出口戦略を考える

2015年7月24日 金曜日

堀場製作所の創業者が亡くなられた。学生ベンチャーの草分け的な存在で、同じ時期に志を共にした方々や時代は違えど堀場氏の考え方に共感した方々は多かったと思います。

印象的なことは、継承に対しての考え方です。「人生の能力・知力・経験・体力は全部を掛け合わせて40代がピークであり、50代になるとそれが落ちてきてしまう。そこで50歳になったら経営者を退き、後継者(現役)は40代がいい」という持論をお持ちで、実際に1978年、53歳の若さで代表取締役社長を辞し一線を退いています。

日本の経営者の平均年齢は61歳。承継するタイミングはその7、8年後の68歳前後が平均値です。どう考えても高齢ですよね。中には高齢であっても実力を発揮し続ける方もいます。しかし、あまりにも長く会社に居続けると、若い方のチャンスを潰すことも考えられます。むしろ、堀場さんのように一線を離れて若い人に任せ、別の人生を歩むという選択肢も素敵だと思います。

現在、およそ400万社程度ある日本の企業の5%程度、およそ20万社が毎年廃業しています(ちなみに5%の20万社程度が毎年生まれている)。そのうちの実に3割の7万社程度が後継者不在による廃業です。これは不思議な現象だと私は思います。合理的に考えて会社と自分の寿命は会社が長いはずです。であれば社長業を始めた頃から引退して誰に継承させるのか、どのような形で事業を渡すのかを考えることが当たり前だからです。

ですが、実際の多くの経営者は自分の引退のことどころか、どのように会社を継承していくかを多く考えていません。従って60過ぎてから急に承継のことを考え始めるのです。

オプションは4つしかありません。
1)親族内に承継する
2)親族外に承継する
 1、社員
 2、社外
3)清算

1)親族内に承継した場合も、基本的に経営者がいなくなれば、経営は承継した人が行う必要があります。ファミリーに経営権をもたせた場合、ファミリーの内紛も考慮する必要があります。当然、これには数年以上の準備期間を必要とします。

2)親族外に継承する場合は、社員と社外という選択肢があります。もし社員に継承を考えている場合は、候補者の教育と同時に株式のことを考える必要があります。また、社外で考えている場合は、経営権をどうするかという問題と、どのようなスケジュールや手続きで社外に継承するかのシナリオを考える必要があります。これも教育や資金がからむ話なので1年の準備ではとてもたりません。

3)清算、これも立派な選択肢ですが、起業するよりも数倍のエネルギーを要します。仮に会社を清算する場合はどのような状態になるのか、ある程度準備や状況を把握して置かなければなりません。

というように、出口のこと、先のことを常に考えて一歩を踏み出すのが経営です。しかし、企業のボリュームゾーンである中小企業は、そう先のことを考えていないのが事実です。大企業では社長を退いても新しく役職を作って、いつまでも院制を敷きます。これでは有能な社員や時期の経営層のモチベーションを低下させるのではないでしょうか。

そう考えると堀場さんの持論とそれを実行した潔さ、そして実行しても企業が成長するようにした準備や努力は大変素晴らしいものだと思います。



コメントをどうぞ

CAPTCHA