原です。
今回は、顧客の声を聞くことのビジネスメリットを理解しても、素直に聞くことができない理由について説明します。
筆者は、クライアントなど多くの企業側から共通の本音を聞きます。共通の本音とは、「ビジネスを成功させるうえで顧客の声を聞くことは必要だと知っている。一方、本当は顧客の本音を聞くことが怖い」。企業側に「怖い理由」を聞いてみると、「自分達が想いを込めて作った製品・サービスを批判されることが怖い。長年のキャリアなどプロとしてのプライドが傷つく」と言われます。
筆者は、この「怖い理由」に同感できます。
筆者も研修講師を終えた後、受講者アンケートを拝見する機会があります。アンケートの中身は、「受講して良かった、面白かった、仕事に役立つ」などの高評価もあります。逆に、批判的な意見も書かれています。やはり、この批判的な意見を聞くことは怖いです。
それでは、この「怖さ」の理由は、一体何なのでしょうか。
それは、「感情の壁」があるからです。
間違えること、失敗すること、あるいは批判されることへの恐れは、最も一般的に見られ、多くの人に共通する「感情の壁」であるといえるかもしれません。
私たちは、「正しい」答えを出したときにほめられ、間違えると叱られながら育ってきました。
特に、一生懸命に頑張った結果に対して批判的な反応を示されると精神的なダメージは大きいです。
一方、筆者は、素晴らしいアイデアの持ち主と一緒に仕事をしたことがあります。アイデアが多く商品化に取り組むことも多くなる分、周りからの批判も多かったです。
ところが、彼はその批判的な意見を取り込み、また試作開発に取り組みます。そうこうしているうちに、だんだんと優れた製品が作り上げられていきました。これは、彼が批判を受け入れ、取り込むことができたからです。
彼は、アイデアを多く持っていただけではありません。人の批判を冷静に受け止める勇気がありました。失敗を恐れない行動力がありました。つまり、早めに失敗して早めに批判を受け、改善しながら成功につなげることを楽しむマインドを持っていたのです。
ただし、彼のような人は少ないと思います。たいていの人は批判されると不愉快になります。
筆者は、彼から学びました。
もちろん、顧客から全ての項目について高評価を受けることを目指すことは、プロとして当たり前です。しかし、価値の多様化など顧客も様々な思考や性格のタイプがあります。また、どんなプロでも万能であるということは、とても困難です。顧客の本音を知ることで、自分自身として気づかなかった視点や反省すべきことが発見できます。
「怖い」という感情の壁は、自分自信が勝手に作っているのではないでしょうか。案外、本音を聞いてみると「そんなに怖くなかった」ということもあるのではないでしょうか。
2019年5月 のアーカイブ
本当は顧客の本音が怖い
試作と試験販売を得て論理的に「仮説を検証」する
原です。
仮説を立てたら即実行では、リスクがあります。仮説を検証しないまま本格展開し、販売不振による手痛いダメージを被る企業もあります。少なくとも一度は検証する機会をもち、仮説を改善させてから導入することで、そうしたリスクは少なからず低減させることが大切です。
仮説の検証方法にはいつくかあります。ここでは、①インタビューによる検証、②実験による検証について解説します。
最初は、①インタビューによる検証についてです。
顧客へのインタビューは仮説を立てるとき、検証するとき、改善するとき、いずれの場合にも有効な手段です。
自分の出した仮説を自分で検証するという方法もありますが、客観性に欠けます。それよりも、他者との対話によって検証するほうが時間もかからずに効率が良いです。
インタビューによる検証は、社内での同僚、上司や部下に聞く。顧客に直接聞く。あるいは市場の流通関係者に仮説への声を聞く。たとえ流通関係者が仮説に納得していなくても、顧客が納得してくれれば商談の強力な説得材料にもなります。
続いて、②実験による検証についてです。
仮説を検証する場合、一番分かりやすいのは実験することです。試験的に、現場で商品を少しだけ販売してみるのです。
一般的に行なわれる現場での仮説検証の方法として、テストマーケティングがあります。
テストマーケティングとは、商品を販売する際に、当初限定された市場、チャネルなどで、本格販売と同じ条件でテスト的に販売することです。
