ダナン・ホイアン情報 2018年10月

2018年11月2日 金曜日

早嶋です。

10月30日から11月2日、実質2日間でダナンとホイアンに弾丸視察。目的は、ダナン及びホイアンエリアのお土産需要と立地確認。その際の備忘録です。記述している情報は現地での感想や主観を含む。長文です。

◾ベトナム基礎情報
面積は約33万km2、日本の9割程度の大きさ。南北に長い。中国、ラオス、カンボジアと国境を接し、東側が東シナ海。首都はハノイ。宗教は仏教、カソリック、プロテスタントなどが主流でイスラムやヒンドゥーに加えて新興宗教のカオダイ教など。ただ習慣的にお寺に行く人が多く8割り程度が仏教。街中には線香をいたるところで焚き、花を添えた信仰が生活に根付いている(ダナンとホイアン)。

ベトナムの正式名称はベトナム社会主義共和国。したがい社会主義国。マルクスの主張通り、「資本主義は貧富の差を拡大する」ということから財産などは集権される仕組み。徴兵制をしく。現在、社会主義国は他に中国、キューバ、カンボジア、ラオスなどがある。

ベトナムは地理的条件から漁業と農業といった一次産業が盛ん。加えて現在では鉱業も栄えている。石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料に加えスズなどの金属を採取し海外に輸出している。輸出と輸入を見ると、縫製の材料や布地、機会部品、鉄鋼などを輸入し(2,110億ドル)、縫製製品、ケータイや部品、PCや電子部品、機械設備を輸出(2140億ドル)している。付加価値の低い一時品や軽工業品を輸入して付加価値の高い機械や設備などの資本財を輸入する貿易構造を取る。

◾生活事情
家庭にはキッチンが無い家が多く、屋台や食堂で食事を買い、自宅へ持ち帰り食べるスタイル。人件費が安いため自分で調理するとかえって高くつくらしい。近年これに加えて海外の出入りが盛んなため外食産業は実に多国籍で多種多様に栄えている。

平均の賃金は150〜200ドル/月。1食数十円から100円程度で食べることができる。娯楽はテレビ。特にサッカー観戦が好きなようだ。若者のファッションに費やす金額は3,000円〜5,000円/月程度。ケータイが1万円前後で、バイクは10万〜15万円程度。男性的4種の神器はWife,Children,Floors,wheelsと言われる。

◾経済成長
ベトナムは共産党の一党独裁。基本は財産管理を国営で行うことで貧富の差をなくす考えだが、1986年のドイモイ政策により自由主義経済を取り入れ、外資企業の経済参入を許容した。

90年後半より徐々に成果が出始め、GDPを経済成長率も着実に向上している。外資企業の参入は韓国を筆頭に日本、台湾、米国、ドイツ、フランスなどが相次いだ。

2000年に入ると中国リスクを懸念する企業が東南アジアに拠点を分散することで、チャイナプラスワンの筆頭にベトナムが上がり経済が更に加速。現在は50年の期限付きで土地やマンションなどの不動産を持つことが可能になり経済自由度が向上。

国策でIT産業を促進しているため成長は著しい。韓国を中心とした外資企業の進出に伴い、ベトナム人IT人材は質を上げている。また韓流の露出戦略が随所に見られ、TVやCMなどでその影響を若者に与えている。

現在、GDPは2,235億ドル、人口9,370万人、一人あたりGDPは2,385ドル。なお、平均年齢は28歳。統計ではまだ人口ボーナスの恩恵を受け、2040年頃までは成長が続くと思う。現在の成長率は6.81%(2007年からの平均でも6%台)で1995年の比較でおよそ10倍の経済規模になっている。

現地でコンサルをしている人曰く、2012年頃はまだ車がほとんど走っていなかった。ヒュンダイやフォードすらも無く、あってもどれも型落ちの車。今はベンツやレクサスなどもちらほら見かけるようになり、バイクも品質の高いものや大型クラスのものを見かけるようになったと。所得が上がっている証拠だろう。
通りのバイクと車

