三菱自動車お前もか!

2016年4月26日 火曜日

早嶋です。

三菱自動車お前もか的なニュースですね。このまま潰れる。それに対して、他社が資本を入れて救うというシナリオになるでしょうね。今回は三菱グループは流石に見放すでしょう、というかその余裕はないでしょうね。

問題は、「eKワゴン」「eKスペース」などの4車種で燃費不正を行い、合計で62万5000台に及ぶ車が燃費試験のデータで不正行為を行っていました。しかもそれが日産の指摘で発覚というもの(※1)。この車は同社が販売している車の6割を占めます。つまり大多数の車は嘘の燃費ということです。

三菱が今回行っていた不正は、瞬間風速的な取組ではなく、1991年から堂々と行っていたことが発覚。三菱自動車の燃費試験不正行為にかかる国道交通相への報告(※2)を読むと「eKワゴン、デイズに設定されている4つの類別のうち燃費訴求車の開発において目標燃費が26.4km/lが社内会議で29.2km/lにまで引き上げられ不正を行った旨が記されています。」が全文の後半には、国が定めた試験法を無視して1991年から三菱独自の方法で試験を行っているとあります。

そもそも三菱自動車は2000年、2004年にもリコール隠しが発生して利用者の信頼を裏切った前科持ち。当時、三菱グループ全体の業績に影響を与えた上で、それでも三菱グループを中心に強力な支援がなされ生き延びた経緯があります。

2000年に発覚したリコール隠蔽行為は、1997年から23年間にわたり行われました。乗用車約45万台とトラック約5万台の部品不具合のクレームを外部に公表しないという隠蔽です。クレーム情報を社内に留め、ユーザーに直接連絡を取り不具合部品を回収・修理する行為、いわゆる闇リコールを行っていました。この穴埋めは、一部の経営人の入れ替えとダイムラー・クライスラーからの人材を迎えての再建でした。

2002年は三菱自動車から分社化した三菱ふそうの大型車のタイアが脱落事故が発生。その事故がキッカケにトラックなど大型車の構造上の欠陥が表にでて、それにかかわるリコール隠しが表に出ています。ダイムラー・クライスラーはこの事件を受け同社の財政支援を打ち切り経営陣も引き上げ、これら一連の事件に対して同社の経営陣の一部は起訴されています。

そして今回の燃費の不正は日産からの指摘を受けて明らかになっています。つまり、3度目の不正も結局は体質が変わっていなかった。2000年当時に綺麗に筒抜けにして抜本的に改善したのではなく、あくまでも見つかった部分のみ、ばれた部分のみを改善したかのように見せ続けていたというような始末です。ありえないですね。

こうなると、一企業の問題ではなく、日本企業の恥でもあり、何らかの影響でネガティブなイメージをグローバルに与えていることにもなると思います。

現在、三菱自動車の時価総額は不正発覚前の6割り程度まで落ちています。約1兆円あったのが4000億円程度まで下がっています(※3)。更に日産は三菱自動車との協業関係を見直しに入ります。日産としてもこれ以上三菱と関係を持てば自社のイメージダウンにつながりますので確実に自社生産に切り替えるか他の代替オプションを探すでしょう。いずれにせよ2014年度の国内生産約65万台のうち、3割弱は日産向けの軽自動車なので、これが無くなれば今の経営は確実に成り立たないでしょう(※4)。

では、2002年のダイムラー・クライスラーが支援を打ち切った後のように三菱御三家である三菱重工業、東京三菱銀行、三菱商事が中心となって三菱自動車に対して救済の手を出すでしょうか?これも自分たちがそれどころではないのであり得ないと思います。

まず、三菱重工は2016年3月期に508億の特損を新たに計上しています(※5)。一連の大型客船の特損で、これも初めてではなく累計で2375億円です。結果的に2016年は前期比の40%減の660億円の連結利益という成績になります。更に大型客船の2番船の引き渡しの目処も予定をずれ込む予想が既に出ています。また旋風を起こしているMRJですが度重なる納期の遅れで黒字化が見えていません。また、報道されているほどの他社との違いも無くビジネス的には不安定です。加えて米国での原子力発電所の事故で約9300億円の損害賠償を求められています。三菱自動車には20%程度の出資を行っているので連結で経営状況は更に不安定になります。

次に、三菱商事です。これまでは総合商社の2トップとして堂々たる成績でしたが世界市場を襲った資源デフレに直撃し半端ないダメージを受けています(※6)。2016年3月期の最終損益は歴史始まって以来の初の赤字で1500億円のマイナスです。背景は、4300億円の減損損失を計上していることです。チリで鉱山と製錬所を運営するAAS社に足しての出資を継続して2800億、オーストラリアのLNG開発計画に伴う見直しで400億の減損、おなじくオーストラリアでの鉄鉱石事業の減損300億、南アフリカのフェロクロム事業の現存が200億。AAS社に対しての出資継続は今後のマクロ環境を考えると成果が出たとしても2、3年以降でしょう。ってことで総合的に資源ビジネスはしばらく冬という状況。

と言うことで、まっとうな会社に対しての支援であれば理解出来ますが、いくらグループと言えでも、これだけ不正を正しながら、実はまだまだありますよ!的な企業には正直うんざりでしょうね。かつ自社の経営状況が絶好調であれば考えたかもしれませんが、上記のような経営環境、待ったがかかるでしょうね。ということで三菱自動車はグループからの支援を得られずじまい。

となると潰れるか?です。ここは否だと思います。三菱自動車を欲しい企業はいくつか考えられます。方向性としては同業者か異業種。同業者であっても有名企業はまずNGでしょうね。これだけの隠蔽を繰り返している企業の体質は変えられない、文化が合わないと判断すると思います。一方、中国自動車メーカーなどは今後の欧州規制などに耐える技術を自社で確保するのが難しいと判断して、三菱自動車の技術を欲しているところもあるでしょう。また、自国の通過を兎に角外に出したいというインセンティブから1兆円だったら手は出ないでしょうが数千億であれば検討すると思います。異業種であれば、今後車に参入したいテスラやGoogle。彼らからすると60万台の生産の仕組みを数千億円で手に入るのであれば資本を入れても良いと判断するかもしれません。その場合は、ある程度のセリになって5000億よりも高い値段のM&Aになるのではと推測します。

※1:http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160425-OYT1T50115.html
※2:https://thepage.jp/detail/20160426-00000009-wordleaf
※3:http://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=7211.T&d=3m
※4:http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160425-OYT1T50115.html
※5:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00086860V20C16A4TI1000/
※6:http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48296



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