テストマーケティングでは、初動、リピート、広告や販売促進との連動などが測定され、商品コンセプト、販売計画、訴求ポイントなどが本格展開に向けて改善されます。生産計画などのリスクを最小限に留め、効率のよいマーケティング活動を行うことができます。
例えば、筆者が関わった仮説検証の事例です。
販売不振の食品加工商品について、グループインタビューにより顧客の声を聞き分析し、商品改良の仮説を立てました。更に改良後の試作品についても顧客の声を聞き分析し、試作品の改善に取り組みました。
改善後にはテストマーケティングにより、既存チャネルだけでなく仮説による新規チャネルでも実験的に販売しました。結果的には、販売好調の事実が検証できました。その後、本格販売に向けて改良した商品の生産数を増加し本格販売に至りました。
このように、仮説を検証してみることで、顧客のニーズをつかむことができました。つまり、「仮の答え」を「答え」にまで進化させることができるのです。
あたりをつける情報を得て「仮説」を考える
原です。
今回は、前回ブログ(素直に顧客の声を聞く大切さ)で述べてきた顧客の声を聞くためのインタビュー調査は、いったい何のために行うのかを整理してみます。
なぜ、顧客の声を聞くのかについては、問題解決となる「仮説の抽出」を主な目的としています。
仮説とは、「仮の答え」です。「はっきりと分かっていないことについての自分なりの答え」です。
こうした仮説を持つことは重要です。それは、顧客がある商品に対して満足していること、不満足なこと、期待していることなどについて、「おそらくこういう意識や実態があるのだろう」と仮説を持つことで課題が絞られるので、分析や問題解決策立案がスムーズになります。
あるいは、答えが分からないから調査をするのに、「どうして仮説が必要なの」と思われる方がいるかもしれません。それは、できるだけ多くの情報を集めて、それらを分析してから、真の問題を発見し解決策を出そうとします。そうした場合、実際に起こることは時間切れです。
筆者も若い頃、事業計画を立案する時に、とにかく情報収集して分析すれば解決策が立案できると思っていました。結果的には、情報の氾濫で期限が近づき、過去の計画に少し修正を加えた程度で終わる恥ずかしい結果となりました。
仮説がないと、根拠もなくただ何となくインターネット検索、アンケート作成、顧客への質問などの情報収集や分析だけで時間が過ぎます。
一方、まったく何も情報がないなかでは仮説も立てられません。ざっくりと「あたり」をつけるための情報が必要になります。
そこで、インタビュー調査での仮説抽出が役立つのです。すでにある情報や知識の範囲で仮説を立てることも可能ですが、顧客の声を参考にすることで、予想もしていない仮説が導き出せることがあります。
また、人は誰でも思い込みがあります。「我が社の問題は他人に言われなくても分かっている。理由はこれしかない。解決策はこれしかない。」など「これしかない」と言われる人がいます。しかし、仕事の失敗の多くは、この「思い込み」があるからだと筆者は考えます。
だから、仮説を抽出するためには、生産者や販売者、コンサルタントの先入観にとらわれない顧客の自由な発言が役に立ちます。つまり、対面で顧客に聞くインタビューが有効です。
このように、仮説思考を使えば、手元にある少ない情報だけで、最初にストーリーの全体構成をつくることができます。事実が不十分でも、「真の問題はここにあり、その答えはこういうことだ」と全体的なストーリーを考えることができます。自分が作った仮説ストーリーを検証するために必要な事実だけ集めればいいので、無駄な分析や情報収集の必要がなくなり、非常に効率が良くなります。
素直に顧客の声を聞く大切さ
原です。
顧客の声は、企業の問題解決やマーケティング活動が顧客重視の傾向になればなるほど、貴重な情報源ととらえられるようになってきました。
筆者の最近の経営相談でも、「顧客の声をもっと自社のビジネスに活用したいのですが、具体的にどのようにしたら良いでしょうか」という相談を受けることが増えてきました。
筆者は、これまでに多数の「顧客の声」を活用したマーケティング調査に取り組みました。そして、企業の製品開発や商品改良、問題解決の解決策提案に役立てています。
調査結果から明らかに見えてきたことは、企業側が提供している商品やメッセージに対して、消費者が誤解しているケースがとても多いのです。
企業側が「知っていて当たり前」、「伝わって当然」と思っていることも、顧客は意外と分かっていないものです。
