ブルネイ

2014年9月25日 木曜日

2014年9月22日
文責:早嶋聡史

【ブルネイ】
ブルネイ・ダルサラームが正式名称。殆どを石油とガスで成り立っているアジアでもリッチな国。大きさは三重県くらいとどの本にもあるが、福岡と大分の間位の大きさと理解したほうが九州の人にはピンとくる。しかし、小さい国土の大半は未開拓のジャングルであり、栄えている都市部は空港と首都がある西側の3地区程度でにすぎない。人口は35万人から40万人と読む本、聞く人によって誤差がある。約7割がマレー系で中華系が1割り程度、混血も多數いてブルネイという国ができている。

ブルネイは絶対君主の国で、ボルキア国王が軍、首相、国防大臣、財務大臣等を兼務。ブルネイ国は石油とガスで潤う国で、王様な常に世界の金持ちランキングに名前が乗っている。ビル・ゲイツが現れる前は世界一の富豪としてポジションをキープしている時期もあった。

【庶民の給与・生活】
一般庶民の給与は公務員で4万円から10万円程度。多くのブルネイ人の給与所得は10万円以下だそうだ。しかし、何故か局長クラスになると公務員であっても月給が数百万というクラスもいるみようだ。庶民派、お金を貯蓄する概念が弱いのか、給料をもらうと月の半分くらいでパッと使ってしまし、後半はほそぼそと暮らしていると、現地の人が数人言っていた。繁華街では偽物商品も結構多數あり、取締などは皆無。車や家電の購買は超低金利の10年ローンなどで購入し月々の支払は少ないという。

庶民が手にする現金は少ない一方で、病気になった場合は国が保証し、重病の場合などはシンガポールでの治療も保障されている。この場合、旅費に加えて看病中の生活費を個人とその家族まで支給するという。また。学費などもかからず、シンガポールの大学に合格すると学費と生活費がブルネイ政府から保障されるという手厚さ。

車の登録が25万台から30万台あるので、ほぼ国民一人に1台所有の計算。街を走る車の殆どが日本車。ガソリンの価格は破格でハイオクでも40円程度。経由はその6割程度。水やジュースよりもはるかに安い。


【ギャップと実際】
IMFの統計を見る限り、ブルネイの一人あたりのGDPは4万ドルを超えているので日本と変わらないと読み取れる。しかも国の経済は石油と天然ガスの輸出により潤っているため、政府が医療、社会福祉を無償で提供し、さらに個人に対しての所得税、住民税などはかせられない。

庶民の生活もさぞ豪盛だろうと思い街に出てみると、マレーシアやインドネシアの田舎町そのもの。道や建物のインフラは整っているが皆が金持ちである雰囲気はなく、至って普通の人々が普通の生活を過ごしている。大理石の建物にベントレーとかフェラーリとかに乗った生活を皆がしているふうな印象を持っていったが全く違った。

街を歩いている人や村を歩いている人に声をかけて聞くと、全て国が面倒を見てくれるけど、給料は高くないよと。実際、街に流れる時間はのんびりで、競争をする概念が垣間見れない。 長い間この生活をしていて、不自由が無いのでカイゼンするとか、イノベーティブなことをおこなうとか、より良くするという発想は無いのでしょう。

【オイル&ガス】
ブルネイには3箇所の電力発電所がある。天然ガスを使って直接ガスタービンを回して発電している。総合電力発電の仕事は丸紅が請負ってGEと一緒になって開発している。電力事情は更に安定する模様。

天然ガスは主に日本に輸出していて、そのユーザは東京電力、東京ガス、大阪ガス。ブルネイLNGは政府が50%、シェルと三菱が25%の出資で立ちあげている。

【宗教】
イスラム教が国の宗教。お祈りの時間になると、道路が普通に駐車場のようになり、皆モスクでお祈りをしている。その時間はいたるところから経典やイスラム独特の音が流れ、お祈りの雰囲気を味わうことができる。

