早嶋です。
今朝の日経で「複雑で分かりにくい防災気象情報を整理するため、気象庁が情報の名称や分類を見直す」なる趣旨の記事があった。
気象庁等、国が国民に情報提供する際に、様々な警報レベル、名称呼称があり、複雑でわかりにくいという親切心からだ。災害が増加し、被害が拡大する中(※1)、5段階に警戒レベルを分けて再編するという趣旨だ。
疑問だ。
国民の言い分としては、「毎回、災害が派生し、50年に一度とか、10年に一度とか言うけど、また?」と思っているのだろう。
国の言い分としては、「情報発信もしているし、適切に行動してね!」と言って、言い訳をしたい気持ちもわかる。
が、結局は自分の命は自分で守る。家族の命は家主が守る。など、自己責任で自己判断で動けない国民が増産していること事態に疑問を持つべきだ。誰かが言ったから行動するという無責任な状態は異常だ。災害レベルを見て、これはヤバいと思ったら、他人様に迷惑をかけずに自分の身を守るのが基本だと思うのだ。
今回のように、複雑な情報を集約して単純化すると、「単純すぎて分からない」となり、数年後に再び細分化される行動をとることが予測できる。自治体や政府もいい加減、自分で考える取り組みを示すべきだ。
と主張しても、大多数は疑問をもたない状態が常態化しているのだから、根本的な解決は非常に難しいのだ。
※1:我が国おける自然災害の状況 政府
‘時事情報’ カテゴリーのアーカイブ
自分ごととして受け止めて行動する
衝動買い合戦
早嶋です。
本の検索をWeb上で行い、購入。購入者は自分の購入履歴や他の読者の書評(口コミ)を判断し、次の購買の検索やセレンディピティ的な購入を楽しむ。やがて商品は本から一般的な商品に広がり、ワンクリックで購買できる手軽さから物品購入のゲートウェイとして認知確立された。2024年二にアマゾンは創業30年を迎える。
Youtubeが世の中に出始め、若者含む人口の多くがスマフォにアクセスできるようになり、媒体にも変化がでる。インフルエンサーの動画で商品の認知を得てセレンディピティ的な購入を楽しみ、商品の検索や評価そのものも文章ではなく動画で情報を得る購買行動が定着する。
TikTokに代表されるアプリは、アマゾンの疑わしい口コミや商品のラインナップをよそに、実際のインフルエンサーが直接説明をしていることから購買者はより信頼を持ちヒットしている。そして徐々にインフルエンサーそのものを推し活するなどの行動も現れ、セレンディピティ的な購買も随分と多様化した。
ユーザーの動画視聴履歴から興味がありそうな商品を推薦してライブ配信を行う手法はインタレストコマースなる呼び方が出てくるくらいECサイトでも定着している。しかし商品の充実度や品揃えにはアマゾンになかなか勝てず、年末商戦のブラックフライデーや独身の日では、価格の安さを全面に出し、他社のECサイトの顧客の乗り換え合戦を繰り返す。その手法はクーポン提示だ。最大8割引などを提示し、出品者に対しての送料や値引き原資をECサイト側が負担するという理屈なので、体力勝負の戦いだ。
そんなアマゾンが黙認するはずはなく。23年には米国で1分前後の縦長動画で商品を紹介するインスパイアという機能を追加した。インフルエンサーが投稿でき、一部アマゾンからの報酬も頂ける。思えば、アマゾンのアフェリエイトで稼ぎまくった20年前の若者も今やおじさんおばさん。その方々や今のインフルエンサーが複数の媒体を使って動画によるセレンディピティ的な購買を誘う戦いが始まっている。
ローマは一日にして成らず。アマゾンは顧客網を構築し、更に物流網を構築している。越境ECが安さで売りにしても、ラストイチマイルや国内での物流網の整備はサードパーティに任せることになる。グローバルにECでアプローチ出来ても、最後の物理的なモノのやり取りは拠点での投資が事業の肝になる。アマゾンは中国に2004年頃に進出して自社で物流を組む試みも行ったがアリババ集団などの現地大手に刃が立たず2019年に撤退している。同様に韓国やタイヤでもプライム会員を未だに提供できていない。
ネットワークでつながってもビットは瞬時に運べ分析してコピペでいるが、アトムの世界は思うようにいかないのだ。
歴史は繰り返す
早嶋です。
2016年10月。日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社が定期コンテナ船事業を統合した。船隊の規模は業界で6位、世界のシャアは7%を占める。年間1100億円の統合効果を見込んだ。当時の背景は、コンテナ船の長期的な市況低迷だ。同年8月末には韓国コンテナ海運最大手の韓進海運が経営破綻している。穀物や鉄鋼石、石炭、木材チップや塩などの個体や粉体をのばら積み乾貨物であるドライバルク船の需要も当時の中国経済の原則が響き、経営状況は歴史的な低水準が続いた。
現在、再び海運業界が厳しい。各社報道を見ると運賃レベルはその2016年水準に近づいているのだ。当時と同様にコンテナ船の供給過剰が運賃低迷の理由だ。燃料費や人件費などの運航費用は大幅に上昇している中で、運賃が下がることは、損益分岐が怪しいという見立てもできる。コンテナ船会社は、運賃を上げ、大幅な減便をして供給を絞らなければ対応は難しいだろう。
ファクトを整理(上海航運交易所)する。
– 上海⇔欧州の運賃は4割下落
– 上海⇔米国西海岸は1割下落
– 上海⇔米国東海岸は2割下落
今回の理由もコンテナ船の供給過剰だ。2019年12月、武漢から広まったコロナにより家具、IT関連、白物家電などの巣ごもり特需が発生し受給バランスが崩れた。コンテナ船各社はこれに合わせて新造船の発注を増やす。数年経過した今年に入って、当時発注分の船の竣工が相次ぎ、輸送能力が急増したのが背景だ。
