早嶋です。
グーグルは米国において12番目につくられた検索エンジンのスタートアップで全くの後発組でした。しかし初期のグーグルを支援したヴェンチャーキャピタル(VC)が名経営者のエリック・シュミットを連れてきて、それから業績を伸ばしています。そしてそのVCは半導体産業が元祖でその半導体産業自体もVCによるリスクマネーで産業が成長しています。
世界的に見て2013年はユニコーン元年です。この頃から時価総額1,000億円以上の未上場企業が増加しています。2015年には176社だったのが2021年には959社まで増えています。当初はシリコンバレー発だったユニコーン。今は半数が米国以外からの誕生です。この成長を裏で支えているのはVCです。
従来、日本と同様に保守的と考えられていた欧州の企業も、北欧発のくランダムというVCを皮切りに欧州発のグローバルスタートアップ企業を誕生させています。現在、欧州でのベンチャー投資額は737億ユーロと直近10年で10倍程度伸長しています。
この動きはアジアにも飛び火しています。中国以外の国でもインドをはじめ、シンガポールやインドネシアなど巨額の時価総額を生み出すベンチャー企業を次々に誕生させています。
そして2019年12月、武漢から始まった世界的なパンデミックで下火になるどころかベンチャー投資は更に加速しています。社会の変化を受けて新たな企業が全く異なる切り口で社会課題を解決する。その際にリスクマネーを集めたVCのエコシステムが産業を資金面で下支えしているのです。
かろうじて世界3位の経済大国日本。残念ながら既存の大企業のエスタブリッシュメントの力が強く、このVCによるイノベーションを創発する仕組みが生かされていません。今停滞している経済に風邪穴をあけるのは大企業ではなく今後生れてくるであろうスタートアップの可能性も秘めています。その意味で経営者はVCに対しての知識を一定以上付けることは必須になると思います。
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イノベーションを加速するエコシステム
事業会社が新規事業を成功させるスキームとしてのCVC
早嶋です。
中堅企業以上で次のような文言を聞く機会があります。
『2025年に向けて売上を(例えば)500億にします!不足する(例えば)100億は新規事業とM&Aで補います!』
って、実際に具体的な新規事業の中身やM&Aに対しての取り組みを見ると、これからという企業があまりにも多いです。しかし実のところM&Aは国内でも年間に4,000件程度の成約しかなく、しかも多くの方がイメージする実質的な支配権を獲得する買収はそのうち3割程度、5割は資本参加という実態です。企業の数が300万社から400万社ということを鑑みてみ、如何にM&Aのオプションが実は現実的な可能性レベルよりも少ないことがわかります。
仮に、新規事業をM&Aで補うことを考えて見ましょう。M&Aを実施する際、1)新規分野への投資、2)既存分野への投資があります。そして、それに対して今事業が不調な企業と好調な企業に別れます。
1)新規分野✕好調
好調な企業は仮に買収出来ても結構良い値段がつくと思います。仮に買収できても、買い手企業がその企業をマネジメントできるかは別です。本来、M&Aは資産価値から負債を差し引いた純資産の価値以上の買収価格が付きます。そのため、買い手企業はM&Aをした時点で損をしていることになります。得にベンチャー企業などは急成長を武器に、積極的な外部資金調達を行っているため、買収時に発生するのれんが相対的に大きいです。そのため買収後にベンチャー企業が思うように成果を出せなかった場合はのれんの減損が発生します。
1)新規分野✕不調
不調な企業ですから買収価格は安いでしょう。しかし、買い手からすると新規の事業であり、しかも事業内容が不調。そのメカニズムすら理解できないでしょうから、買収は出来ないでしょう。
2)既存分野✕好調
こちらはいわゆる同業者の買収になります。もしこの分野のM&Aを検討するとしたら、すでに売り上げが頭打ちで何らかの理由で売上が確保したい場合でしょう。買い手としては、既存事業ですので事業の理解もありマネジメントは可能ですが、新規事業のポートフォリオとしては不敵説ですね。
2)既存分野✕不調
買い手が一定のシェアや規模を持っている場合、売り手企業の不調レベルが理解できると思います。そして、仮に買い手の傘下になった場合、その不調部分を補える場合は良い買い物になるでしょうが。不調な分、買収価格は低い。しかも買収することで、双方にメリットが生じ、将来の企業価値が高くなるのです。