イスラム教徒いうことで、左手はdirtyという位置づけ。握手するときや、何かを渡す場合は右手を使うことが必要。また、タバコやお酒や娯楽を求めることは不可能。高級ホテルであってもお酒を出すところは無い。当然、ブルネイ国内でお酒やタバコを入手することはできない。一方、外国人が入国時にお酒やたばこを持参することは許されていて、入国時に幾つか簡単な手続きをするとよい。自分で持参したお酒を自分だけが飲むのであれば問題ない。但し、公の場での飲酒は認められていない。

ちなみに、現地の人、数人に夜は何をしているのかと訪ねたところ、皆口をそろえて暇だと。多くはネットかコーヒーを飲んで過ごしているという。様々な文化にまみれている我々にとって見ると、この生活がずっと続くというのは理解できないだろう。ネットで何をしてるかといえば、最近はSNSで友達とチャットしているという。

イスラム世界のネットワークは広く、噂が瞬時に広がると聞いたことがある。この状況では確かに、その広がるスピードは昔のそれと比較して、かなり早く広範囲になったのではないかと推測した。

【食文化】
ブルネイの食べ物というのが無い。マレーシア、インドネシア、シンガポール、タイなどの影響が強い。川や海に面しているが魚が豊富で安いわけでは無い。物価が日本と余り変わらないせいもあるが、食事を楽しむという国では無い。一応、ガイドブックにはサゴヤシを使った料理が紹介されていたが、日常的に食べているのを見たり、レストラン等で進めるお店も殆ど無い。

労働面を含め、フィリピンとの関係が深いせいか、フードコードには常にジョリビーがある。現地のローカルフードやエスニック料理には行列がなくとも、ジョリビーは人が結構群がっている。イスラム衣装を身につけている家族も、他の食事よりもジョリビーをありがたがって食べている印象。

国の豊かさの割にはおいしいレストランが皆無。繁華街にある数えるくらいのレストランも、洗練されているわけではなく食事を楽しむという風習事態がないと思うほど乏しい。概して食事は屋台やフードコートなど、比較的安価な店が賑わっている気がする。食材はけして悪いわけではないので、もっと調理を工夫すると美味しくなるのにと思ったが、その気持がそもそも無いのでしょう。

【観光誘致】
将来のガスや石油の枯渇に備えて、国をあげて観光誘致をしているという情報があるが、実際はあまり危機意識がないため、スローガンに終わっている印象。観光は、空港から車で20分の立地にある首都のモスクとちょっとした町並み、水上タクシーと水上にある集落を見る程度で、後は熱帯雨林にいる生き物観察程度。首都と言っても歩いて30分とか1時間もあれば十分に1周できるサイズ。

国土の7割以上が熱帯雨林なので、エコツアーと称した観光を売っているが、空のアクセスがそもそも悪いし現地でのアクセスも非常に悪い。例えば、国の中でタクシーが40台程度しかなく、空港以外は事前に予約をしなければ捕まらない。半日程度のエコツアーがあるというが、どこでそもそもブッキングするのか、現地にいても中々情報が入らない。

エコツアーに次いでブルネイの一大観光施設となっているJerudong Park、いわゆるテーマパークがあるようだ。こちらは国王の47歳の誕生日にちなんで建設されている。首都のBandar Seri Begawanから車で30分位の立地。こちらのテーマパークは東京ディズニーランドの開発に従事したエンジニアが手がけているという。入園料は1ドル、ライドパスは15ドル。

首都のBandar Seri Begawanにあるモスクは現在の29代国王の即位25周年にあわせて約8年をかけて建設されている。設計はなぜか韓国の現代建築家ということで、工事は全てイスラム教徒がおこなっている。モスクの中は男女2つの礼拝所があり6000人が同時に礼拝できる規模。異教徒も礼拝時以外は見学ができて、内部の写真撮影は禁止されている。Bandar Seri Begawanのシンボル的な建物で夜は緑色の光を使ってライトアップされている。

ブルネイは、イスラム世界のリゾートを目指しているようだ。であれば、ウォーターフロントの町並みをもっと開発する。熱帯の雰囲気を存分に味合える空間を整備する。など、工夫をしたほうが良いと思うが、実際の取組み度合いが見えにくい。かりに、イスラム以外の観光客が来ても、お酒、タバコや他の娯楽施設が全くないので1日もいたら飽きてしまうと思う。仮にレストランに最高の食事があってもお酒がなければ進まないという方は多いだろうから。