過去にも供給が多かった年があり、2006年から08年、2014年から15年の水準よりも6割程度多い水準で過去最速のペースト言う(調査会社ライナーリティカ)。更に、最近の新造船は積載能力が大きく、更に供給過多に勢いを付けている。海運事業の特徴からアジア欧州間が距離や港湾の整備具合が整っており供給が集中することもあり4割の運賃下落になっているのだ。
本来、新しい船が到着すると、古い船はスクラップに出されるが。現在、鉄鋼需要が高まっており、船オーナーはスクラップ価格の上昇を更に待っている動きがあり、結果、コンテナ船の供給過剰を更に助長しているのだ。
コンテナ船の動きや需要は、世界経済を見通す指標の一つとして見ているが、コンテナ船会社は、自分たちの需要バランスを調整するのは至難の技と言ったところか。歴史的に同じことを繰り返しているが、世界経済を読むというのは実に難しいことだと知らしめる内容のニュースだと思う。
電力が「や・ば・い」
◇DXへ3つの不足
原田です。
DXにWEB3、ますます高度な情報化社会へ拍車がかかっています。こうしたなか、その実現を妨げる3つの不足があります。それは「人材」、「半導体」、そして「電力」です。これからどうも「電力」がやばそうです。
人材に関しては特にAI関連の人材が不足しています。大手企業はリスキリングに力を入れています。新聞やビジネス誌の記事を読むと、かなり手厚い待遇です。給料をもらいながら、最新の知識を存分に勉強できるなんて、しかもその知識を使える場所があるなんてうらやましい限りです。AI人材は世界で引っ張りだこで、多く若い人たちがこの分野へ進んでいます。さらに中高年への教育体制も整備されています。ある程度、不足感は減っていくかなと思います。
半導体は現在あらゆる機器に組み込まれています。それもプログラムを実行するだけの単純なものでなく、高性能、小型化、低電力消費、高耐久性が求められます。半導体不足の原因は実に様々要因が複合的にからみあっています。コロナ禍によるリモートワークの進展も大きな一つの要因だっと思います。それでも半導体は需要があれば、供給が増えるので、いずれは解消されると思います。
そしてこれから本格化するのが電力の不足です。日経ビジネスの記事で、国立情報科学研究所の教授が「5年ほどしたら、動画配信やメタバースに制限がかかる可能性がある」と警報を鳴らしていました。これまでのように、思う存分に動画を観たり、ゲームで遊んだりできなくなるかもしれません。当然、仕事にも影響はあるでしょう。
◇増加する電力消費
現在、ウクライナ情勢の影響もあり世界的にエネルギー価格が高騰しています。日本でも冬にはかなりの電力不足になりそうです。世界的にカーボンニュートラルへの取り組みが進むなかで、昔のように化石燃料には頼れません。だからといって日本の場合、原子力発電の割合を高めるのも、議論がまとまらないような気がします。
このような背景のなかで、我々が使う一人当たりの電力は年々急激に上昇していると思います。思いますというのは正確なデータを測ることができないからです。
スマホで映画を観るとき、消費する電力はスマホのバッテリーだけではありません。大量のデータを処理するために、ネットワークの向こうでは、様々な通信機器、そして巨大なデータセンターにある高性能のコンピューターが稼働しています。こうして考えると我々が実際に必要とする電力はかなりのものになると思います。
科学技術振興機構は、2021年の発表で、ICT関連の消費電力の著しい増加を予測しています。30年までに、データセンターで6.4倍、ネットワークで4倍に増加するそうです(18年と比較)。インターネットのトラフィックも年率20%を超えて増加しています。その半分は動画配信です。当然、その割合が高いのは、みんなが大好きな「YouTube」と「ネットフィリックス」です。
◇スケールが違うビットコインの電力消費
さらに、すごいのが、ビットコインのマイニングの消費電力です。ビットコインの仕組みがわからないとピントこないかもしれません。ビットコインでは、複数の民間の事業者がマイニングという作業を行います。このマイニングを行う事業者は営利を目的とし、高性能をコンピューターを所有しています。このコンピューターの電力消費も半端ないのです。
ここで突然、中央アジアのカザフスタン共和国が出てきます。カザフスタンは、ビットコインのマイニングに国家として協力的で、電力も安いため、マイニングを行う会社が集まっています。中国でマイニングを禁止された会社も相次ぎ流入しています。結果として世界第2位のマイニング電力消費国家となりました。電力消費の増加率が21年は8%という以上な伸びでした。カザフスタンでは原子力発電の新設を検討し始めているということです。
仮想通貨はビットコイン意外にも、様々な種類のものが出てきています。その基盤となるブロックチェーン技術は、これからのWEB3の時代へ向けてより多くの分野、用途で使われることが想定されます。
ますます使われる電子機器が高性能になり、使われるデータが増加し、消費する電力も増加していきます。こうした背景の中で、化石燃料には頼れず、簡単に原子力も使えないのです。カーボンニュートラルへの取り組みもまったなしです。本当にいったいどうするのか、だれか真剣に考えているのかなーと思います。
◇来たるべき電力不足に向けて
これまで多くの企業ではDX化に向けて、人材、半導体の不足に悩まされてきました。それが近い将来、慢性的な電力不足に悩まされることになりそうです。
ではどうすればいいのか?大企業であれば再生可能エネルギーを使った発電設備を建設すればいいかもしれません。でもそこまでの投資ができるのは、世界でもごくわずかの企業です。中小企業は手の内ようがないのでしょうか?
