M&Aが失敗する3つの落とし穴

2016年11月11日 金曜日

早嶋です。

M&Aの成功の確立は5%程度から30%程度と提唱する識者が多い。いずれの見解の理由を見てもデータの取り方や議論の仕方が同じ土台ではないのでどっちが正しいという見解はあまり意味がない。ただし、これらの数字に対して、そもそも論として何故5割よりも低い結果になるかについては、凡そ3つのポイントがある。このポイントを理解することでM&Aを戦略の一手として認識し活用する意味を考える一助になるとおもう。それは、売買価格の特性上の失敗、そもそもの戦略の不備、M&A終了後の統合作業だ。

まず、売買価格についてだが、売却企業が自社に価値をつけて売却する場合、結果的には合理的な価値や市場価値の3割前後のプレミアムがついている。従って、金銭的な価値で判断をすると、その時間軸においては失敗になる。100の価値を130で買っているからだ。

もちろん価格を決定する際には様々なプロセスを踏む。基本合意までには大量のドキュメントをベースに事業の評価やあらゆる局面からリスクを洗い出す。そして基本合意後は買収前調査を行い、更に事前に文章を中心に調べた内容に対しての裏を取り契約内容を詰めると共に買収するための条件を価格を含めて検討する。

価格の付け方も複数ある。バランスシートの資産の価値をベースに弾く方法、同様の事業を行う企業の時価総額を参考に弾く方法、将来のキャッシュフローを予測してそれを現在価値に割引く方法。過去の収益を参考にしてのれん代を弾く方法等々だ。ただ、どれもファイナンス仮説の基に成り立っていてこれが絶対的な解というのがない。従って相場観というものが取引の性質上大切になり結局は相対で合意した価格が正確になるのだ。ポイントとしては、その価格は通常の価格よりもどうしても高くなる傾向があるということだ。

2つ目のそもそもの戦略について。企業でM&Aを戦略の一手として活用している企業は戦略を立てる部隊とM&A部隊は同じ顔を持っている。企業の方向性に応じて自分たちで行うか、資本を入れて実現するかの手段の違いだからだ。従って、銀行から持ち込まれた案件に対してもいきなる深掘りして案件の精査することは無い。戦略の方向性からずれていればノンネームの時点で断り欲を出さない。

ただ実際は、そのような企業は少なく、まだまだ多くの企業はM&Aを手段では無く目的と捉えているところが多い。特に買手であまりM&Aの経験が少ない企業は、売手のアドバイザーの話を鵜呑みにしてすぐに夢を見てしまう。ビジネスに美味しい話はなく、その案件を評価するのは結局とのところ売手ではなく買手なのだ。従って他の評価に関係なく自分たちの戦略を軸に判断するのが懸命だ。

最後は、M&Aをゴールとして位置づけてはいけないことだ。当たり前だが、売却企業と買収企業では時系列がことなる。売却企業にとっては確かに事業を精算して終焉に近いかもしれない。しかし買収側は、それはスタート地点にすぎない。従って本来は、M&Aを検討して基本合意を交わしす前後くらいから、その企業を資本家に入れた後の統合シナリオを検討して早く事業を自分の参加に取り入れて行かなければならない。

買った企業が勝手に動くと思ってはいけない。旧経営陣がいなくなった後、買収した組織のマネジメントや受け入れ企業との統合を誰がどのような時間軸で行うのかは、全て売却側に意思が無ければ動くことはない。

上記の3つを念頭に置き、当たり前に成功している会社は、プレミアムの意味を理解して、戦略がそもそもあり、M&A後のPMIに対しても手を抜かいない。一方、どれが1つでも抜けている企業はそもそも成功の判断基軸が無いのだからM&Aを考えた時点で失敗とも言える。



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