つまり、企業側と顧客側にギャップ(誤解という問題)があるのです。
ギャップが生じているなら、それを解決しなくてはいけません。そのためにはどうすれば良いでしょうか。
問題点は、「あるべき姿」と「現状」のギャップを分析することで発見できます。まずは、「現状を知る」ことから始めます。つまり、「顧客の現状を知ること」なのです。顧客は、何を意識しているのか、何に価値を感じているのか、企業側が商品や広告を通じて伝えたメッセージをどのように感じるのか。そのように意識し感じる理由はなぜなのか。これらの顧客の現状を知ることが、ビジネスの問題を解決するための第一歩となります。
顧客の現状を知るには、グループインタビューなどの顧客の声を聞くことが「素直な」方法です。
松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)創業者の松下幸之助氏は、次のように述べています。
「世間、大衆の声に、また部下の言葉に謙虚に耳を傾ける。それができるのが素直な心である。それを自分が正しいのだ、自分のほうが偉いのだということにとらわれると、人の言葉が耳に入らない。周知が集まらない。いきおい自分一人の小さな知恵だけで経営を行うようになってしまう。これまた失敗に結びつきやすい。素直な心になれば、物事の実相が見える。それにもとづいて、何をなすべきか、何をなさざるべきかということも分かってくる。なすべきを行い、なすべからざるを行わない真実の勇気もそこから湧いてくる。」(引用:「実践経営哲学」著者 松下幸之助)
筆者は、大学生の頃から松下幸之助氏の著書を何度も読み返しています。
インタビューで顧客の現状や実態を把握することは、問題を発見し、それを効果的に解決していくための土台となります。インタビューの重要性、有効性を認識し、机上で悩む前に「素直に顧客の声を聞く」姿勢がとても大切です。
タピオカブームの終焉
早嶋です。
タピオカの行列とタピオカ片手に歩き回る若者を再び見るようになりました。一体何が起こっているのでしょうか。福岡市に大名という街があります。その一角にあるレストランにもタピオカを求めて平日でも行列が出来る光景がここ最近当たり前になっています。都内のブームが地方に渡り、その後はやはり。。
日本におけるタピオカブームは台湾のタピオカ専門店が2013年頃に進出したのがきっかけだと思います。その前にも90年台にもブームは来ています。近年のタピオカを爆速でブームにしたのはジアレイのメディア・プロモーションが若者に刺さったのが火付けでしょうか。
そもそもスタバが流行り始めてしばらくしたあと、日本ではカフェブームが到来します。各地に専門カフェが出来て、皆がプチ贅沢を楽しむためにこぞって押しかけます。しかし、そのブームも足早に去ってしまった頃、スタバのフラペチーノが登場します。
初めはコーヒーフレーバーでしたが、2007年に抹茶味のフラペチーノが出て依頼、常にシーズンを象徴する新しい見た目にも可愛らしいフラペチーノが発売されます。そして結構な期間は盛り上がっていました。しかし、ブームは常に急にさります。コーヒー屋さんがミルクやコーヒー以外を売っていることに冷静に気がついたのか、バリューがなくなったフラペチーノに500円以上を払うことに虚しさを抱いたのか。
ブームがさる理由もよくわかりませんが、そんなタイミングにタピオカがハマったのでしょう。しかもタピオカは近年の健康ブームに乗っかりやすい原料です。台湾のお茶とタピオカです。タピオカの甘さも黒糖がベースですので、なんとなく健康にも良いという妄想をマックス駆り立てる要素も揃っていたのでしょうね。
しかし、タピオカは地方都市の繁華街にも溢れています。そして、タピオカは徐々にコモディティと化し、店舗ごとに差別化をしようとコレまで乾燥したタピオカ粉を使っていたレシピに、わざわざ生のタピオカをねって自家製と強調するお店も出てきているのです。
ブランドを持たない店舗や価格で勝負出来ない店舗は差別化をするのでしょうが、そもそも地方の店舗が頑張って差別化をしても、実際に粗利が取れにくくなります。そうなると店舗の利益は薄利になります。
そして、最も恐れていることが、タピオカのぶっといストローを20代の天敵である『おじさん』がちゅっちゅと音を立てて吸い始めているのです。いやー、これは聖域を侵されたとイケてるつもりの女子は思い始めたと思います。
間もなくブームが猿でしょうね。