電力不足への対策は、時短とリモートです。短い勤務時間でも生産性が上がる仕組みを作ること、そしてリモートを進めることです。電力不足が深刻化すると、夜間の電力消費に制限がかかると思います。これまでのように夜遅くまでみんなで集まって働くことは難しくなると思います。コロナ禍の行動制限がなくなったあとには、電力不足による行動制限があるかもしれません。
時短とリモートは地味な取り組みですが、他に決定的な方法はありません。でもこの2つをうまく取り入れれば、企業の生産性は向上します。たとえ深刻な電力不足が起こらなくても、その取り組みは企業のメリットになります。電力不足が本格化する前に、本気で取り組む必要がありそうです。
イノベーションを起こさせないヘルスケア業界
早嶋です。
コロナによって企業のDX化は進んでいます。得に、会議や打ち合わせの類、セミナーや展示会はオンライン化が一気に加速しました。一方で、コロナで劇的に状況が変わっても、鋼のごとく曲がらない業界もたくさんあります。ヘルスケア分野です。
本来、少子高齢化、コロナ、医療費工場と経済低迷と絶対的な社会問題が明確に存在するので、ここにメスを入れてイノベーションを起こすのが筋です。その際の道具であるデジタル技術とそれらを実現するスタートアップ企業は十分揃っています。スマフォやクラウドの活用、そしてAI等と従来と異なる思考の枠組みで新たなアイデアを提供する企業群です。実際、それらのテストマーケティングや小さい規模での実験が進み、海外では劇的な変化を遂げている国が多数観察できます。医療アクセスが向上し、質が上がり、更に医療コストも抑制出来ている事例です。
そもそも日本は経済が低迷しているにもかからわず毎年の予算を膨大に計上しています。使い方が良ければ年々、世の中の変化を感じることができるでしょうが、実際は良くなるどころか悪くなっている気さえします。21年度の予算で106.6兆円でその34%が社会保障で35.8兆円です。更に社会保障給付費は年々増加しています。2020年の医療費は40兆円。2025年には医療費は50兆円まで膨れるよる予測で、就労人口が仮に5,000万人になっているとして、一人あたり年間に100万円の負担をしなければ医療が提供出来ない数字です。
この数字だけ見ても、普通の企業人だったら根本的に変えようと思うでしょうが、そうは問屋が卸さないのがヘルスケア業界なのです。そもそもコロナでオンラインで治療や診療を希望しても、オンラインに対応できる診療所は全体の15%程度です。薬もオンラインで処方して配送してもらうなど不可能です。
考えてみれば、毎回かかりつけ医にも関わらず、期間があいたら初診料を取られるのも意味不明です。一人ひとりの医療情報を国が管理するDBで一括管理して、各々の医療期間がそこに情報をアップデートしていけば、何度も異なる医院で同じ検査をする必要が一気に減り、これだけでも医療費を削減できるのです。電子カルテにしても私が社会に出た頃から議論されていますが、一向に進んでいません。あたかも誰かが阻止しているかのごとくです。
世界のヘルスケアの潮流は日本と雲泥の差で進んでいます。従来の公的保険中心の医療に加えて、その前後の状態にもデジタル技術を活用してイノベーションが起きています。具体的には、健康管理、診断、治療、予後の4つの流れが整理されています。從來は、発病してから診断と治療という流れでしたら、そもそも健康な状態からモニタリングして予防に予算をシフトしているのです。
健康管理のエリアでは健康診断、遺伝子検査、健康管理、フィットネス、医薬部外品の整備、サプリメントの開発等が互いに融合しつつあります。そして診断も、日常のバイタルデータと国民の医療データを駆使しながら診断します。加えてゲノム技術やAI画像処理などが絡み、人間の経験で見る診断よりも遥かに精度が高まっています。治療は、手術ロボや再生医療が進み、バイオ技術も加わっています。そしてジョブ理論で言うところのリトルハイアにもフォーカスがあたっています。予後のモニタリングや関連アプリが充実しているのです。
個人単位で毎回終了していた医療を国民単位で共有化して、常にライフデータを蓄積する中で、そもそも医療費がかからない仕組みを作り上げているのです。
時価総額が1,000億円を超えるスタートアップをユニコーンと言いますが、現時点で世界で1066社あるユニコーンの中でヘルスケア関連は73社あります。米国が50社で中国が12社。その他の中にも残念ながら日本企業は存在しません。コロナをチャンスに世界ではヘルスケア業界が非常に成長産業になっています。米国ではオンライン診療は6割普及、英国では7割、フランスは5割と日本の15%からするとどこの国も優等生なのです。
各国は、医療データを共有化してデータベースを整備しています。米国、英国、中国が先進で、日本のように電子カルテが未だにベンダーごとにバラバラの仕様を取る国は鼻で笑われる状況なのです。
なんで進まないのだろうか・・・。
実は明確にその理由はわかっています。国は医療費全体を抑えたいが、医療従事者は出来れば医療費が増えたほうが良い。と思っていることが背景にあると思います。実際、オンライン診療が進まない、15%から伸びない最大の理由は、診療報酬が下がることにあります。本来、国はオンライン化をすすめることで医療費を安くするので、診療報酬を下げる設計にしたことは理解できます。それだと、医療を提供する側としては、インフラ投資が必要な上、從來よりも診療項目によっては2,000円も下がる状況では、普通は導入を拒むでしょうね。
この場合、国が厳しく関与するのではなく、もう少し自由に競争をさせて、診療報酬自体を自由に設定できるようにするとか、今よりも柔軟にするなどができると良いですよね。また、医療期間が今の組織形態ではなく、ある意味民間企業のように営利を目的にした取り組みを行えるようにしても良いと思います。利益は患者ハッピーの総和ですので、イノベーションを起こさない医療機関は淘汰され、そこにいた優秀な人材は収益を上げる営利事業者に流れ結果的に良い医療をより安く提供いただけるようになると思うのです。
上記を拒む組織に医師会や薬剤師会があると思います。医師会は当然ながら医療機関の経営に不利な取り組みには反対します。医療費を下げるという取組は、医師会からするとやりたく無い取組なのです。薬剤師協会からするとオンライン診療、オンライン処方、オンライン配送と家にいながら薬を得られる環境が出来てしまえば、自分たちの存在意義を否定するようなものですから、やはり拒みたくなるのです。
