早嶋です。
歯科医院の院長と話をしていて、スタート地点とゴール地点の逆転が起きているとよく思うことがある。多くは、歯科医院の院長になることを前提に一生懸命に努力されてきた。が、開業後どのような歯科医院を作りたいかについて考えている方は少ないという仮説だ。余計な話ではあるが開業をゴールに捉えているのだ。本当はスタート地点に過ぎないのに。
1995年頃までは基本、日本は絶好調だったが、その年をピークに成長が鈍化し、むしろ低迷に向かう。人口の伸びも徐々に鈍化し高齢化がすすむターニングポイントだ。結果、医療費が膨れあがるが、国の方針や仕組みが変わらないので、常に医科の中で歯科医院の保険制度がやり玉にあがる。結果、昔のように稼ぎを沢山出せなくなっている。これは歯科医院の経営セミナーが多いのに対して他の医科、クリニックでは圧倒的に少ないことに関係あるかもしれない。苦しんでいる業界だからこそ、私も含め、コンサル業からすると市場ということになるからだ。
基本、戦略は何をするかを決めること。しかし、開業することをゴールにしていれば、その後は常に全力で走るしかない。引退のイメージなども無ければ企業で言う出口戦略の準備もない。院長は個人事業主と同じなので定年を自分の意思で決めない限りやってこない。それなのに平気で7,000万円程度の借金をして未だにどんどん開業する。
一方で、年齢が50とか60になっても、未だに全力で現場バリバリのプレーヤーとして治療に専念しているドクターも多い。中には次の世代に引き継いだ方もいるかもしれないが、多くは事業承継に対しての計画は偶然に任せている。
例えば、50代のドクターであれば、自分の引退の時期を考え、その後の老後の生活を考える。今の蓄えをベースに、どのくらいの生活をするかを決めれば金額の過不足が明確になる。その金額を作るために歯科医院のキャッシュフローの中から行うか、投資を行うか、その他の手法を考えてお金を蓄える。もし、歯科医院のキャッシュ・フローを見出すことができれば治療のやり方として毎日何人くらいの患者さんを診て、どの程度の医療点数を上げれば良いのか容易に計算できる。それを行うための市場規模が現在の立地条件で可能なのか否かも推定はできる。
マクロで見れば人口は減少する。が歯科医院も比例して減少するので一医院あたりで見ると影響は少ない。高齢者の増加も問題ない。むしろ、年齢があがるにつれて歯科医院の需要が増えるので逆にプラスになる。準備しているところでは将来的に高齢者は通院が困難になるために訪問歯科の概念が重要となる。となると今準備を進めているところは難なく乗り切れるはずだ。国の試算は現在の医療費が40兆円程度から今後60兆円程度にまで膨れあがることを考えると医科のビジネスはそれだけでチャンスがくる。
ただ、問題とされるのは労働力の確保だ。ちなみにこれは医科に限った話ではないが、近年の歯科医院の傾向で労働力確保に対しての話題は賑やかだ。大手のプロパガンダはこうだ。今の世の中、大手企業は当たり前のように採用活動に力を入れている。Webのランディングページを作り、少ない労働力を確保するために早い時期から新卒にアピールをしないといけない。と。
が、そのような取り組みは確かに必要だが、同時に採用して定着する仕組みについては歯科医院の院長さん、あなたの取り組みですよね。と冷たい。が、考えて見れば、歯科医院での定着率がそもそも悪い理由にも同時にメスを入れていかなければ採用を増やしたところで焼き畑農業的に繰り返すが成果がない不毛な状態が続くことになるだろう。
そう考えると、何故、辞めて行くのかを考えると、院長がスタッフに対しての考えをチームと捉えていないことなどが考えられる。未だに、院長先生は技術が全てで非技術的な取り組みはあまり優先されていないところが多い。たまに食事会をしてたまに旅行に行くことをするが、スタッフひとりひとりがどのような歯科医院を作りたいか、そのためにどのような成長を成し遂げたいかなど、企業活動で行われるような人材のトレーニングには疎い。
なので開業して数年位すると多くの若い先生や経験の浅い先生は組織の話で壁にぶち当たる。が、意外とその分野に明るい歯科のコンサルは少なく、表面的なことを定期等にアドバイスして自分の得意分野に話をすり替えて根本的な問題解決を図っていない。
当たり前だが、何を成し遂げたいかを言語化して、院長がチームを巻き込みながら、そのチーム全体で達成する仕組みを作らないと上手く機能しない。そのためには院長は偉いというポジションを捨て、スタッフが仕事をし易いように院長がスタッフに歩み寄る思考に変更しないといけない。そのソフトである組織の改革を行わない限り、表面的な投資をし続けても結果は出ないと考える。
あるドクターは、院長1人、スタッフ2人の体制を維持するために1日1万点、つまり10万円の売上を確保しなければならないと考える。そうれでもヒーヒー言っている。そんな中でも1日3万点をあげるドクターもいる。要は生産性の問題で、一人あたりの最大の成果が決まっているのであれば、スタッフの数を増やして成果を増やす。ただ、歯科医院は提供できる治療の制約はユニットの数で決まる。が、もしそれ以上の稼ぎを出したいのであれば、代診の先生と矯正をはじめる、訪問歯科の仕組みを作るなど選択肢は他にもいくつもある。
が、結局この仕組を作るかいなかは本人がどうしたいのか?に決まる。結果、その意思がないドクターは常にふわふわしてなんとなくの不安を感じ、明確な着地点を持つドクターは、それに向けて常にギャップを埋める取り組みをしているので心が穏やかなのだ。
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スタート地点とゴール地点
2017年1月24日 火曜日
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