「何かを知ってはいけないことを知ること」的な処世術って。

2016年5月10日 火曜日

早嶋です。

大企業の特徴として、1)自社中心の思想、2)競合を過度に意識した取組、3)短期的なインセンティブを重視というのがある。そしてその根底には大企業故に無知の知を敢えて行使して自分のポジションを守るという政治的な動きが背景にあるのだと推測します。

1)自社中心の思想
例えば三菱自動車です。「誰も燃費なんて気にしていない」的な発言が経営層から挙がっています。企業が大きくなり組織が大きくなると経営陣から顧客までの距離が遠ざかり、何か違った勘違いを起こすのでしょう。そしてトップがそうであれば、意図的に自分たちも知らない風潮を作ってしまい結果的に組織的に見て見ぬふりを続けてしまう。誰も王様は裸だ的なな発言が出来なくなるのです。本来は顧客中心の企業がいつしか肥大化して自分の立場を守る取組に無駄な汗を流してしまいます。

2)競合を過度に意識した取組
自社のあるべき姿がいつしかなくなり、競合を意識した過度なインセンティブが経営を動かし始めると歯車が狂います。フォルクスワーゲンはトヨタのプリウスをベンチマークにして、過度なプレッシャーをかけたのでしょう。三菱自動車も軽自動車でのポジションを少しでも上にすべく、トップクラスの燃費水準にフォーカスしました。しかしその達成は誤った計測方法、不正という解決方法で実行してしまいます。はじめは悪気があったのでしょうが、いつしか自社中心になり、悪いという心もなくなったのではと思わざるをえない、というのが報道を聴く限りの感想です。自社のポジションを愚直に推進しているスバルやマツダとは対極です。

3)短期的なインセンティブを重視
過度に株価や株主にフォーカスを当てると四半期ごとの短いスパンでの数字を追わざるを得ない、結果本来の姿を見過ごしてしまう。本来は長期的な取組により株価が高くなり企業価値が増大するのですが、見方を誤り短期的なインセンティブを追い求めていく。組織が大きくなると縦割りになり、各部門の仕事が細分化され自分が組織の中でどのような役割かも見えなくなります。そんな中でトップは常に数字に追われ、それを達成させるために下層部にも同様に数字のプレッシャーを与えます。東芝のPC部門に始まった会計の不正も同じで過度なプレッシャーが真っ当な判断をさせなくなったのだと思います。

そして重要なことは、これらの3つは決して他人事ではないということです。3つの項目に共通する部分が「知っているのに、或いは知っていただろうに組織の内部から声を発しなかった」という、「意図的な無知」を散見できるところです。

そもそも大企業に属してしまうと小さな企業や成長を遂げているベンチャーと比較して自分がいまいるポジションにフォーカスしてしまい独創性や変化に対してのインセンティブが極端になくなります。結果的に断片的な知識や過去の常識から抜け出せなくなる。

本質は組織の肥大化によって組織が硬直化、かつ官僚化してしまうことにあると思います。「無知は力なり」。本来は、「知識は力なり」なのですが意図的な無知を得ることで保身が続くと勘違いしてしまうのです。

「何かを知ってはいけないことを知ること」、これが処世術となる。なんだか虚しい。



コメントをどうぞ

CAPTCHA