お薬手帳もしかりです。店舗ごとに発行なんかせず、保険証かマイナンバーに紐づけてしまい、過去のDBを国が一元管理すればよい話なのです。なのに、個別にDBを構築して個別に利益を得ようとしています。デジタル化の真骨頂はコピペが出いて伝達コストが安いことです。最高の仕組みを1つ作れば地方自治体1700箇所皆コピペする。当然ですが、手入力、手計算などの不毛な処理がなくなり、膨大な事務処理も不要になります。だけどやはり自分たちの業界からすると今までの取り分が減ってしまう!と考えてしまうのでしょうね。
と考えてしまうと、米国から一方的に医療の規制を撤廃して、グーグルのDBやアマゾンでも薬を買えるようにしなさい!的な鶴の一声でも起きない限り日本は変わらないのだろうな。と改めて整理して痛感します。
参照:2022年4月福岡向研会「デジタルで変容するヘルスケアと日本の課題」
育児・介護休業法 改正ポイントについて
安藤です。
今回は、「育児・介護休業法 改正ポイントについて」です。
2022年施行予定の「育児・介護休業法改定」に伴い、企業に柔軟な育児休業取得のための整備が必要となってきます。男女とも仕事と育児を両立できるように、産後パパ育休制度の創設や雇用環境整備、個別周知・意向確認の措置の義務化などの改正がありました。
まず、関連して「職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」については、「職場」において行われる 上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・ 出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」の就業環境が害されることです。 妊娠の状態や育児休業制度等の利用等と嫌がらせとなる行為の間に因果関係があるものがハラスメントに該当します。 なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動による ものはハラスメントには該当しません。 ※「制度等」とは産前休業その他の妊娠又は出産に関「育児・介護休業法」改正案が2021年6月に成立・公布され、メディアでも「“男性版産休”新設」と話題になりました。この法改正には、男性の育児休業取得率を引き上げる狙いがあるだけでなく、様々な意識変革を企業に迫っています。
育児休業制度の歩みは、「育児休業法」が1991年に成立したことで、それまで産休明け後直ちに職場復帰しなければならなかった状況から、子供が1歳になるまで育児休業が可能になりました。その後、2005年の法改正により、保育所に入れない場合は1歳6か月までの育児休業延長ができるようになり、2010年の法改正では妻(夫)が専業主婦(夫)の場合は育児休業が取得できないことを労使協定で可能とするいわゆる「専業主婦(夫)条項」が撤廃され、「パパ休暇」「パパママ育休プラス制度」が導入されました。さらに2017年の法改正で、保育所に入れない場合は2歳まで育児休業を延長できることになりました。以上のように改善が進んだ半面、管理や事務手続きの複雑さが増していきました。そして、2022年度の改正でさらに複雑なものとなり、事務負担が増えることが見込まれています。
その理由として、2017年に政府が打ち出した「働き方改革実行計画」が影響しています。参照として、「長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因になっている。これに対し、長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく。」( 平成29年3月28日働き方改革実現会議決定 「働き方改革実行計画」より)。政府は新しい少子化対策の柱として働き方改革に関する法整備を行い、「働き方改革」との関係で、育児・介護休業法が改正されました。
男性の育休取得状況として、日本の出生率は2019年度が1.36、政府目標の1.8です。そこで、育児・介護休業法を改正し男性の育児参加を促すことで、出産しても女性が社会で活躍できる環境づくりを進め、その先にある出生率の向上を目指すことにしたのです。
そこで気になるのが男性の育休取得率です。2019年度は7.48%、2020年度は12.65%と伸びていますが、コロナ禍によるテレワークなど在宅時間の増加に伴い育休取得者が増えたという要因が考えられます。ちなみに、女性の育休取得率は2019年度で83%と大きく乖離しています。
男性の育休取得が低水準の理由は「仕事を休めない」「収入が減少する」「取得しにくい雰囲気がある」などが大半です。今回の法改正では、こうした事情を解決することを目的としています。
改正「育児・介護休業法」5つのポイントは、下記のとおりです。育児・介護休業法 改正については、令和4年4月1日から3段階で施行予定です。
(1)雇用環境整備、個別の周知・取得意向確認の義務化(2022年4月1日施行)
(2)有期雇用労働者の取得要件緩和(2022年4月1日施行)
(3)出生時育児休業制度(通称、産後パパ育休)の創設(2022年10月1日施行)
(4)育児休業の分割取得(2022年10月1日施行)
(5)育児休業取得状況の公表義務化(2023年4月1日施行)
詳しいことはこちらをご覧くださいませ。
厚生労働省サイト
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000789715.pdf
上記の(1)~(4)は、全企業が対象になりますので、ぜひ、一読されておくことをお奨めいたします。
何かお役にたてることがありましたら、気軽に弊社にご相談くださいませ。
中古車市場
早嶋です。
3月末に個人所有の車を売却、4月に法人所有で車を購入しました。買い替えは5年ぶりで、メーカーを変えたこともあり複数の中古車買い取り業者とやり取りをしました。4社に見積もりを取りましたが、毎回交渉するたびに値段が上がります。
個人での利用は殆ど、仕事の移動が主要とだったこともあり年間に8,000kmも乗らず、人気のSUVで5年未満で走行距離3万km台ということもあり、需要があるということでした。そのまま乗り続けても良かったのですが、次の車のタイミングが新車で注文しても1年以上待ちで、現時点で納入時期が未定。更に、新たに同メーカーから新型の車が出るという情報も昨年からありますが、一向に更新されません。発売は今年の秋頃のようですが予約から引き渡しまでは半年から1年という話を聞くと、ディーラーを変えようかなというのが背景です。
