行動計画の考え方

2017年5月24日 水曜日

早嶋です。

ここ数ヶ月、ある業種のマネジメント50名以上と複数回、面談する機会がありました。目的は、そのマネジメントが管理している複数店舗の販売計画の確度を上げ達成することです。1回の面談時間は20分程度と短いのですが、事前に計画を提出頂き、それにコメントをしながら複数回繰り返すという流れで、随分とブラッシュアップして頂きました。更に、面談の効率を高くするために50名を3チームに分けて研修を行い、進行中の計画に対して達成部分と未達成部分をプレゼン、都度その理由と今後のリカバリに対して皆で考え、各自持ち帰って修正の繰り返しでした。

マネジメントには色々と特徴があります。

①自分の考えを整理できる人。それを他者に伝えることが出来る人。
②自分の考えを整理できる人。それを他者に伝えることが出来ない人。
③自分の考えを整理出来ない人。しかし他者に伝えることが出来る人。
④自分の考えを整理出来ない人。そして他者に伝えることが出来ない人。

①が当然だと思うかもしれませんが、これが正しく行えていると感じたのは全体の2割程度で、残りの6割はなんとなく整理して、なんとなく伝えている方がほとんどでした、つまり分類的には②か③です。そして2割の方は④の分類に入っていると思います。

計画策定の中では「自分の考えを整理する」必要があります。流れとしては、複数店舗マネジメントしている中から1つの店舗を抽出してもらい、その店舗の1年間の行動計画を書いてもらいました。理由は、全店舗の戦略をマネジメントとして達成できるレベルに落とし込むには、少しミクロになりますが店舗レベルの詳細を理解頂きたかったからです。

これらを行うためには、
1)自分たちがマネジメントしている複数店舗の合計をどうしたいか、それらをどのような戦略で導くのかという大枠、それらを実現するために各店舗ごとにどうするという細分化の発想と詳細の考えの双方が必要になります。

2)また、行動計画を作成する場合は、売上や粗利のような結果目標だけではなく、その売上や粗利を商品(製品・サービス)毎に因数分解できる、或いは曜日や時間帯毎、担当スタッフや人員毎、その他計画を練り上げるために分解することが重要です。

3)更に、店舗を取り巻く環境や競合店の情報、自店舗の施設や人員構成やその特徴を理解していることが重要です。これを無視して計画すると数字だけは正しいのですが、同考えても始めから無理だろう。的な計画になってしまいます。意味がありません。

4))そして自店舗が達成すべき結果指標と現在の店舗の実際の数字にどのくらいのギャップがあるのかを把握する。このギャップは2)で分解したように、埋めるためにはどのくらいの量をこなさなければならないかを明確に定量的に示しておくのです。

ここまでができれば、行動計画の青写真を作るためのベースが整います。理解の中に3)が必要な要素は、その店舗が過去5年間の取組で成績が上がっているのか、下がっているのか、変わらないのかを知り、業界全体でどのような傾向があるのかを知ります。もし、業界の平均以上に成績にブレがある場合、その店舗か、或いはその店舗を取り巻く独自の環境によってかのいずれかに原因があります。この要因を加味して成績がブレるからです。従って、過去の数字を単に並べていくのではなく、将来の計画に対しても修正や多めに何か取組を追加するなど検討しなければいけません。

行動計画の落とし込みには、上記の目標と現状のギャップを把握する力に加えて、そのギャップを埋めるためには、どのような行動を取る必要があるかを理解していることが大切です。マネジメントによっては、「売上いくらと粗利いくらを達成しよ!」と一方的に言って満足する人もいます。部下に指示命令することがマネジメントだと思っている無能です。しかしそのように言って達成する環境であれば、そもそもマネジメントは不要です。確かに20年も昔は、市場が成長していたのでそのようなスタイルも良かったかもしれません。が今は不適切です。従って「達成するためには何をしなければならないか?」を常に考える必要があるのです。