と考えると、本来M&Aは2)既存分野の不調を買うのが最も合理的だということが変わります。少なくとも新規事業のエリアを買収して伸ばそうとすると、相応に高い金額でなければ変えないし、相応のマネジメントがいない限り、更にその企業を伸ばすことが出来ないのです。
では、M&Aは新規事業において不適切かといえば、そうとも断言できません。もし、僕が同様の立場で一定の新規事業をM&Aする必要性があるとしたら独自のCVCを運営して、M&A候補ベンチャー企業にマイノリティ出資を行うことで、買収後のマネジメントに対してのヘッジを考えると思います。
上記の説明から買い手企業が新規エリアに事業投資を行っても、そもそも業界のことや事業のことが不明でマネジメント出来ない可能性があります。そこで、いきなり支配権を得て経営をするのではなく、業務提携や業務資本提携からはじめて、一緒に事業をしながらDDを行うのです。マイノリティ出資を行うことで、双方の信頼関係は高まり、実際に事業を進めながら双方が協力する中で、短期間で行うDDを実務を行いながら行うこともできます。もし、最終的に完全に支配下に収めたいのであればその後にM&Aの交渉をするのも有りなのです。
一般的なベンチャー投資は投資リターン、つまりキャピタルゲイン等を狙い、事業リターン、つまり協業を通じた新規売上等を評価軸としてその最大化を評価軸として動きます。ファンドには業務執行を行い無限責任を負うGPと業務執行を行わないLPの2種類の組合員で構成されます。そして通常のファンドは、複数のLPがお金を出し合って運営します。
ファンドは、出資先企業の情報を獲得でき、情報収集手段として期待されます。それからファンドを運営するGPは提供する情報を増やして、直接投資の機会を提供します。しかしGPの目的は投資リターンの最大化であり、投資リターン意外には情報提供に留まります。
一方でCVCの場合は、GPとLPの二人組でファンドを組成します。そのため重点領域の選定や投資検討プロセスに関与することができ、投資リターンとともに事業リターンを最大化することが可能です。
ということで、20●●年の戦略的なギャップをM&Aや新規事業で補います!的な取り組みを行っているものの、実際はどうしようと悩んでいる方がいましたらCVCを構築して運営するというのが一つの筋だという考えを記述しました。もし、上記の取り組みにご興味がありましたらご連絡ください。
VCあれこれ
早嶋です。
日本にはおよそ200前後のVC(ベンチャーキャピタル)があります。VCは、ベンチャー企業やスタートアップ企業など、今後成長が見込まれる未上場企業に対して出資を行う投資会社です。未上場時に投資を行い、投資先の企業が上場、もしくはM&Aした際にキャピタルゲインを得ることを目的としています。
VCの特徴は、アーリーステージの出資に加えて、ハンズオン支援と呼ばれる経営支援です。アーリーステージの企業に対して内側からも協力して一緒に企業価値を挙げていくのです。もちろんVCはキャピタルゲインを得る確立が高まりますのでハンズオン支援はVCにとっても資本を入れられる企業にとってもWinWinです。
2018年の資料でやや古いですが、日本のVCやCVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)によるスタートアップの投資額は約4,000億円でした。一方、本家本元の米国亜h実に13兆円。2016年のファンド金額は日本が2800億に対して米国は4.6兆円。日本と米国では規模が圧倒的に異なることがわかります。
それからイグジットの手法も異なります。日本はIPOが8割りでM&Aが2割です。IPOの場合、10億から100億規模の上場が主流です。一方米国はM&Aが8割りでIPOが2割と逆です。米国のVCはIPO段階では売らず更に追加投資を行い更に成長させます。そして1,000億円規模でイグジットするなどM&Aの規模もダイナミックです。
ファクトは少ないですが、日本のVCはは0⇒1は実は得意では無いと思っています。そのためCVCはシリーズB、つまりスタートアップの事業が起動に乗り始めた段階で投資を行い、優良な商品の販売を支援するなどでその成長を手助けします。スタートアップからするとCVCを組成できる大手企業のネットワークや顧客は魅力的に映ると思います。そのような意味で、ゼロイチよりも1⇒10、もしくは10⇒100などスケールさせることに特化したCVCが実は成果を出しているのではないかと思います。
売り手として準備すると良いこと
早嶋です。