買取の結果、ディーラーが買い取ってくれました。中古車買い取り業者が示した最も高い金額でです。やはり、ディーラーも同様に新車を提供したくてもたまがなく、顧客に少しでも状態の良い中古車を提案したいというのが背景でした。同じブランドに乗り継いで頂くことで、ディーラーのサービスを提供でき、顧客の維持につながりますからね。
トランプ大統領から始まった世界の分断。それが2019年12月のcovit-19で一気に加速。グローバルサプライチェーンが機能しなくなり2万から3万点の部品の一つでも欠けると完成車が作れない自動車産業は大ピンチです。作りたくても作れない状況が続きます。得に半導体の品薄に加えて、国内の半導体メーカーの相次ぐ出火。負の連鎖が続きます。そしてロシアとウクライナ。ウクライナエリアは得にドイツ車を中心に自動車関連の部品を製造しているエリアもあるとのことで、メーカーや地域によっては更に生産の見通しがつかなくなっている現状です。
このような状況が続くと、新車を購入していた層が中古車に流れます。そのため程度の良い中古車の価格が跳ね上がります。需要と供給のバランスが逆転しているからです。今回は、その恩恵を受けたわけですが、中古車市場も売却する車がなく品薄状態が続きます。従来、中古車買い取り業者は買い取って、それらをオークションでリセールして短期的に利ざやを確保する事業モデルでしたが、店頭に並べる車が無く、買い取った車は自分たちの商品として商品化する業者も多いようです。
このような一連の動きから、中古車市場の平均販売価格が2022年2月に100万円を超える大台を記録しています。2019年4月時点で同金額は60万円だったことを鑑みるとこの価格の上昇は異常事態ですね。
covit-19、ロシア問題。どちらも一定期間継続するでしょう。更に、これらを期に西欧諸国、資本主義諸国と社会主義諸国などの分断が加速して、その国も自己を中心に考えますから状況はしばらく好転しないと思います。そう考えると、策としては早めに意思決定して判断することでしょうね。楽天的に考えずに、最悪のオプションをベースに、今の最善で判断したほうが、1年先は更に状況が悪くなっていることでしょう。
ゲームは最強のプラットフォームになるか
◇プラットフォームで最強のオンラインゲーム
原田です。
最近、メタバース(仮想空間)という言葉が、ビジネス誌などでよく目にするようになりました。昨年はDX(デジタルトランスフォーメーション)が流行りましたが、今年はメタバースが流行りそうですね。
さてこのメタバース関連で私がとても注目しているのが、オンラインゲームの世界です。これからのWEB上、あるいはメタバース上のプラットフォームを制するのは、ハードでも、OSでも、SNSでもなく、オンラインゲームなのではないかと思います。
ゲームの何が強いか?それは、中毒性です。それは、1ユーザーのエネルギー、つまりは時間と集中度です。ユーザーが1日ぶっ通しで8時間くらい時間を費やすのはゲームしかありません。
そしてこのゲームの中毒性は、NFT(非代替性トークン)による暗号資産ととても相乗効果が高いと思います。
◇ゲームはドーパミン回路を乗っ取る
改めていうことではなくゲームは中毒性が高いです。ゲームは短期的に達成すべき課題が出されます。そして達成するとその喜びに浸るまもなく、また次の課題が提示されます。そして人はまた次のステージへ期待を抱きます。こうした課題→期待→達成→報酬のサイクルは、ユーザーに対してランダムに、そして飽きさせないように設計されています。一見くだらないことのように思えても、人間の脳のドーパミン回路はこうした期待される報酬に対して強く反応します。
こうしたゲームの世界に、人は1日8時間くらいは平気で没頭します。これだけ人間にエネルギーを出力させるメディアは他にないと思います。SNSでは1日を通して、画面に向き合っている人はいないでしょう。多くは隙間時間で、片手間程度にやっていると思います。一方でオンラインゲームは「ネトゲ廃人」という言葉が生まれるほど、中毒性が高いです。
◇「フォートナイト」の衝撃
現在、とても人気のある「フォートナイト」は世界で3億人のユーザーがいるそうです。一方でFacebookは20億人近くいるようですが、その中身が全く違います。多くの人はFacebookのサービスは便利だから、あるいは皆が使っているから、利用するものであって、ロイヤリティはないと思います。Facebook、インスタ、ツイッターなどSNSは無料で利用するのが基本です。一方、フォートナイトのユーザーはこのゲームに結構な金額を課金します。この課金システムも巧妙にできていますが、ここでは割愛します。
フォートナイトはユーザーが架空のキャラクターになります。そして100人で生き残りをかけてバトルを繰り広げます。このゲームは、単にユーザー参加型のオンラインゲームというだけではありません。そのコミュニティはすでにメタバースで考えられることをほぼ全て実現しています。
世界的な人気歌手がフォートナイト上で、つまりはバーチャルな空間で、ライブイベントを開催しています。イベントの参加は無料ですが、限定アイテムなどの販売が可能で経済効果は大きいです。とある歌手はアイテムの売上が22億円!だそうです。1230万人が集まったとか!
また、自分だけの専用空間を作り、他のユーザーを招待することもできます。この専用空間をディスプレイするオリジナルアイテムも課金されます。こうしたアイテムが結構な金額で取引されています。
◇ゲームへのロイヤリティ(忠誠度)は高い
ゲームはユーザーがその世界観に浸りっきりになります。その世界観を共有する他のユーザーもいて、交流があります。ユーザーは、その世界の中で自分の家を持ち、自分のアイテムを持ち、自分の物語を持っています。ユーザーが、この世界に投資したエネルギーは膨大なものです。結果として強固なロイヤリティが作られます。上述したフォートナイトを運営する米エピックゲームズ社は、プラットフォームの覇者Appleと、裁判で争いながらも、そのユーザー数を伸ばしています。
オンラインゲームがプラットフォームのメインになると考えるのは、このロイヤリティに対して大きな特典を与えらることです。
例えば、オンラインゲームを通じてクレジットカードを使ってショッピングをするとします。その場合、カードのポイントに1%、ゲームのポイントに2%の特典がつけば、ユーザーにとっての見返り3%はかなり高いです。こうしたポイントを発行できるのはオンラインゲームのプラットフォーマーです。このゲームのポイントは、実質的に原価が「タダ」です。ポイントで購入してもらうのは実質原価が「タダ」のキャラクターやアイテムです。
◇ゲームが新たなクリエイティブ活動になる?