そのための思考法に便利なツールがプロセスです。例えば、売上を分解して、AとBとCの商品によって達成せるとしましょう。売上100に対して、Aは40、Bは30、Cは30と分解できたとします。すると次は、それぞれのA、B、Cを達成させるための取組を考えて行きます。この作業は、考え方をマネジメントが理解して、実際のやり取りは現場と一緒になって作り上げることが効果的です。

例えば、Aを1つ売るためには、見積もりを提出する必要がある。見積もりを提出するためにはサンプルを配布する必要がある。そのためには来店しかたに告知をする必要がある等々、Aを売るために結果、これまで行った行動を洗いざらい言語化していきます。そして、幾つかの仮説をもって、それらを複数のプロセスに落としていきます。ここでは単純に以下のように仮定してみましょう。

来店⇒告知⇒サンプル配布⇒見積もり⇒成約

という流れになります。このような発想を1つのプロセスだけではなく複数のアプローチで分解して、最も効率的な行動を特定することが大切です。その後、それらを行動目標に設定するためには、それぞれの行動間の確率を把握していきます。

例えば、来店が10人きていて該当者が半分くらいだから今は告知は5割り程度のヒット率だな。告知10人に対してサンプル配布まで出来ているのは3割くらいだ。サンプル配布から見積もりは4割くらい。見積もりから成約は8割り程度だ。というように現場の主要な売上に対して、どのようなメカニズムで売れるのかを理解する、或いは現場から聞き出して言語化することが大切です。

もちろん、この時点でほとんどの店舗がデータ化できていないという壁にぶち当たります。その際は、そのような考え方を導入しながらはじめは当てずっぽうの確率を考え、行動を逆算していきます。そして、実際に1週間から1ヶ月程度実施して、行動を修正する、あるいはプロセスを修正します。ここでは、データが既にあったこと前提としています。

プロセスと行動間の確率が見えると、それらを基に、各通過目標でどの程度の量を実施すると良いかがみえてきます。

来店⇒(50%)⇒告知⇒(30%)⇒サンプル配布⇒(40%)⇒見積もり⇒(80%)⇒成約

Aの売上を40獲得するには、4×10件=40より成約10件が必要。
成約10件を獲得するには、10/80%=13件の見積もりが必要。
13件の見積もりを獲得するには、13/40%=33件のサンプル配布が必要。
33件のサンプル配布を獲得するには、33/30%=110件の告知が必要。
110件の告知を獲得するには、110/50%=220件の来店が必要。

というように売上40を獲得するための結果指標とその数値が特定できます。店舗や小さな部隊をマネジメントするためには、数字や粗利の目標、つまり結果目標だけを伝えて達成する人も稀にいますが、殆どが意味を成しません。そこで、上記のようにその売上や粗利を達成するためには、どのような行動が必要なのかを整理して結果を達成させるための通過目標やそのための行動量を示さなければ先ずは机上でも達成することは難しいでしょう。

更に続きます。上記のように全ての売上や粗利を幾つかに因数分解して、それぞれに結果目標と通過、行動を見出した後に、
1)そもそも、その行動量を取り組む資源はあるのか?
2)そもそも、その行動量を確保する市場やポテンシャルはあるのか?
を考える必要があります。もし、1)であれば、自社の資源のリソースをどのように調整するか、あるいは、プロセス間の確率を上げて上流の取り組む量を減らすことを考えます。もし、2)であれば既存の取組だけでは目標の達成は不可能ですから新たな市場や商売を探すしか他に方法はありません。

というように少なくとも頭の中では、これだと達成するよね。というレベルにまで分解して、行動までを示すことが行動計画の基本なのです。マネジメントはこれをベースに、毎月、或いは毎週、そのチームの行動を管理して、確実に達成するようにマネジメントする仕事なのです。

上記のような考え方の塾は、事業実践塾でもみっちりと行っています。



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