解決の前に真の問題を考える
原です。
成果を出すコンサルタントとは問題解決が上手なコンサルタントではなく、顧客が何に悩んでいるかが分かるコンサルタントです。
ビジネスにおいて本当に大事なことは、やることとやらないことを決めることです。企業は多くの問題を抱えていて、その全ての問題を解決しようと思っても、時間や人が足りません。そのような中で解決すべき問題を設定し、それに取り組み、成果をあげなければならないのです。
成果をあげるには、真の問題を選びとることが必要です。真の問題を設定することにより、考えるべきことが絞られ、問題解決のスピードは上がり、解決策を実行したときの効果も高くなります。
ビジネス・コンサルタントの創始者ピーター・ドラッカーは、次のように述べています。「経営における最も重大なあやまちは、間違った答えを出すことでなく、間違った問いに答えることだ」。
問題解決の大きな流れは、「問題設定→解決策の立案・意思決定→実行・検証→問題解決」となります。もしも、最初の問題設定段階で間違えたら、間違った問題に取り組むことになるので、その後の問題解決の作業を正しくやったところで意味のある結果は出ません。時間と労力だけを大きく消費することになります。
したがって、短期間で答えを出すためには最初の問題設定がとても重要になります。
例えば、既存商品の販売不振を理由に、新製品開発に取り組むことが解決につながるでしょうか。もちろん、解決につながることもあるでしょう。
しかし、既存商品が売れていない真の問題を考えれば、商品以外に販売不振の理由があるのかもしれません。「商品は良いのに接客態度が悪い。商品も接客も良いのに、広告宣伝の仕方が悪く顧客に正しく伝わっていない。」などの多様な理由が考えられます。
調味料販売店の改善事例です。
販売者は、既存調味料の販売不振を理由に新製品(調味料)の開発を考えていました。そして、筆者に新製品開発の相談依頼がありました。
筆者は、新製品開発に取り組む前に、既存商品の何が問題なのかを調査しました。調味料の原材料、味、多様な料理に活用できる用途は顧客から好評でした。一方、顧客の悩みは、多忙な中での料理時間であり、料理時間の短縮が期待されていました。つまり、商品の中身には問題はなく、この調味料を使用すれば料理時間が短縮できる言語がパッケージで明確に伝わっていなかったのです。
販売者は、商品に問題があると思い込んでいたのです。売れるはずの商品が売れていない。もったいないですよね。
筆者は、販売者の思い込みを取り除き、販売不振は商品の中身が問題ではなく、商品の伝え方(商品の外側部分:パッケージ)に問題があることを設定しました。
後の解決策は簡単です。顧客が期待している「料理時間の短縮」を明確に伝えるパッケージ内容に言語を少しだけ改良しました。パッケージ改良後の直近販売数は、対前年比399%の成果が出たのです。今でも販売好調です。
販売者と筆者は、「当たり前のこと」を問題解決に取り入れただけです。
商品が売れないのは問題です。しかし、「顧客が悩んでいることは何なのか。お客の期待をどのように考えるか」により「真の問題」を設定することが必要です。
企業が目指すべき商品の姿は、いかに顧客と問題設定を共有できるかが企業発展の鍵となります。
若者の合理性
早嶋です。
最近の若い世代は、お金の使い方を知らない。すべてシェアで、借金覚悟でモノを所有する喜びを知らない。私も、どちらかと言えば、『おっちゃん世代』なので、同じようなことを思うことが多々あります。
一方で、当たり前ですが、今の時代に適応しているのは、『おっちゃん世代』ではなく、若者です。若者は、スマフォ片手に情報を手に入れることができます。一方で、生まれてからずっと、せっせと働いている両親を見ています。その一方で一向に生活が改善されたり、成長する経験をつくこともありません。
一生懸命頑張っていくよりは、適当にゆるく、適応したほうが良い。と考えるのも自然だと思います。従って、バブル世代の名残で欲丸出しの人は特にカッコいいと捉えることもなく、それでいて欲がなく若者の考えの中での合理性がカッコいいのだあと思います。
しかし、生き物ですので年齢や時代に関係なく自己顕示欲はあります。昔の『おっちゃん世代』はモノを所有すること、しかも本物とか高いものを持つことで自分をマウントすることがカッコいいと思っていました。しかし、今はファストファッションで良く、行けている自分もスマフォに映る半径30cm程度のエリアで充足されます。一方で、自分のその限られた世界を世の中にアピールする欲は昔の『おっちゃん世代』よりも高く発信することで自分を示す傾向が強くなっています。
