供されています。

しかし、誰が買うのかを考えていない場合、本当にそれが購入されるでしょうか?或は、全てのヒトに対応することなんて可能でしょうか?不可能では無いですが、かなりの経営資源が必要になるでしょう。仮に全てのヒトが全てのことに満足する製品やサービスが存在したら、その製品やサービスはとんでも無く高いモノになると思います。

では、何をすると良いのか?自分たちにとって一番良いお客さんの塊を自分たちではっきりと定義するのです。これはマーケティングの最も基本的な考え方です。顧客を明らかにする。これが出来たら、経営の効率が高まるばかりではなく、そのターゲット層に関連する顧客までも自社のファンになって頂けます。マーケティングの反対に、デマーケティングがあります。自分たちの顧客ターゲットで無ければ、逆にお断りするという極端な考え方です。しかし、断るかは別として、基準があるからこそ、すること、しないことが明らかになるのです。

3)提供する製品やサービスが多すぎる
ここの原因はターゲットを絞らないことにも起因します。誰に対してが明確ではないから、徐々に提供する製品やサービスの数が多くなります。経営者の考えとしては、武器を沢山持っていたほうが、様々な局面に対応出来ると考えるでしょう。しかし、製品やサービスの数が多ければ、それだけ一つ一つの特徴がぼやけてくるのも事実です。数多くの製品サービスを管理することは大企業にとっても至難の業。よリ経営資源が乏しい中小企業だったら思い切って絞り込むことが得策です。

経験則に2:8の法則があります。例えば、上位20%の商品で売上の80%を確保している。20%の人材が80%程度の売上や利益に貢献している。それは経験則であって・・・、と聞こえてきそうですが、実際に数十の企業で詳細に分析しましたが全て当てはまっていました。そして、行うことは絞り込むことです。全体の2割とか3割で成果の7割とか8割を上げている商品に絞り込むのです。一瞬売上が下がります。しかし、それまで空回りしていた経営資源が一気に効率のよい商品に注がれる訳ですから、結果的に効率が良くなるのです。

ブランドやイメージという観点からも絞り込むことは大切です。例えば、30種類のケーキを毎日作っているケーキ屋さんと1種類のケーキしか作っていないケーキ屋さんがあったら、どっちが印象が強いでしょうか?その一種類がマドレーヌとしたら、相当に自信があるんだろうな、とてもおいしいだろうな、と顧客は考えるでしょう。

高級品から低価格品まで扱っているお店と、高いものしか扱っていないお店。この印象はどうでしょう。ラーメンからカレー、チャーハン、餃子、そして洋食の定番ハンバーグまで。全ての料理を提供するお店と餃子専門店。この印象はどうでしょう。

絞り込むことで顧客のイメージが強くなります。専門的な、よりプロフェッショナルな印象が強くなります。更に、在庫の管理やオペレーションの効率がグンとあがります。例えは一例にすぎませんが、中小企業はフルラインナップで勝負するよりは、絞って専門家するほうが良いのです。

4)営業のリソースを管理出来ていない
中小企業の多くの共通点は、商品がめっぽう良いのです。へー、こんな製品を開発しているのですね。へー、こんなきめ細かなサービスを対応できる体制があるのですね。一方で、その商品を認知させたり、更にクールに見せたりすることに頭が回りません。営業担当はいますが、組織化されずかって気ままに動いています。組織での活動と言うよりは属人的になています。

目標の設定も例えば今期は2億円!で終わり。どの商品でいくら、どの地域でいくら、誰がいくら、などの大まかな細分化も無い場合があります。それである程度の数字をこなして来ているので、すごいなーと思うことも逆に多々あります。

重要なことは、戦略に沿った目標を細分化する。それによって、実際達成出来そうな数字なのか?否か?を把握する。達成できそうな場合は、その確度を高めるために夫々どのようなことを行う必要があるのか?更につめていき、管理者がその計画を達成しやすくフォローすることです。そしてもし、達成できそうに無い場合は、他にその目標を達成できる市場を探すか、その目標自体を見直す必要があります。