自分がゲーム上で時間をかけて育てたキャラクターやアイテムが、もっと高い値段で売れるとしたらどうでしょうか?趣味で何十時間もかけてゲームで遊び、さらにはその結果が報酬になる。そんな夢のような話は、すでにオンラインゲーム上のメタバースで実現されています。
この夢を実現するのが暗号資産です。オンラインゲームでは、ユーザーが購入したネットワーク上の資産(期間限定アイテムなど)を転売することもあります。また将来的に、ユーザーがデザインしたオリジナルキャラクターの販売も考えれます。あるいはユーザーが制作したゲームのオリジナルステージの販売も考えれます。こうしたユーザーが何かしたクリエイティブな行為を行い、その結果をオンライン上で取引するためにNFT(非代替性トークン)の技術はこれから急速に広がっていくと思われます。
「小学生がなりたい職業ランキング」にYouTuberが現れたとき、結構な話題になりました。近い将来、オンラインゲーマーが現れても不思議ではありません。ゲームには世界で30億人の市場があると言われています。この数字はこれから更に伸びそうです。しかも、このユーザーの多くは結構な金額を使います。いわゆる富裕層もいます。潜在的な購買力はかなり高いと思います。しかも日本語の壁がありません!
◇将来のことはわからない
以上、オンラインゲームについて、ファミコン世代のオールドゲーマーが勝手に将来を予測してみました。この記事を書くために、古いゲーム機を引っ張り出して、フォートナイトをやってみましたが、全然ついていけませんでした。再度、挑戦しようと思います。
世界の流れは、現時点で、Microsoft、SONYといったグローバル企業がオンラインゲームの会社を買収しています。オンラインゲームのユーザー数は、これからも増えていくと予測されています。そして、ユーザーは、結構な金額をこのプラットフォームに使います。更には、NFTによる暗号資産の取引も活発になるということです。ユーザーの中には、世界中の富裕層もいます。百万円くらい平気で使いそうです。しかも言語の壁がないのです。大企業だけでなく、参加する個人ユーザーにも大きな可能性が開けています。
暗号資産の取引は、企業からユーザーへのBtoCだけでなく、ユーザー間のCtoCの取引を劇的に増やしていくと思います。
これまで非生産的であったゲームに費やすエネルギーが、何らかの経済行為へ転換されたとき、どのような変革が生まれるのかはわかりません。ただ、これから2、3年で大きな認識の変換がゲームに対して生まれると思います。
将来のプラットフォームを制するのは、あるいはビジネスのフロンティア(最前線)は、アニメのキャラクター達が戦うオンラインゲームの世界かもしれません。
カーボンニュートラル 〜全体像をざっくりと説明〜
◇2021年度の良書
「グリーンジャイアント」 森川潤(著)
昨年読んだ本のなかでとても良書でした。カーボンニュートラルまでの流れと、これからの産業予測がとてもコンパクトにまとめられています。新聞記事などで部分を拾い読みするより、この本を精読することで全体像が理解できます。根本が理解できると、今世界で起こっていることの見通しができます。おすすめです。
以下、この本をベースにカーボンニュートラルについて、ざっくりと説明します。
◇シンプルな世界のコンセンサス(合意)
世界が共有するコンセンサスはとてもシンプルです。その目標は、「産業革命と比べ平均気温の上昇を1.5度以下に抑える」ことであり、そのために2050年までに、「温暖効果ガス(GHG)の排出を実質ゼロにする」ことです。この実質ゼロにすることが「カーボンニュートラル」です。
まず、このコンセンサスに至った科学的エビデンスの成立と、合意まで経緯を説明します。
◇科学的エビデンスの成立
地球温暖化の原因として、「人間活動(Human Activty)」が取り上げられたのは、1988年のことです。国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が初めてまとめた第一報告書で「人為起源の温室効果ガスの影響」を指摘しました。
その後、世界中の第一線の研究者達がこの報告書をベースに、長い歳月をかけて、中身をブラッシュアップしていきました。そして、2014年パリ協定では、「人間による影響が20世紀半ば以降に観測された温暖化の支配的な原因であった可能性が極めて高い(97.5%)」という断定的な表現になりました。これが、気候変動に関する科学的エビデンスになります。世界中の科学者が集まり、叡智を駆使して、この結論に辿り着きました。
◇世界的な合意とカーボンニュートラルのラッシュ
この結論は最終的に世界各国で合意されます。
まず上記のエビデンスが正式に報告されたのが、2015年のパリ協定です。
パリ協定は各国にたいして、5年ごとに削減目標を提出することを求めています。このことが、2020年の「カーボンニュートラル宣言のラッシュ」につながります。
EU圏では早い段階から、スウェーデン、イギリス、フランス、デンマーク、ドイツがカーボンニュートラルを宣言しました。
当初はトランプ政権のアメリカがパリ協定からの脱退を表明しました。世界一の、排出国である中国の参加も不透明で、世界の大国間でコンセンサスが得られていませんでした。しかし、アメリカの政権が交代し、バイデン大統領が誕生します。そして、2020年の9月には中国がカーボンニュートラルを宣言し、世界を驚かせます。同年10月には日本がカーボンニュートラルを宣言します。アメリカはまだ国家の統一的合意が得られていないようにも見えますが、バイデン大統領は、温室効果ガスの排出量を2030年までに50%程度減らす(2005年比)ことを宣言しました。
こうして世界中でカーボンニュートラルのコンセンサスが成立し、その実現に向けて、新しいビジネスフロンティアが生まれます。ここまでの流れはとても急だったと思います。
◇お金の流れの変化