そういう意味で、完全にイスラムのポジションを確立することができれば、近隣のイスラム圏を呼びこむことはできると思う。が、やはり本気度を感じない。豊かな国は、将来に備えると言っても実感がないのだろう。

【ゴージャスなホテル】
The Wmpireという超ゴージャスなホテルがある。Bandar Seri Begawanの海に面した立地で空港から20分程度の距離。星の数は自称7つ。ロビーを出ると海に面した吹き抜けが広がる。総大理石で一体いくらかけて作ったのだろうと思うほど豪華な内装とインテリア。施設には複数のプールや工夫を凝らしたプライベートビーチとレストランとゴルフ場があり、ザ・リゾートという感じ。

壁や床の大理石の多くはイタリアの職人による仕上げでモザイクなども圧巻。が、ここもイスラム圏でありアルコールは一切提供されない。最高の部屋で最高の食事をとっても、アルコールがなければ海外のセレブたちは寄りたがらないと思う。

このホテル、前大統領であるビルクリントンも宿泊したという。彼が利用した部屋は部屋の中にプールがあり、ジャクジーがありとスイートの域を超えている。ちなみにレートは一泊22,000Bドルなので200万円程度。スイートで20万円くらいからで、最もリーゾナブルな部屋でもB450ドル程度。

【世界一の水上住宅】
water village。日本語ではなんと表現するかわからないので水上住宅と記す。約3万人が生活していて、water villageの規模としては世界最大。実物を見る前は浮草の上にでも住んでいるかと思ったが、実際は大きく異る。川にコンクリートの杭を何本も打ち、それに板をたわして家を建てている。水上に普通の家が建っているのだ。電気、水道、電話などのインフラは整ってあり、それぞれの家は木で出来た橋のようなボードウォークのようなモノでつながっている。川はボートで移動するか、水上タクシーのようなボードがすぐに捕まり移動にも不自由はない。water villageには学校やモスクやガスステーションや病院まであるので、一つの街がそのまま川の上にあるという状況だ。

water villageは首都と隣合わせの川にあり、水上タクシーで5分、10分の時間でブルネイで最も栄えている街にいくことができる。考えて見たら最高の立地条件だ。

元々は漁師がwater villageを形成して住み始めたようだが、今の住民の多くはいわゆるサラリーマンで、水上タクシーを使ってBandar Seri Begawanに通勤している。また、彼らのほとんどは自家用車も保持していて、川の近くに普段は車を駐車している。政府は、water villageの住民に対して陸上で生活するようにすすめているが、誰も移動しないことを考えると、その生活が非常に心地が良いことがよく分かる。実際にwater villageの通路を歩いてみると、風通しがあり、熱帯のジャングルの中でも最も良い立地条件かもしれないと実感した。

ちなみにブルネイの地上にある平均的な住宅で50坪程度の敷地で新築価格が10万ブルネイドル程度。新たにwater villageに家を立てることは認められていないようだ。

【首都最大の繁華街ガドン地区】
Bandar Seri Begawanの中心地はオフィスビルが多く、夕方頃には急に人気がなくなる。一方、そこから車で10分くらい移動した所にガドン地区がある。ここがいわゆる首都最大の繁華街である。と言ってもホテルに隣接するモールが1つと、小さな繁華街が幾つかある程度。35万人の人口と言ってももう少し栄えていてもいいのにと思うくらい小さい街だ。モールの中は得に高級品があふれているわけではなく、ごく普通にあるモールで地下が食料品、1階から3階が衣料品やショップや電化製品などがあり、4Fがフードコートになっている。

【ビジネス】
ブルネイの電気代は家庭用と工業用で異なる。が、政府関係者の話ではブルネイ政府との交渉によって無料に近くなるという。ブルネイ政府は積極的に投資を行っており、交渉の中でブルネイに寄与するポイントを明らかにすると良い。

