競争とポジション

2018年7月4日 水曜日

早嶋です。

競合と競争する場合、業界や地域での立ち位置を意識することが大切です。巷にあふれる事例や理屈の多くは1位の企業になることを前提としています。しかし、1位の企業と2位以下の企業は全く異なる経営のメカニズムがあります。

例えば、コンビニエンスストアの中で首位の企業を思い出してみてください。すぐに、セブンイレブン、ファミリーマート、ローソンの名前が出てくることでしょう。どれも同じコンビニですが、中身は全くことなります。

セブンイレブンは、店舗数が約2万店舗で、平均単価が約660円、1日あたり1,000人の顧客が店舗を訪れます。一方、ファミリーマートは約1.7万店舗で、平均単価は約580円、1日あたり約900人の顧客です。ローソンは店舗数が約1.4万店舗で、平均単価は約590円、1日あたり約900人の顧客です。

首位のセブンイレブンは、1日あたりの来店数が10%以上多く、単価も7、80円も高いのです。更に、セブンイレブンは自社開発商品の売り上げが高いので利益率も2社と比較して突出しています。もし、この状況を知らないで下位の企業が首位の企業を追い抜こうと頑張っても、そもそも生き物が違いうので、到底追いつくことは無いのです。

そこで経営を考える際には、業界や地域の中での立ち位置によって、ある程度の戦い方の定石があり4つの分類に分けて考えます。セブンイレブンのように首位の企業をリーダーと呼びます。リーダーに次ぐシェアを維持し、リーダーと真っ向勝負を行う企業をチャレンジャーと呼びます。そして、リーダーやチャレンジャーの次のポジションで、上位企業の戦い方を模倣する企業をフォロワーと言います。更に、例えばヤマザキデイリーストアやポプラのように小さいながらも独自のポジションを持つ企業をチャレンジャーと呼びます。

■リーダー企業の特徴
リーダー企業は業界のトップシェアを誇ると同時に、強いチャネルを持っています。例えば主要な立地条件に店舗を構えていたり、主要な都市に必ず地域一番店に相当する規模の店舗を持っています。

コンビニの代名詞と言えばセブンイレブンという感じで、業界=リーダーのような認識が一般消費者にはあります。従って、広告宣伝をせずともその認知度から顧客が獲得できる構図を作っているのです。

通常、リーダー企業はその地域や業界の中でシェアを占めています。これはそれだけボリュームディスカウントが様々なところで効くことを意味します。製造業であれば、原料や材料の調達コストを低減することができ、また大量の製造を一気に行うことで単価をぐっと下げることも可能です。流通店であれば大量の店舗があっても物流センターや拠点などを効率的に置けるため、やはりコストを押させることが可能です。

結果的に、他の企業よりも規模のメリットを出しやすく金額を下げて提示しても利益を十分にとれる体制を整えているのです。結果、更にその資金力や技術力、チャネルの力を活用して業界のあらゆる顧客層に対してフルラインナップ戦略をとることが多いです。

■チャレンジャー企業の特徴
リーダー企業に次ぐシェアを持ち、常にリーダー企業に競争を仕掛ける企業です。しかし、上記の特徴をみて分かる通り、実際に真っ向勝負をしても勝ち目は薄いのです。

そこで、チャレンジャー企業はリーダーに勝つ方法として、リーダー企業が比較的強化できていないエリアやセグメントを探して、そこに対して自社の資源を投下してシェアを奪う取り組みを行います。自分たちよりもシャアが低い領域や企業を見つけては徹底的に攻撃してシャア拡大を望みます。

結果的に、全方位的に品ぞろえを行うリーダー企業と対比して、製品の差別化が進み、時には思い切った商品戦略や価格戦略を実行する場合があります。

■フォロワー企業の特徴
フォロワー企業の特徴は興味深いです。リーダーやチャレンジャーを刺激しないで、自分の立ち位置を維持することに徹するのです。基本戦略としては、リーダーやチャレンジャーがあまり好ましいと思わない市場にフォーカスして基本的な収益基盤を作ります。そして、自社で積極的に商品開発やプロモーション開発を行わないでリーダーやチャレンジャーが業界で試した商品や企画を模倣して自社の立ち位置を保持する取り組みを行います。

規模はリーダーやチャレンジャーからすると比較的小さくなるので、全方位のリーダーや、差別化しながらも全方位を狙うチャレンジャーとことなり、ある程度のセグメントを選択して集中する取り組みを行います。

■ニッチャー企業の特徴
ニッチャーはフォロワー企業よりも、もっとセグメントや領域を絞り込み完全に特化した戦い方をします。その市場は魅力的でも、リーダーやチャレンジャーからすると規模が小さい、収益が上がらないようなセグメントを見出し、そこで粛々とシェアを獲得するのです。

例えるならば、リーダー企業は大きな池の大きな魚で、ニッチャー企業は小さな池の小さな魚です。小さな魚ですが、池のサイズが小さいので、他の入り込む余地はなく、小さな魚が十分に収益を出せる状態です。

限られたエリアや分野でオンリーワン企業として活躍します。しかし、注意点はあまり成長しないことです。理由は、池のサイズが大きくなると、周囲からかならず見つけられ、大きな魚がやってきて、気が付いたらパクリと食べられてしまうからです。従って、成長しないというストイックな意思決定をする必要があります。



毎月、多くの経営者とお話することがあります。ある人はいつもニコニコしており、ある人はいつも何かに追われるような状況です。例えるならば銅メダリストと銀メダリストです。

何らかの競技をみていると、銅メダリストは非常に喜ばしい表情をしていることが多いです。一方で、銀メダリストは何故か表彰されていても笑顔が少なく、時には悔しさでいっぱいの時があります。

戦い方として、銅メダリストはニッチャーやフォローで、自分のポジションを業界全体で捉えて戦っているため、そのポジションを最大限に謳歌しているのです。一方で、銀メダリストはあたかもチャレンジャーで常にリーダーを追い越すことに躍起になっています。しかし、1位と2位の壁は非常に厚く、いつまでたっても近づけません。周囲からはすごいねとは言われます。しかし、自分の中では全くその地位を喜ぶことが出来ずに苦しんでいるのです。

企業して2年で2億の壁を突破しました。その経営者は突っ走ります。きっと止まることを知らずに常に走り続けるでしょう。その地位を追われたくなく、常に不安な気持ちが先行して、それを拭うためにまた努力を続けます。なにやらすごい脅迫観念があるのかもしれません。リーダー企業はその地位が当たり前で、金メダルを取った瞬間から追われる立場になり、次もとることが当たり前になるのです。

企業において、重要なことは上位の4つのポジションのどれかが良いではなく、自分自身が何を目指しているかを明確に持っていることが大切なのです。



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