世界経済の回復、日本はどうか?

2018年1月5日 金曜日

早嶋です。

2018年の初投稿は辛口な考察です。

世界経済は緩やかに回復に向かっています。世界の株式市場も好調で富裕層や中間層の増加と共に資産運用も膨れ上がっています。日本を除く主要な各国の金融政策も正常化に進む兆しが見えてきました。一方で、日本のように企業と家計があまりお金を使わない現象が観察されはじめ物価や景気が刺激されにくい世界となっています。

国際金融基金の「World Economic Outlook Database October 2017」によると、世界経済は緩やかに回復していることが分かります。新進国や地域のGDPの成長率は2016年実績値と比較して2017年の見通しは成長を遂げています。これは新興国や地域、BRICsで見ても同じ傾向を観察できます。

一方で世界経済における新興国の存在感が高まり、世の中の経済は北米、EU、中国の三極体制になりつつあります。2015年実績で世界のGDPに占める先進国と新興国の割合は61:39で1980年代の80:20から比較すると新興国のGDPが進捗していることが分かります。

その大きな要因はやはり中国経済です。2015年実績で世界のGDPに占める割合は、米国24、EU22、中国15、日本6、その他33となっています。1980年代の中国は一桁の前半でしたので中国の近年の急成長がみてとれます。

PWCの調査レポート「Asset & Wealth Management revolution:Embracing Exponential Change」によると世界的に株式市場が好調です。先進国の高齢化や新興国における中間層の台頭によって、世界の運用資産は2025年に145兆ドルと現在の世界の国内総生産の約2倍に達する見通しです。

各種調査資料を見てみると、米国、英国、EU、中国、日本の金融政策で日本を除く他の主要国の金融政策は正常化に向かうことが推定できます。米国は正常化へ向かい、2017年10月のインフレ率が2.0%です。政策金利も1.00%から1.25%で2018年は3回程度の利上げを実施する見込みです。財政問題を挙げるとすると自動車、学生、クレジットの残高が高まっていることが懸念事項です。

英国は金融緩和政策の縮小を開始しました。2017年10月のインフレ率は3.0%で政策金利は0.50%です。昨年の11月に金融危機後はじめてのとなる政策金利の引き上げを実施しています。英国の財政問題としてはポンド安によって物価高と景気への悪影響があることです。

EUは2018年以降の量的金融緩和政策の縮小を決定しています。2017年10月のインフレ率は1.4%で政策金利は0.00%です。超低金利政策は維持で2018年9月以降の緩和延長を検討する方針が示されていました。

中国は金融緩和から中立の状態に移行しています。2017年10月のインフレ率は1.9%で政策金利は4.35%です。政策金利は短期市場の金利を高めに誘導して金融監督を強化しています。懸念事項としては地方債務残高が2016年末時点で260兆円規模まで増加していることです。こうして眺めてみると、日本は金融緩和を継続する方向を示し、他の主要国は金融政策を正常化に向けて進めていることが分かります。

世界銀行が出している資料を見ると2008年のリーマンショックを皮切りに世界の通貨供給量が世界のGDPを上回っていることが分かります。2015年時点の世界の通貨供給量は約88兆ドルに対して、世界のGDPは約75兆円でした。

超マクロ的な考察をすると世界の中央銀行はお金の供給を増やし続けましたが、企業や家計は内側に貯め込むばかりで外の経済に刺激を与えませんでした。これはこれまでの常識と異なり、お金が余っている状態を作っても人々が消費行動に走らなくなっているのです。

背景としては、やや粗い考察になりますが企業と家計で次のように考えることができます。企業や産業は、一昔に代表される重厚長大産業のように大規模な設備投資をせずにデジタル化、或はデジタル関連の産業が増えてきました。また、資産を所有する発想から、シェアすることで、複数で資産を共有するエコシステムが確立しつつあるのです。

同様に、家計や消費では、長寿社会に向け社会全体が老後に向けた貯蓄に励む思考が高まっているのです。また、若年層の失業率は高止まりをしており消費意欲の抑制になっているのです。

結果的に世界的に見ても企業も家計もあまりお金を使わない状況が続き、通貨供給が高まった状態であっても物価や景気が刺激されにくい状態になっているのです。

さて、そのようなマクロ環境下において日本はどのような状態になるでしょうか。仮に、現在の政府が進めている経済政策が続くと私は経済が悪化するのではと考えます。

現在の働き方改革において、政府は同一労働、同一賃金を打ち出しています。仮にこれが実現できれば、その賃金のベースは何と比較するでしょうか。世の中がスマフォ1つでつながってしまった世界では、賃金のベースは世界で比較することになります。もしそうなると、例えば、1時間当たりのタイピングの仕事は800円とか1,000円とかが正しいのではなく、世界の基準になった場合は、日本の料金が高すぎるとなり、結果、そのような仕事は海外にどんどん流出する結果を招くでしょう。

現在の生産性革命に対してです。基本的に日本国内の仕事はブルーカラーのように時間で仕事を確認できる内容と、ホワイトカラーの仕事に2分することができます。ブルーカラーの仕事に対しては機械化の導入が早くから進められているため生産性は比較的に高い状態になっています。従って、意図的に生産性革命の白羽の矢はホワイトカラーにフォーカスされます。

このように考えるとホワイトカラーの仕事も実は2種類あることが見えてきます。いわゆるマニュアルに落とせ、ある程度再現性が高い仕事です。極端な話、コールセンターや事務処理のような仕事です。そしてもう一つはその対極の企画やアイデア出し、戦略立案のように創造的に進めなければならない仕事です。

仮に生産性革命が進めば、後者の仕事は効率化や標準化が難しいことから前者の仕事に対して少ないインプットで同等、もしくはそれ以上の成果を出す取り組みがはじまります。これはホワイトカラーの仕事が大量になくなることを意味するのです。

更に、大企業を中心にホワイトカラーの創造的な仕事の区切りを全くなしに残業制限がかかっています。創造的な仕事は時間をかけたからといって良い成果が出る類の仕事ではありません。しかし、この区分けなく一律残業カットをすると大企業は創造的な仕事を外注してグループ会社か協力会社に投げる方向性になります。

仮に残業時間60時間の上限が定着したとすると、これまで支払っていた残業代が8.5兆円規模で経済からでていくことになります。この学区は日本のGDP比率で1.5%程度です。多くの家計調査が示す通りこれまで日本の家計は残業とボーナスが基本給のように捉えられてきたので、結果給与全体の原資が現象する方向になるのです。

そのために国は人づくり革命を両輪として挙げていますが、教育費の無償化が前面にあるだけで、どのような人材像を作る必要があるかの議論が薄いと思っています。総合して考えると、生産性革命によりホワイトカラーの失業が増えます。更に残業規制でベースとしての給与も減少します。結果、家計の所得が減るため、日本はデフレ脱却どころか更なる経済悪化を招く懸念があるのです。

世界経済は緩やかに回復していると言って、日本も明るいと考えない方が良いのです。これはマクロ環境と日本の現在の経済政策を見て総合的に考えた結果ですので、全て上記のとおり進むわけではありません。従って各自としては、自ら創造的に事業をつくる側にいて、定型業務として何かに置き換わられることがないような能力や知恵を常に身に付けアップデートし続けることが大切です。


参考資料: 各種資料、統計データ



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