こうした新しいビジネスフロンティアや、カーボンニュートラルに向けた企業の取り組みには、良質の投資マネーが流れ込むことになります。
近年話題になっている「ESG投資」ですが、その取り組みは10年以上前から始まっています。その先鞭を切ったのは、各国の年金基金です。各国の年金基金は、巨額の金額を長期的な視点で取扱います。その際に、評価の基準となることは短期的な株主価値の最大化ではなく、気候変動などの長期的なリスクに対応した取り組みです。日本の年金積立基金は世界でも最大規模です。その基金は2015年に国連投資原則(PRI)に署名し本格的にESG投資に舵を切るようになりました。
こうして各国の年金基金がESG投資に切り替わっていくなかで、世界的な大企業の取り組みも、短期的な株主価値の最大化ではなく、ESGの考え方を取り込んでいきます。それに合わせて、大規模な投資ファンドもESG投資に重点を置くようになります。
こうして企業にとって、エコロジーというものは単なるファッションではなく、経営的課題の中心に置かれるようになりました。
◇新たなビジネスフロンティアの誕生と世界的な競争
こうしてカーボンニュートラルのラッシュを受けて、新たなビジネスフロンティアが生まれることになります。そしてそのフロンティアには多くのマネーが集まります。
一番大きなフロンティアは、風力発電をはじめとする再生可能エネルギー分野です。もうすでに日本でも洋上風力発電の大規模プロジェクトが始まっています。世界的な企業が連合を組み、入札を競っています。あわせて送電網の整備があります。最初の投資だけでなく、その点検・保守も含めて、インフラとしてかなり大きな金額の投資になります。
原子力発電は、EUでクリーンエネルギーに分類されるようです。さらには、Microsoftの創業者であるビルゲイツが個人的に原子力発電のイノベーションに取り組んでいます。今後、世界中からマネーと優秀な人材が集まると思います。何らかの画期的技術が生まれても不思議ではありません。
そしてEV(電気自動車)化の流れがEUを中心に大きく進んでいます。EUの主要国ではこれからガソリン車の販売ができなくなります。SonyやAppleも参入を表明しています。こうしたEV化の流れとグローバル企業の新規参入もカーボンニュートラルのラッシュ後に一気に加速しました。
他にも、代替肉の開発も面白い市場だと思います。牛(世界で10億頭以上)の「ゲップ」、「オナラ」が排出する温室効果ガスは、二酸化炭素ベースで、約20億トン、人間活動による排出量のおよそ5%になります。そのため大豆をベースにした植物肉への移行が進んでいます。アメリカでは、「インポッシブルバーガー」、「ビヨンドミート」という植物肉のブランドが高い支持を得ています。他にも人工培養肉の開発も進んでいます。
あとは、水素燃料、アンモニア、植物性ミルク、空気から炭素を回収・貯留する技術など、様々な分野の研究開発・事業化が進んでいます。
注目すべき点は、カーボンニュートラル宣言以後の世界では、これらのビジネスフロンティアに、良質な大量のマネーと、優秀な人材が集まるということです。あっと驚くブレイクスルー技術が生まれても不思議はありません。
◇カーボンニュートラルに向けた日本のビジョン
最後にとても残念ですが、現時点では、このカーボンニュートラルという世界的な競争の中で日本はまたひとつランクを落としそうです。
日本もカーボンニュートラルを宣言しましたが、そこに国家のビジョンや戦略は見えません。とりあえず世界的な流れに追随した感があります。エネルギー政策では様々な問題が先送りされたままになっています。更には日本の重要な輸出産業である自動車産業をどこへ導くのかも不明です。
とはいえ、こうしたカーボンニュートラルへの取り組みは、グローバル企業だけでの問題ではありません。こうした企業と取引があり、そのサプライチェーンに関わるようであれば、当然何らかの取り組みと成果は求められます。また今後は官公庁関連の取引でも様々な取り組みが求められるようになると思います。ふと考えてみれば2050年なんてあっという間です。待ったなしで、この世界的な潮流は進み、我々の生活スタイルを激しく変えていきそうです。
22年の動向
早嶋です。
22年1月5日現在の新型コロナウィルスの感染者は2.93億人で死亡者数は545万人、国内では173万人で死亡者数は18,392人(※1)です。デルタ株が夏以降に拡散し欧州では感染者数が再び拡大。秋頃にはオミクロン株が南アフリカから世界に広まりを見せています。
コロナによる景気の落ち込みを底上げすべく主要国は大規模な金融緩和を実施しており、その結果、株式市場には緩和マネーが流れこんでいます。各国の消費者物価指数を調べて見ると20年7月頃より上昇しておりインフレ圧力が高まっています(※2)。
22年はインフレ圧力を受けて各国の中央銀行は利上げに動きつつあります。大きな方向性としては、金融緩和縮小の動きによりドル高基調になると考えられます。日本経済新聞によると、21年7月以降に利上げを実施した国は30カ国を超えています。
これらの背景は、地球温暖化防止におけるエネルギー問題、コロナによる世界的なサプライチェーンの遅延によるモノ不足が重なり生じていると考えられます。
(地球温暖化防止におけるエネルギー問題)
世界的な人口増加によるエネルギー需要のひっ迫に対して、脱炭素の影響が加わり、原油や天然ガス価格が高騰しています。以下、各国での状況を見て見ましょう(※3)。
ロシアでは9月に完成予定だったドイツとロシアをつなぐ天然ガスのパイプラインが未だ未操業で欧州への影響が大きくなっています。その欧州では気象要因により風力・太陽光発電が振るわず、天然ガスの需要が増え、電力危機の状況です。