スマフォやSNSなどの近年のテックがその要因でしょう。彼らの合理性は、スマフォの契約を見ていてもわかります。少ない可処分所得であってもスマフォは50G程度の容量を契約しています。生活の中で1秒でもネットと遮断されるのが恐怖で4Gになったことで、優先の通信安定よりもスマフォの契約のほうがスピードが早いし安定しています。従って家庭でネットを引くことをせずに、毎月50Gをきっちり使い切る生活にシフトしているのです。
これを考えると、若者がテレビを見なくなることも納得です。ちなみに500Pの中画質程度の動画品質で1Gで2時間程度です。従ってYoutubeだと50Gあれば100時間は有に見れる換算になります。そりゃテレビを見ている暇など無いですよね。
小規模事業の考察
早嶋です。
日本は成長期から成熟期、衰退期もしくは超低迷期に入ろうとしています。従い過去の常識が当てはまらず、ある意味、今を新しい時代への過渡期として位置づけることができます。
生物の深化と歴史を見ると、大型恐竜が安定していた時代から急激な気候変動が起こると小さな生物が生き残り、大型動物は駆逐されていきました。大型生物は変化に対応する力が弱く、一方で小さな生物は生死のサイクルが短いことを糧に、急激な変化に対しても柔軟に適応していきます。結果、生き残り新たなマジョリティとなりました。その最たる例が人間です。
世の中の経済を見ると、過去の事業モデルで収益を上げていた企業は急激に体力を弱めています。すべての事業モデルが比較的長期を前提として規模が大きな仕組みの中で経済活動を繰り返しているため、混沌とした、そして変化の早い時代背景には、そもそも不適合です。一方、小さな組織や個々人は、変化に柔軟に対応して生死を彷徨いつつも、新たな事業モデルを開発しています。自分たちが小さいがゆえに小さな取り組みを繰り返すことしか出来ず、でもその結果、柔軟に対応できるようになるのです。そして一定数の企業は、次の時代を牽引する新たなリーダーとなるのです。
今、新たな取組をする場合の一つの仮説は、短期間の事業サイクルで、小型の事業を行うことです。短期的な時間軸で投資を回収しながら、矢継ぎ早に次の事業モデルを繰り返す。そして、当たると思った時点で大資本に売却するか、資本を入れて一気に拡大するかを決めるのです。時間軸としては3年程度が妥当なのではないでしょうか。
既存事業を行ってきた大きな組織の人間からすると、3年程度の期間で出口戦略を準備していくこと自体、理解されないと思いますが、そのくらいで事業のリターンを回収することを前提に回す規模の事業ではないと、マクロの変化についていきにくいのです。
当然、上記のような取り組みを行う場合は、事業開発を行え、0⇒1の仕組みを創ることができる人材が必要です。もし、そのような人材がいないのであれば、エリアを絞って、ドミナントで他の成功事例を模倣して行うことも良いと思います。
もし、そのような事業がFCであればエリアを絞って10店舗程度をマックスとして展開するのです。エリアを絞る理由は人手不足を前提とすることです。トレンドはほとんどが短命な今、もしFCのブームが去ってしまっても10店舗程度の事業を3ヶ月ごとに見直して、1店舗づつ別のFC業態に変えることもできます。
3ヶ月に1店舗の見直しで、10店舗あれば30ヶ月程度で約3年です。FCがヒットしたら一気に収益を伸ばす。微妙であれば複数のFCを展開しながらマルチフランチャイザーとして動く。その際、エリアを絞って入れば、人材の活用やプロモーションが効率的に行なえます。
FC事業の多くは立地に左右されるので、上記の仮説は立地を抑えていることがKSFにつながります。
顧客価値
原です。
顧客中心に考える上で、人間が本来どのような欲求をもっているのかを理解することは重要です。
「人間は何を求めているのか」についてエイブラハム・マズローは人間の欲求を5段階に分けました。マズローの理論は、経営学にも応用されており、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」という仮説をもとに作られた理論です。一般には、欲求は下層から順を追って満たされると考えられてきました。
