QCとQAで上市を管理する

2017年12月21日 木曜日

早嶋です。

国内製造業では、QC活動とかQCそのものは製造現場の世界でも良く聞く言葉です。クオリティ・コントロール、品質管理で、自社商品の品質向上や生産性の向上を目的とした活動事態を意味します。一方で海外の製造企業では当たり前のQAという概念が薄い、或いは欠落していると感じます。QAは品質保証と解釈され、ある商品に対して、第三者からの目線で製品やサービスの品質を検証確認して顧客に保証する活動です。

製造業が新商品を上市するタイミングで、企業内部でQCの観点で各種検査をクリアしたとします。しかし市場や株主再度の立場に立つQAが「◎◎の部分及び、△△の部分において上市するには■■の可能性があるので不十分」と判断します。つまり、上市するか否かを社内のトップである社長の判断と同時に、企業の長期的な取り組みやリスクを勘案して判断するQA責任者が決めるのです。

単一商品、単一事業、そこ出身の社長であれば、上市の判断はできるでしょう。しかし複雑な商品や事業を複数抱える企業のトップは、事業部で上がった判断に対して、何の根拠もなしにゴーサインを出すしか対応できない場合もあるでしょう。そのような懸念を汲み取り社長であってもQA担当者を無視することはできない仕組みです。QCは現場管轄で、QAは経営陣の管轄。上市に対しては時として社長よりも権限を持つこともあります。

そもそも日本企業の多くが多角化ビジネスです。先日話題に出した神戸製鋼も鉄鋼、アルミ・銅、建設機械、機械、エンジニアリング、溶接、電力と分野が異なる事業を7つ展開しています。記事や報道をファクトとした場合、取締回で不正問題が報告議論されているだから発表をするのがルール。明らかに会社に対して重大事項なので直ちに公開の義務があり、それを行っていないのはコンプラ違反です。

しかし、これはひょっとしてある程度の日本企業の縮図の可能性もあります。仮説です。事業部が複数多角化した企業は、それぞの事業部が部門最適化してしまい、他の事業部との関係を取らなくなり視野が極めて狭くなっているのです。

ある大手の人事制度では、たまたま新入社員の時に、社員の意思と関係なく鉄鋼事業に配属されると、その事業部の中で出世や転勤を繰り返し、能力が高い人材は課長、部長と出世します。従って、事業部のことは理解していますが、経営や会社全体のことを理解する機会や経験も無く役員や本部側の人間になる頃には40代後半、50代と年齢を重ねます。

入社して30年もどっぷり1つの事業部の極めて狭い世界で行った判断や取り組みが全てだと脳にインプットされていますから、その歳になって企業戦略、全体戦略といってもシナプスが活性化することも考えにくいのです。そうなると当然、全社最適よりも自分の出身事業部の繁栄を無意識に考えていきます。従って他の事業部よりも自分の部隊の関心が更に高まるのです。

極端な話、企業全体の経営活動を見る人間であっても、心の何処かでは自分たちの事業部を中心に考える。だから隣の事業部が成長して将来、その事業部から社長が輩出されることだけは阻止せねば。的な昼ドラマみたいな発想が現在進行形でバリバリ行われていくのです。まさに事業部同士の意味のない主導権争いです。

日本市場の多くは成熟か衰退です。従って、30年前に発足した事業部制にはかなりの限界があります。しかし、そのベースを変えずに時間が止まったかのような経営マネジメントを行っています。少なくとも、今後の日本の品質を考えた場合、素材メーカーや生産財メーカーは制度そのものの再設計とQCとQAという両輪の上市ルールを持つなどしなければ、今後も同じような問題がしばらく出てくるのでは無いでしょうか。



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