インドでも石炭価格の上昇で電力需要がひっ迫。州によっては停電が頻発しています。中国も環境対策で石炭火力の発電を抑制しているため、20年9月からは20の省・地域で計画停電を実施しています。また欧州からの石炭輸入禁止措置の影響も在るでしょう。ブラジルでは渇水により主力の水力発電が低迷しLNG調達に乗り出すも需要がひっ迫しています。
中東は石油価格が上がっていることから日米等からの石油増産要請には応じません。増産しなくても利幅が獲得できるからです。日本はここ10年でこの冬場が最も電力需要が厳しい見通しになっています。原油高騰、LNG高騰の影響です。米国はLNG生産能力の限界に達し、不運にもハリケーンが直撃しLNGの生産が停滞しています。米国のLNG輸出が滞ることで他国のLNGひっ迫の要因にもなっています。
COP26などの脱炭素に向けた取組は重要ですが、上記の状況を鑑みると足並みが揃っていないことがわかります。COP26「グラスゴー気象合意」文章の要点は以下です。
・気温上昇を1.5度に抑える努力を要求
・必要に応じて22年度までに30年の削減目標を再検討
・排出削減対策の取られていない石炭火力の段階的削減へ努力
・先進国から途上国に年1,000億ドルを支援する目標未達は遺憾。速やかに達成を。
です。例えば、最後の1,000億ドルの原資はどこがいくら負担するのかなどの枠組みが無く、各国の動きが取りにくい状況にあるのです。パリ協定の1.5度目標に対して、先進国は「維持すべき!」で、途上国は「実現が困難!」という立場です。途上国は先進国に対して「支援が不足している!」と言い、先進国は途上国に「もっと取り組みなさい!」と言っています。先進国は各国の30年目標では1.5度を実現できないので、途上国は上澄みをして欲しいと思っています。途上国は経済成長には石炭火力や化石燃料の活用が必要と主張します。
結果、この状況なので足元では化石燃料への投資が減速され、構造的にエネルギー価格が高騰し、電力不足が懸念され続けるでしょう。各国の大きな方向性は石炭火力と化石燃料の段階的な廃止、ガソリン車からEV車へのシフトに進むのです。
因みに、2018年時点での世界の電源別発電電力量の構成比は38%が石炭、23%が水力、16%が天然ガス、10%が原子力、3%が石油となっています。これらからいても石炭対策は重要ですが、一連のエネルギー事情によるエネルギー単価の高騰とひっ迫はしばらく続くことがわかります。
(コロナによる世界的なサプライチェーンの遅延によるモノ不足)
現在、我々が消費する商品の多くは1つの国や地域で原料調達から製造加工まで行えるほど単純ではありません。様々な原材料や部品を複数の地域や国から集め加工製造して販売されています。そのため一つの地域や国がコロナ対策が出来てもワクチン接種が遅れている国があれば人で不足による原材料調達加工不足が生じ物流が停滞して結果的にモノが不足する状況が発するのです。
21年後半よりコロナとの共存により、電子機器や住居関連の需要が増加しました。しかし物品需要の急激な回復とは裏腹に、原材料や部品。製品の供給不足や遅延が頻発します。現場ではコロナで離れた労働者の確保が追いついていないのです。
供給不足の代表例は半導体です。家電、車、パソコンと様々な商品に組み込みがある半導体の供給遅延は、我々も肌感覚で実感している状況です。更に貿易をする上で船舶やコンテナが不足する自体も影響が大きいです。コロナにより手続きが品雑化しており海上に停滞するコンテナが増えるため回転が鈍っているのです。特に中国やベトナムなどの輸出に関しては時間とコストが増大しています。アジア製の電子危機、家電、家具、衣料品などの世界的な需要増に対応することが出来ず、コロナが見つかり次第中国はすぐに港湾を閉鎖するなどの影響で大幅な乱れが連鎖しているのです。
海上輸送の混乱の原因を考えると、22年に急激に回復するものでは無いことがわかります。また、半導体に対しては需要増が見込まれても生産能力を急激に増強するには莫大な投資が必要なため不足解消にまだ1年はかかると推測できます。
(22年以降の世界で起こること)
コロナから3年目。物品に対する需要は急回復を見せています。しかし、その副作用で原料、部品、製品が供給不足になっています。加えて、海運を中心に物流が滞り、その回復もしばらく見込めない状況です。人手は慢性的に不足しているため価格の上昇と賃金増は今後も続くでしょう。そこに慢性的なエネルギー不足とエネルギーコスト上昇が加わり、全体としてはあらゆるコスト高から回避出来ない状態が続きます。
景気が悪化して失業が増え、購買力が低下し、物品の需要が減るという悪い状態ではありません。しかし、需要が高いのに、供給が不足するという事態に対して本来は企業や店舗は大幅な売上増を期待出来ましたが、それがままなりません。そこでそれらのコストが小売価格に転嫁されインフレが生じる状態になっているのです。変異株であるオミクロンは従来株よりも弱毒性との指摘もありますが不透明な景気の見通しは続きます。
22年以降の最悪のシナリオは、過度な景気対策と上述した状況が続きインフレ圧力が高まる。より一層の2極化が進み経済が混乱する。米国か中国においてバブル崩壊のような症状が起き、世界に波及する。ここに関しては大前研一さんが指摘しているように1918年から20年に起きたスペイン風の世界的流行、その後の過剰な景気対策。そしてその結果、米国のバブル崩壊による世界大恐慌のシナリオになる可能性です。
ハッピーなシナリオはコロナ株がインフルエンザのようになることです。この場合でもインフレ圧力、人材不足、エネルギー高、サプライチェーンの分断リスクは無視できないのでwithコロナ戦略を企業毎に議論しておくことが肝要ですね。
参照
※1 Our World in Data, JHU CSSE COVID-19 Data参照
※2 総務省統計局「消費者物価指数」参照
※3 週刊エコノミスト、週刊東洋経済、日本経済新聞 参照
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