◾政治的特徴
政治的なリスクとして政府の権力が最強である。ダナンでは少ないようだが、何かの理由で警察に目を付けられることもあるとか(現地人談)。それから法律や規制が頻繁に変わる。

ちなみに2017年APECがダナンで開催され、そのために増員した警察官が過剰状態で、いたるところで交通や軽犯罪を取り締まっているため運転も穏やかで非常に安全だ。

◾通貨
単位はdog(ドン:VND)200VNDから500,000VNDの紙幣が流通しているようだが、5,000VND以下はあまり見ない。ホテルやレストラン、お土産店ではUSドルも併用されている。両替やATMが充実していて、クレジットカードもそこそこ使えるので不自由は無い。

◾ダナンの立地と気候
ダナンは、ハノイとホーチミンの中間に位置する都市でベトナムの主要な港湾都市。西側(ラオス側)が山に囲まれ、東側は南シナ海に面している。

ベトナム全体が高温多湿で熱帯モンスーン気候に属す。ただ南北に細長いためエリアによって気候がことなる。ダナンは9月から3月が雨季(今回は珍しくからりと晴れて涼しい)でオフシーズン、4月から8月が乾季で観光客が押し寄せるピークシーズン。10月と11月は特に台風があるが、来なければ今回のような過ごしやすい気候となる。1月と2月は日本の秋くらいの感じでやや肌寒いという。オフシーズンはホテル全体のレートが良く世界遺産巡りを楽しう場合は今からの時期がおすすめだ。

実際、今回はオフシーズンで観光客はまばらで、レストランも多くは閑散としている。気温は年間を通して平均が25度前後で10月、11月の今回はとてもラッキーだったか、涼しく晴れ間の雨季だった。通常のうきはシトシト雨ではなく、毎日1時間程度のスコールがありその後晴れる。

ダナン中心部に国際空港があり、市街までは3キロ程度とアクセスが非常に良い。東シナ海側はビーチリゾートとして人気があり、近年急速にその開発スピードが増している。ダナンからホイアンにかけて海側は、現在も多くのホテルやリゾート施設が建設中。ハイセンス、ラグジャリーなホテルやリゾート運営会社の投資が尋常ではない。

ベトナムでも人気のダナンは街並みは極めて清潔。ハノイとダナンを行き来している邦人曰く、ダナンは匂いがしないそうだ。2017年のAPEC効果もあり、歩道や道路が整備され、さらに安全になっている。街並みも急速に成長しているため道路の作りが広く計画的な作りになっている。ちなみに夜でも女性や若い人たちが街並みを歩いており、実際に街の中は危険な匂いはほとんどない。
観光スポットでもあるダナン大聖堂

ダナン中心にハン川が流れていて、その両サイドが観光エリア。海側と街側で若干の雰囲気が異なる。ここ10年程度で急速に街に投資が進み、ビジネス目的の在住外国人も増えており、不動産バブルが起こりつつある。ビーチサイドは、上述した通りダナンからホイアンに向けて、相当数の規模でホテル建設が進む。
ハン川

ダナンの位置づけはビーチリゾートとしての印象が強いが、ダナンを起点に古都ホイアン、ミーソン遺跡、フエの建造物郡、そして若干遠くなるがフォンニャ洞窟がある。ホイアンは40分程度、ミーソン遺跡は90分程度、フエは2時間程度なのでダナンを起点にビーチリゾート以外の観光も楽しめる立地条件だ。

◾交通事情
観光客の足はほぼタクシー。初乗りは10,000から15,000ドン(50円から80円程度)。従って遠くまで行っても気にならない金額。スマフォを使えるのであればGrabが使える。2018年3月にGrabがUberを買収したため、ベトナムでは圧倒的なシェアでほぼどこにいてもすぐに車を捕まえることができて便利だ。

ちなみにGrabをやってるドライバーもまだ半数は資本家が車を運転手に提供しているようだ。

空港から市内のホテルまで5万から7万ドン程度だった。

◾インバウンド事情
韓国籍の工場がダナンやその近郊に集積していることもあり、近年のアウトバウンドの外国人比率の内5割が韓国、1割強が中国、日本人は5%程度。韓国からは直行便が1日15便前後出ており、ピークシーズンは30便まで増える。