M&Aにおいて、売り手よりも買い手がリスクを追うことが通常です。そのため、買い手に対して情報提供を適切に行うことで、極力、情報の非対称を解消するように心がけることが大切です。と言っても、ここには常にギャップが生じ、解消することはありません。そして売り手はこのことを良く理解することが大切です。
そこで売り手としては、M&Aを考える際、あるいは実際に着手する際は、買い手に対して適切な情報提供を行い、買い手、もしくは買い手のM&Aアドバイザーを介して情報の非対称性を解消する協力が必要です。
売り手としては、自社の情報を過去から現在、そして将来の見込みを含めて可能な限り可視化し、言語化した状態で買い手に共有します。そのためには、資料や書類として整理することがポイントです。その際の基本は、財務会計、事業(ビジネス)、そして法務です。
今後、自社や事業の売却を少しでも考えている場合は、買い手が自分たちの事業や企業の取組や評価が出来るように資料を準備しておくと良いでしょう。そのためには、以下のようなチェックリストを確認出来る状態にしてみて下さい。
●定款
●履歴事項全部証明書
●株主名簿
●決算書一式(3期から5期分)
●直近年度は月次での残高試算表
●商品(製品・サービス)別の収支管理
●主要な販売先や取引先のリストや概要
●借入や未払い等の残高一覧
●リース支払い等の予定票
●給与台帳、あるいは給与明細(1年分程度は最低)
●各種規定集(就業、給与、報酬、賞与、退職金、休暇、手当等)
●賃貸借契約書
●重要な取引先や顧客等の契約書
●不動産評価と不動産登記簿謄本
●主要な資産と主な使徒
●会社案内や概要の説明(Web、パンフレット等)
●業界特有の資料等
●ビジネスモデルを説明した資料
●組織図やキーパーソンを説明した資料
●従業員名簿(性別、資格、役割、年齢、入社歴、社保有無等)
●代表者及び役員略歴と現在の業務と責任
ポイントは、もし自分が買い手の立場で考えた時に、どのような資料があれば、その企業の価値を評価して投資の判断ができるかを書面で理解させる資料を準備することです。これらが分からない場合は、迷わずお近くのM&Aアドバイザーに相談をされた方が良いでしょう。
パートタイムは無いでしょう
早嶋です。
M&Aという言葉や概念は11年前、一般財団法人M&Aアドバイザー協会を設立してから随分と世の中に浸透していると思います。そして最近は、シリアルアントレプレナーをイメージし、売り手の立場として会社そのものを商品として売却する仕掛けを意図的に作っている経営者も増えています。これに関しては良いとか悪いとかはなく、その戦略なので間違っては無いと思います。
ただ、シリアルアントレプレナーを目指すのであれば、はじめの一件は是非フルコミットしてもらいたいところです。どんなに優れた事業モデルでも現時点で赤字で、かつ経営者がパートタイムで事業を行っているような取り組みは、どんなに御託を並べられても時価総額のイメージがピンと来ません。それは売り手の都合であり、買い手の意思を無視しています。
更に、そこに対してM&Aでバイアウトしたいのであれば尚更です。IPOはたしかに将来の可能性に対してある程度価値を評価するでしょう。しかし中小企業のM&Aにおいては、今の利益が重要で、過去からの取り組みで何をしたのかがなければ将来の推定もできません。ですので社歴が1年ポッチの会社で赤字であれば、仮に優れた仕組みを持っていたとしても、相当の経営者でなければ買収する気持ちにななれないと思います。
企業のベースは、その企業を起こす大義名分で、経営者は本気でその大義名分を達成する気持ちで行動し続けるものです。その結果、企業の収益がついてくる。それを志がなく、売却が目的ですよってな会社は、従業員にも、顧客にも、取引先にも申し訳ないと私は思います。あくまでも一部の特定のシリアルアントレプレナーを目指している方に向けてのメッセージで、他の経営者や成果を残しているシリアルアントレプレナーに対しては社会に価値を提供し続けているので立派だと思います。
M&Aの新たな活用方法
早嶋です。
複数の経営者と話をしていて共通の話題がでました。経営者の多くは40代から50代。皆自分たちで起業し失敗を繰り返しながら今のポジションを構築しているヒト達です。
その共通の話題とは、最近の人材についてです。企業が成長し始めて人事を拡充し自社のミッションやビジョンに適した人材を採用するようになると優秀な人材を獲得できるようになるのですが、なんか馬力がある若者が採用できなくなったというのです。採用する人材は皆、賢く、スマートで、そつがない感じ。普通に考えて良い人材ですが、一線を超えた経営者からすると物足りないのでしょう。