たまに営業パーソンが机に座っているのを見て、何も考えずに、何ぼーっとしてんだ!営業に行ってこい!なんて管理の仕方をしているようではいけないのです。

5)既存顧客のフォローが手薄
中小企業に限った課題ではありませんが、顧客管理が手薄です。現在の顧客に対しては売上が発生しているので誠心誠意対応をしています。しかし、一時営業取引が手薄になった顧客に対しては、そのままの場合が多いです。また、営業をかけている途中で、最終的な成約にはいかなかったけど、良い所まで提案が出来た顧客もほったらかし。一方、常に新規の顧客を探しまわり、まるで焼き畑農業のよう。新しく開拓しては、また次に行く。結果、常に営業している割には非効率なのです。

そこでおすすめなのは、過去の顧客リストを整理すること。現在、取引をしている顧客。過去1年間取引が無い顧客、過去2年間取引がない顧客、と。一度は取引があったが、ある一定期間取引がない顧客は、また何か取引を発生するチャンスがある可能性があります。ここを掘り返すことは、新規で営業をかけるより遥かに効率が高いでしょう。理由は、誰にコンタクトしたら良いのか?も既知で、1回以上は提供している商品やサービスの購入履歴があるからです。

よく、新規の営業と既存の営業は1:5の法則があるといわれます。新規の営業を1件とるためのコストが5かかるとしたら、既存の顧客を維持するコストは1で済むという経験則です。考えてみると、新規の営業はリストの絞り込み、誰にアプローチしたら良いのか?全て未知です。仮にコンタクト出来たとしても、ゼロから自社の商品のセールスをする必要があります。とてもコストがかかる仕事なのです。だからこそ、一度顧客になって頂いたら、継続的にビジネスができるように顧客のフォローが大切なのです。

もうひとつの方法は、過去提案した顧客で、成約まではいかなかったけれど、最終提案まで進んだ顧客、最終提案まではいかなかったが見積もり提案をした顧客など、提案したプロセスに沿って顧客を整理します。過去のコンペでは負けたけれども、良い線まで行っている顧客は、実際に今他の商品を利用していて何か不都合があるかも知れません。特に、最終的にコスト面で負けた場合は、実際の易い製品やサービスを利用していて不満があるかも知れません。その不満を解消する提案が出来たら、巻き返しが出来る可能性もあります。この場合も、既にコンタクトをしているので、誰にアプローチを取れば良いのか、完全の新規よりは効率が高くなるでしょう。

6)顧客が抱える不満を放置している
良く、蕎麦屋のカツ丼と例えます。中小企業が陥り易い過ちです。商品を絞りきれず、顧客の要望に応じていろいろな商品を展開する。その結果、主流の商品以外に亜流の商品を展開してしまいます。蕎麦屋さんが出さなくても良いカツ丼をメニューに出しているとします。蕎麦を食べに来た顧客がつい、カツ丼も頼むでしょう。瞬間的に考えるとクロスセリングが成立して客単価の向上に繋がりますが、そのカツ丼がおいしくなかったら。そう、蕎麦屋の評価として、再びリピートして頂ける可能性が激減するのです。もし、蕎麦しか出さなかったら、蕎麦で不満はありません。従って、長期的な取引が続く可能性があるのです。

商品を絞りきれない場合、上記のようなことが良くおこると思います。もちろん、主流の商品は気合いが入っているので不都合は殆どないでしょう。しかし、不満の多くは主流ではない商品によっておこっているのです。そして、企業はそのことに気づかないまま。

打ち手としては、2)と3)に書いたようにターゲットを絞り、商品を絞ることです。それ以外に行うとしたら、満足度を上げる活動よりも、不満を見つけ出して可もなく不可もなくの状態にすることでしょう。



コメントをどうぞ

CAPTCHA