街中の外国人向けのレストランやお土産屋さんでは圧倒的にハングルが多く、通りを見ても多くの韓国人観光客で溢れている。ちなみに半数以上が団体旅行で、個人で旅行をする韓国籍はまだ少ない。

◾観光都市としてのダナン
近年、20代〜30代日本女子の二人旅、カップル、ファミリー層に人気が出ている。成田と関西から直行便が出たことも起因する。目的はまだビーチリゾートだが徐々にホイアンなどの世界遺産へ足を伸ばすようになり、ここ最近の日本人観光客はダナンからほぼ100%ホイアンに行っている(旅行会社談)。

旅行の基本パターンは3泊5日でダナンに滞在。日本や韓国からの飛行機は夜にダナンに着く便が多く、ダナンを出発する便は深夜便が多い。ダナンに基本連泊して近隣都市は日帰りで観光するのが最も多いパターン。現在、定期便に加えて年末年始、盆とGWは臨時便を出し、この時期は仙台、名古屋、福岡からも臨時直行便が出ている。安全な観光地でビーチと世界遺産のセットで老若男女から徐々に人気が出始めており、旅行会社もPRに力を入れている。

HISはワタベウェディングと協業でウェディングサロンをダナン支店に併設。ホイアンの途中、ダナンから15分程度の位置にある高級リゾート施設、ナマン(naman)リゾートで挙式を上げるプランを押している。
namanリゾート

2018年の第一四半期のダナンへの観光客は約170万人で前年同期比で35%増。内約82万人が外国観光客。細かい統計はわからないが、現地旅行会社曰くインバウンドの5割は韓国人。

ダナンは投資誘致に成功しており、企業の積極的な課題解決やインフラ整備などの展開を実施している。現在。ダナンへの直行便は31路線で1週間に270便の発着がある。

現地旅行会社の感覚では外国人観光客が訪れるベトナムのエリアとしてハノイが4割程度でダナンとホーチミンは同数程度まで伸びているということ。

◾ダナンのお土産
比較的安価な料金でのスパが充実しているため、最終日は空港に行く前にスパを楽しみ送迎してもらうというスタイルを多くのショップが提供している。スパの質はおしなべて高くない。

ダナンのお土産はチョコレートやコーヒーが主流。後はアジア雑貨がいろいろあるが、あまり心踊る商品は少ない。もともとベトナム自体の生活を支える小売が充実しているため、ナショナルブランドやチェーン展開をする企業の参入がまだ少ない。特にダナンは個人商店が並んでいる。通常は差別化をして皆工夫をするはずだが、そこは社会主義。同じような店で、同じような商品が乱立する。

中心地にハン市場とコン市場があり、多くの小売はそこから仕入れている。金額はどこのお店もさほど差がなく、路面店でも空港のショップでも同じような商品は金額にそんなに差がない。
ハン市場の写真

少し探せば、フランス人や日本人がオーナーで、感じの良い現地のお土産を開発しているが、今後の観光需要からするとまだ圧倒的に少ない。いわゆるダナンエリアに今後増えるであろう20代から30代の女性が期待するような商品が極めて少ない。

ダナンの空港の免税店もあまり商品がない。同じようなベトナム雑貨や特産品を扱う店が入っているが、特に心踊るものは無い。

◾観光地としてのホイアン
ダナンから車で40分程度の距離にある古都ホイアン。保存エリア一帯は、黄色い壁、赤い屋根、ブーゲンビリアの木々に覆われ、中国と一部日本の建築様式を残す街並みが広がる。
黄色の壁と茶色の屋根とブーゲンビリア

こちらはダナンと異なり、コンパクトな街並みに昔の景色と時間がつまっている。アジアの観光客はダナンに宿泊して日帰りでホイアンに行くが、欧米の観光客はホイアンに宿泊してのんびりと過ごしている。