そりゃそうでしょう、と私。経営者は自分の時間とエネルギーと命を削ってリスクを取りながら自分のやりたいことを実現する生き物です。またベンチャーとも言えない危機的な組織を勇んで選ぶ若者であれば、間違いなく同じような感覚で動くでしょうが、そのような若者は自分から起業しているでしょう。一方で学生のときはなんちゃってベンチャーサークルでそれっぽい事をして、いざ卒業すると名の通った企業から内定を取ることで自分の立ち位置に満足する方々、言葉は悪いですが、そのような方々は弁が立ち自分の価値を高く売る方法をしっています。ステレオタイプかも知れませんが、成長しながらも安定する企業を狙う新卒にそのようなポテンシャルや能力を求める事自体が間違っているのでは。という話になりました。
一方で、近年そのよなベンチャー企業や成長企業のオーナーが興味がある一定の共通した人種に、自分で事業を立ち上げて成長意欲がバリバリある若者が挙げられました。彼ら彼女らは、当時の自分を見ているようで、その馬力と行動力がやっぱり懐かしく、そのような方々と一緒に仕事をしたいという本音があるのです。
従来M&Aの目的は買い手によっては成長や不足する資源を補うための手段で、売り手からすると事業がピンチになる、或いは後継者が不足して今後の見通しがたたないなどの救済型のM&Aが顕著でした。一方で、成長欲を持つ若者は近年の資本政策と自分の能力を冷静に分析しており、自分は立ち上げは得意だが、その企業をさらに発展成長するのは苦手だという方々です。このような方々と少し資本力の大きいオーナー&アントレー系社長であれば、ポジティブなM&Aは成立すると思うのです。
件数は少ないですが、相談ベースでそのような若手経営者から話は時々入るようになっています。私の役割は、そのような経営者と成長している先輩経営者のマッチングと建設的な交渉のお手伝いだと思っています。
【動画】中小M&A推進計画
早嶋です。
中小M&A推進計画。今後5年間にM&A関連に関して官民が行うべき方針をまとめた資料です。国の目的は中小企業の貴重な経営資源を将来につなげることを目的にM&Aアドバイザー等、推進する側の話をまとめています。基本的にはM&Aを業として提供する方々を何らかの方式で管理し増やしたい意向ですが、具体的な取組はこれからでしょう。
一方で、買い手と売り手がM&Aを行う際に、アドバイザー等の不備があり整備しなければならないという記述があります。しかし、本来は売り手も買い手も自社での戦略を明確にしながらM&Aを活用するか否かの判断なので、もっと覚悟を持って経営しなさいよ!的なメッセージがあっても良いのかな?と思います。
例えば、後継者不在や債務超過で経営が大変になったよとか、確かに大変だと思いますが、もっと早めに準備しとこうよ。という内容です。当然、有事等でどうにもならないこともありますが、後継者が不在というのは現在進行形で分かっている話。世論としてはあたかも少子高齢化が悪いような感じを受けますが、ただ単に経営者の準備不足なのです。
M&Aの業者、つまりM&Aアドバイザーに対しての不備も多数指摘がありますが、業者に丸投げする側もいかがなものかと感じます。今回の中小M&A推進計画は、主にM&Aアドバイザーや業として今後M&Aを推進する組織に対しての話です。しかし今後は経営者として、経営の読み書きそろばんの1つにM&Aに対してのナレッジを身に付けていくことは必須のような気がします。
M&Aを行う、これから行う実務担当者に向けてのメッセージ、その4
早嶋です。
何度かに分けて、これから、或は既に企業のM&A担当者として実務を行っている、或はこれから行う担当者に向けてのメッセージです。協会の取組を紹介しながらも、考え方やとりみ方、そして騙されない考え方や失敗を防ぐ取り組みについて紹介しています。
さて、買い手の担当者としてどのような心構えを持つと良いのでしょうか。ここからの考えは、本来アドバイザーの会社を支援する立場からすると若干の矛盾を生むかもしれません。しかし、実際に11年以上活動を通じている中で、買い手、特に大手企業の場合は、やはり案件を自分たちで探すことを推奨します。
まずは買収ありきはNGです。自社の戦略や方向性を明確にした上で、経営陣トップが責任を持ってM&A部隊の意義を理解しておく必要があります。その上で自社の経営資源や時間を鑑み、M&Aを選択することを半年に1回程度はすり合わせをするべきです。そして、状況に応じてM&Aを活用するというのが正しいと思います。M&Aは戦略ではなく戦術であって、戦略が先にあって、それらを補うためのツールでしかないのです。