しかし、マズロー自身は、欲求の充足にはさまざまな形態があることも説いています。
マズローの欲求5段階を製品やサービス向けに拡大・発展したのが、ハーバード・ビジネスレビュー(2017年3月号)に記載の「顧客がほしいと思う30の価値要素(価値要素ピラミッド図)」です。
製品やサービスは本源的な価値要素を備えています。それらの価値要素は、「①機能、②感情、③人生の変化、④社会への影響」に関係する4種類の顧客ニーズに対応しています。そして、最も影響力のある価値要素が最上層を占めます。但し、重要度の高い価値要素を提供するには、製品カテゴリーに求められる機能面の要素を少なくともいくつかは揃える必要があります。
例えば、入院患者用の「おしゃれな入院衣」の製品開発事例です。
生産者は、ご家族の介護経験から、できるなら入院している患者さんにも「おしゃれな入院衣を着せたい。おしゃれにより元気になってもらいたい」という想いがありました。地味な入院衣から明るいカラー、花柄のデザインなど「②感情」や「③人生の変化」を重視して入院衣を試作していました。しかし、顧客からは、おしゃな入院衣は着せたいけれど、「①機能」について不満の声が多かったです。おしゃれ以前に、入院患者が着やすく、肌にやさしく、動きやすく。介護者が着せやすく、洗濯しやすい入院衣である「①の機能性」を少なくともいくつかは揃えることが期待されていました。
また、最近の人気商品は、複数の価値要素がさまざまな形で組み合わさっている傾向があります。
例えば、シェアリングエコノミー分野の空き家活用ビジネスは、人気が出てきています。
筆者は、数年前に古民家(空き家)の遺贈を受けたことで、「③人生の変化」が起こりはじめました。
最初は、床下改修、電気・水道の設置、部屋の整理整頓により、複数の「①機能」を満たしました。続いて、平日は都会でビジネス、休日は田舎の古民家の2地域で暮らすライフスタイルにより、自然の癒しや家族と過ごす時間も増え「③感情」を満たしています。更に2地域で暮らすライフスタイルが地域創生などの成功モデルとなることで「④社会への影響」につながるのではないかと思っています。
このように、下層から上位の順番でもなく、上位の価値要素が満たされれば良いというわけではないのです。複数の価値要素の組み合わせが必要なのです。
売れている商品とは
原です。
前回の「製品が良いだけでは売れない」に続いてです。
それでは、売れている商品とは、どんな商品でしょうか。
それは、モノづくり中心ではなく、顧客中心に視点があります。
例えば、筆者が住んでいる近くの商店街には、行列が並ぶ人気の饅頭店があります。餡が黒と白の2種類だけの普通の回転饅頭店です。
饅頭店や類似店は他にもありますが、筆者も「このお店で買いたい」という大ファンです。自分でも食べますが家族や知人にも食べてほしいという感情からお土産としても買います。お土産を相手に渡す時には、手づくり感や安心感を伝えます。相手は、とても喜びます。
行列が並ぶ人気店の理由としては、以下の要素があるからではないかと思っています。
店舗はガラス張りで饅頭を作っている様子が外から見えて「生産者の想いと手作り感」が伝わってきます。
原材料は○○産と大きく表示されていて「商品の安全感」が伝わってきます。
行列ができることで、あの饅頭店は人気店なのだという「お店の安心感」が伝わってきます。
行列に加わると、饅頭の美味しそうな香りが伝わってきて並んででも「買いたくなる感」が伝わってきます。
商品は、餡が黒と白の2種類だけ。箱入りも6個、8個、12個入りと購入時に迷わなくて済む「購入時の安心感」が伝わってきます。
つまり、売れている商品とは、「とても良さそうというイメージを持ってもらえる商品」のことです。顧客に良さそうと思ってもらうための努力をしています。
顧客に商品の良さそうなイメージが伝わり、購入によりイメージから本当の良さを確信されれば、お互いがハッピーな関係を築けます。
生産者や販売者が商品の良さを理解し、顧客に分かりやすく伝えることが必要です。
「売れない時代になった、努力しても無駄だ、価格を下げないと売れない」などと勘違いするのではなく、「当たり前のことを当たり前にする」に時間と努力を使ってほしいです。
そうすると、「良い製品だけど売れない商品」から「良い製品が当たり前に売れる商品」に育っていくのです。
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