将来的な石油とガスの枯渇を考え、経済の多角化を進めている。領域は農業、海業、林業、エコ環境が最も投資されやすい分野。

ブルネイは製造業や加工業というビジネスは職人が小規模で行っているレベル。なのでブルネイ政府の援助を受けて進出すると間違いなく一人勝ちになる。一方で、人口規模が少ないので内需は見込めない。また、立地条件を考えると輸出コストはかさむ。工場の誘致には本気度は高いようで、既に政府が整備している工場団地が10以上はある。政府とのコネクションを作って、近隣に輸出するというモデルを考えれば、小規模であれば勝算はあるかもしれない。

日本とブルネイは2008年に日本ブルネイ経済連携協定(EPA)を発足して両国の貿易関係を深めている。主とする貿易は石油とガス。ブルネイに進出している主要な日系企業は三菱グループなど少数。94年までは直行便があったが、現在はシンガポール、香港、バンコク、クアラルンプール、マニラ、ホウチミン経由でしかいけない。

飲食やエステ等はブルネイのハラル認証がある。ここで実績をつくり他のハラル認証を取るとい組を行う。つまりプロモーション目的に進出するとせれば規模は小さいが、発展の可能性は考えられる。

【口座開設】
タックスフリー天国という理由からブルネイで口座を開設したい人は多い。手続きとして、仮に日本人がブルネイの銀行口座を開設するとしたら会社を設立する必要がある。外国人が個人口座を直接開設することは出来ない。

【会社設立】
会社設立は外国人でもかなり簡単。現地の手続きごとを自分たちのみで行うのは難しいが、タックスヘイブンでの法人を租税回避等の目的で開設する企業は多い。現在、1700から1800程度の海外の企業が設立されている。その内500社程度は、ヘッジファンドや信託会社。

首都のBandar Seri Begawanには会社設立から運用維持までのサポートを総合的に提供する会社が11程度ある。今回、訪問した会社はその中で3番目の規模。500程度のクライアントが世界中にいる。

会社設立を行う場合、既に上記のようなサービス提供会社が箱を用意しており、一人株主、一人役員の会社を直ぐにでも登記できる。その後、手続きを行い、銀行とのミーティングを終えて銀行口座を開設する。全てのパッケージをサービス会社に委託した場合、初年度のフィーが2000ドル程度、以後ランニング費として年間1600ドル。サービス会社のランニングには、登記上の住所やその他諸々の更新手続きが含まれている。銀行、保険、信託などを除けば、どのような仕事でもOKな定款を作ってくれ柔軟なビジエスが可能。もちろんモラルに反するビジネスは例外だが。

Bandar Seri Begawan地区で小さなレンタルオフィスを借りる家賃が安くとも3万円程度なので、ペーパーカンパニー、租税回避、他国からの受け会社設立目的であれば、サービス会社を通じて行った方が金銭的メリットも安全性も高い。自分たちでゼロから行う場合は、オフィスのレントフィーや諸手続きで年間のランニングは簡単に1600ドル以上になるはず。もちろん、サービス会社をとしての設立であれば、現地の従業員の雇用やディレクタークラスを実際に雇う必要もない。

ブルネイで会社を作りたいのであれば、上記のようなサービス会社とコンタクトを取り、状況を説明後手続きは、1)パスポート、2)現住所を示す公的な証明書、3)お金を準備して終了。今回の内容だけであれば、今後はSkypeなどで現地のサービス会社とミーティングを行い書類を揃え、その後3日から6日程度で会社設立の許可が降りると思う。最後は銀行口座を開設という流れ。

我々が開設できる口座は、ローカル銀行と国際銀行の2行。ローカル銀行の一番の預け主は国王であったり、一応ブルネイの中ではサービス窓口も豊富で、何かと便利なので、特別国際業務ばりばりでなければローカル銀行がお勧め。口座開設の最低貯金額もローカル銀行は50万円で済む。国際銀行は300万円以上を常に口座に入れて置かなければ、月々のメンテナンスコストを100ドル程度支払わなければならない。

会社開設後、上記のサービス会社と一緒に、銀行でミーティングを済ませ審査を受ける。その後3週間から6週間程度で銀行口座も開設される。断られることはほぼ無いという。



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