M&Aアドバイザーの会社は手続き業務は慣れています。百戦錬磨で毎回タフなM&Aの手続きを管理して成約まで導いているからです。しかし、実際の業務内容においては買い手が精通している場合もあります。むしろ買い手が良く分からないエリアに投資をする場合は、確実にその事業は上手くいかないでしょう。そういう意味で買い手は本来は事業の内容に対して理解を示せるエリアに投資をした方が良いのです。そのように考えるとM&Aの実務はアドバイザーの会社が行うのでなく、M&Aのことについてはアドバイザーに整理をしてもらい適宜自分たちで行う方が実は筋が通ると思うのです。
前回も指摘差し上げましたが、買収ありきでなければ業務提携から緩やかに関係を構築しても良いのです。実際に小さなプロジェクトを一緒に行い、双方の能力や関係性を確かめてから資本提携をするか否かの判断をしても良いのです。資本提携ありきで話を持ち込みので感情のもつれができあがり、変な方向になることだって考えられます。
我々が出している結論はまた時代の状況に応じて変わるでしょうが、一方で、買い手企業の大手は、自分たちで取り組む内容を増やすべきだ。という主張の中でもう一つメッセージがあります。それはトップやM&Aの実質的な意思決定をする役員は、最低でもM&Aの背景やメカニズム、一連の流れを知識としてインプットしておくことです。担当の部隊が理解を深めても、知識不足で大事な経営判断を誤る。あるいは理解できないことだってあるでしょう。それでは不適切です。
協会では、そのような立場の方々に対してのレクチャーもさせていただいています。そしてその重要性は今後も主張させて頂きたいと思っています。
M&Aを行う、これから行う実務担当者に向けてのメッセージ、その3
早嶋です。
何度かに分けて、これから、或は既に企業のM&A担当者として実務を行っている、或はこれから行う担当者に向けてのメッセージです。協会の取組を紹介しながらも、考え方やとりみ方、そして騙されない考え方や失敗を防ぐ取り組みについて紹介しています。
2回目まで読んで、一度買い手として整理をしてみましょう。年間に1500万円から2000万円を平均給与を支払える会社が本気になってもM&Aの成約件数は300件程度がマックスです。当然に、案件を様々な手法で集めていき、それらをセールスする手法は日々ブラッシュアップしています。ですから、事業会社の担当者が片手間で案件を探したところでまずは太刀打ちできないのです。
それでも私は、案件自体はその企業のトップが責任を持って探すことが効果的だと思っています。M&Aアドバイザーの会社から「あなたの会社に興味を持っている企業のリストを持っています。」とレターを毎月もらったところで、オーナー経営者としては理解をしないし、そのアドバイザーの会社にコンタクトしようとは思わないでしょう。
一方で、我々は〇〇という業界で△△の技術と経験のもと〇〇年以上の実績があります。今後、弊社では■■というビジョンのもと、経営資源を〇〇の分野にシフトして、拡大したいと思っています。その際に、△△のエリアを自前で行っても時間がかかることをシミュレーションしています。そこで御社と業務提携を結んで、〇〇の取組ができないかと考えています。というように、バイネームで取り組みたい内容と、一緒に行いたいことを真摯に伝えて、正面からアタックすることも可能だと思います。
実際に、複数社で並行的に上記の取組をしながら資本政策ありきではなく、戦略を達成するための手段としての業務提携などを視野にアプローチして現在進行形の企業がいくつかあります。
しかし実際は、20年程度の低迷した社会において、既存の事業がいよいよ終焉を迎える、或は数年先が見えなくなるなかで、イノベーションやら新規事業やらM&Aやらの抽象的な概念の言葉が社内で独り歩きして。いざ部隊が出来上がってもトップの方針が良く分からない。という状況を多々観察します。
もしそのような状態でM&Aの大手アドバイザリー会社に相談を持って行けば、かならず、待ってましたと言わんばかりに具体的な案件やいいお話をされること間違いなしでしょう。
しかし冷静に考えると極めておかしな話なのです。本来は、自社の合致した条件でなければ断るか、或は相手に譲歩頂くかが筋なのですから。また、市場価格よりも高く値段がついている状態で譲り受けること自体もおかしな話です。自社の戦略に合致していても、そのオプションを評価した時に、自社のルールから外れる場合は、明確に断ればよいでしょうが出来ないのです。
その理由は戦略の軸がないことだと思います。
もし、どうしても提案されている会社がが良ければ、相手と交渉をして、100%の譲渡ではなく、マイノリティから始めることだって良いのです。場合によっては、アドバイザリーは買い手に対してそのような提案を進めても良いでしょう。また、状況が不確定であればしばらく業務提携で互いの様子をみても良いのです。