朝から昼にかけては人通りが少なく、17時前後から一気に夕暮れの景色と雰囲気を楽しむ日帰り観光客がダナンから押し寄せてとても賑やかになる。古都にはノスタルジックな提灯が所狭しとぶら下がっており、街全体を幻想的な雰囲気にかえるのだ。ただ、このランタンの取り組みはかなり後付で、夜の雰囲気を彩る戦略としてダナンエリアを盛り上げるために考えられている。インスタ映えする景色が随所にあるので町おこしの成功事例として参考になる。

ナイトツアーは観光客が集中するため、夜ご飯難民がでるそうだ。旅行会社はレストランを確保したり、ミールクーポンを配布して予防するなど結構大変だ。知何に朝から夕方まではレストランもガラリとしてゆっくり過ごせる。多くの店でハッピーアワーとして10時から17時となっている。一瞬まじか?と思ったが、それほど昼と夕方以降の込具合が違うのだ。

◾ホイアンのお土産事情
上述の通り、多くはダナンから夜の雰囲気を見に来る目的が多い。保存エリアはレストランとお土産ショップが多く並んでいるが、やはり昔の名残で店ごとに代わり映えが市内商品が並ぶ。革製品やオーダーメードの洋服、雑貨などは目を引くが、なんとなくダサいものがあり、ちょっと工夫が必要だ。

が、数店はデザインや商品セレクトをこだわり、観光客で賑わっているところを見れば、こちらでのお土産需要に対応できていないお店が多いことがわかる。

◾ホイアンの歴史
16世紀頃より中国、日本、ポルトガルなどの各国と貿易が盛んになる。日本は鎖国政策を行う前までは、朱印船貿易を通じてホイアンとのつながりがあった。当時、ピークの時期には1,000人程の日本人がホイアンに住み日本人街が誕生している。ちなみに現在ダナンに住んでいる日本人が300人から400人程度なので、その2倍から3倍の人が400年前に住んでいたのだから驚きだ。

ホイアンのアイコンの一つで、2万ドン紙幣のモチーフにも使われている来遠橋(別名日本橋)は1593年に日本との友好関係を象徴してかけられたらしい。そう考えると、遠くから来たという重みを感じる。
日本橋
ホイアンの街並み

18世紀、タイソンの乱で街全体が全焼しているが後に再建される。19世紀に川の流れの変化から川幅が変化して港から街までの船舶の行き来ができにくくなる。また船舶が大型化して、貿易港がダナンに移った。
昔ながらの水路の景色

ホイアンはベトナム戦争の影響を免れベトナム政府は木造建築の景観と歴史を保存すべく日本に協力を要請して保護に至る。1992年ホイアンは世界遺産に登録され観光都市としての発展を遂げる。

◾その他現地ローカル情報
日本からの観光客も今は成田、関西からがほとんど。旅行会社は直行便を飛ばしたいが、ベトナムから福岡、名古屋、仙台が定期便を飛ばしても埋まらないので航空会社はまだ臨時便しか出したがらない。従って、日本の地方からの集客はまだ時間がかかる。

ホイアンやダナンはベトナムの中で特に治安が良い。スリが出て、街中総出で捕まえたなどの話を良く聴く。政府や市が観光の街として力を入れている成果もある。

ハノイは中国に接しているため、真面目で細かく、しっかりしている。昔から国境に面しているので、外国語も堪能で優秀な人材が多い。

一方南のホーチミンはルーズでゆるくフレンドリー。日本の沖縄のような感覚だそうだ。

ダナンは人柄も中間地点。経済的には田舎で、ベトナムの状況を知らない人が多い。性格は両方のいいとこ取りで仕事がしやすいそうだ。ハノイの金持ちがセミリタイアしてダナンに住むケースも多いという。

日経企業はベトナムの学生にとって人気が高い。第二外国語で日本語の選考が多く、近年は中学校から習い始め、高校では必須になるところもある。インターンでは日本語を上達させたいという学生が多く来る。外資系で人気な国は、日本、中国、韓国の順番。

地震はないのだろう。建物の基礎が細くて薄い。

街中は専門店が多く、大型の小売が少ない。また、ナショナルブランドやチェーン展開をする企業の出店もこれからだろう。



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