しかし、このような提案は絶対にアドバイザーの会社は行わないでしょう。理由は明確で、アドバイザーの会社は売買金額に応じたインセンティブを成功報酬で受け取るからです。仮に100%の譲渡で30億の売買価格の場合、10%の譲渡だと3億程度になってしまいます。アドバイザーの会社としてはそれまで行ってきた苦労を考えると、やはり100%の契約を巻いてもらった方が自分たちの手取りも高くなります。こう考えると、本来の利害が一致していない関係であることが分かると思います。
M&Aを行う、これから行う実務担当者に向けてのメッセージ、その2
早嶋です。
何度かに分けて、これから、或は既に企業のM&A担当者として実務を行っている、或はこれから行う担当者に向けてのメッセージです。協会の取組を紹介しながらも、考え方やとりみ方、そして騙されない考え方や失敗を防ぐ取り組みについて紹介しています。
M&Aアドバイザーで大手は、社員の平均年収で1500万とか2000万円オーバーの会社がざらです。多くの人は経済紙を見ると定期的に年収の高い会社ランキングで上位にM&Aアドバイザーの会社が登場するので、その名前は聞いたことがあるでしょう。
高額の金額を払える理由は、多くの企業がM&Aで成長したい、或は自社のPPMを変えたい中、そのようなアドバイザーの会社は売り物である企業の情報と案件を直接グリップしている、つまり持っているからでしょう。当然、売り物を持っていれば、買い手にアプローチして案件の成約数は増えますので、アドバイザリーとしての手数料収入が入ってくるというメカニズムです。
M&Aの場合は、売り手にとっては初めて或は、一生に一度あるか無いかの経験で売却を意思決定するでしょう。当然ノウハウは無いので、知人やコンサルに相談をするでしょう。しかし、あまりその手のネットワークを持っていなければ広告宣伝して露出している、そして一部上場している企業に問い合わせることでしょう。さらに、大きく露出している企業は日夜そのような可能性が高い企業にアプローチして、そのタイミングが来る前後で契約できる準備をしていることでしょう。大手アドバイザリーは常に案件、売り物を確保する努力を行っています。
一方、買い手にとっては一度M&Aを経験すると、その術を自前で行う場合と、資本を活用して行う場合を併用して進めるでしょうからノウハウや経験値を蓄積していることでしょう。そして慣れた企業は自社でM&Aの案件を探すでしょうが、実業がありますからそんなに活動できません。当然に、すぐに案件を探してくれる会社に依頼したくなるのも信条。
結果的に大手のM&Aアドバイザーの会社はますます忙しくなるのです。但し、ここには落とし穴もあるので要注意です。それはM&Aの希望に対して案件が圧倒的に少ないという理由です。
当然に、いけいけどんどんの会社は自社を売却する発想は無く、買い手に回りたいでしょう。一方で将来の出口戦略を考えていてはじめからハッピーリタイアメントを計画して、会社を育てて売却する経営者もまだ少ないと思います。どちらかといえば企業の売却理由は業績不振や後継者不足。たまに資本を大手に入れてもらい、大手のネットワークを活用して顧客や世の中のために更なる成長を手にしたい。なども考えれることは出来ますがやはり稀です。
となるとM&A アドバイザリーの会社は良い売り物を手にすれば事業は成功しますが、中々案件が無いという状況になります。売り物が少なくて、買い手が多ければ当然に売り物の価値は高まりますので、現在観察できるように市場価値が合理的についたとして大手は高く買わざる得ない状況になっているのです。
実際の数で考えてみましょう。例えば1年間にM&Aされた数は約4,000件程度です。そして実に50%はマイノリティー出資ですから、我々が想像する支配権を伴う移動のM&Aはその半数の2000件程度なのです。
その中で大手のM&Aアドバイザーの会社で、某者は年間に600件程度の成約をプレスリリースしています。但し、この会社は基本的に仲介形式が主なので、件数自体は300件程度です。となると他の案件は小さなブティックが取組んでいたとしてもそれでも合計2,000件程度しか成約が無いのです。日本には300万社の事業が存在するのにM&Aで毎年成約する件数はまさに誤差ですよね。
そう、そのくらい売り案件が少ないので、買い手企業に戦略が無くて、M&Aをすること自体が目的になれば、高掴みして、買った後に苦労する。というシナリオが見え隠れするのです。これはM&Aアドバイザーの会社が悪いのではなく、そのような状況を理解せずに行っている企業にも責任があると言えるです。
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