インドネシア(ジャカルタ)

2014年4月3日 木曜日

早嶋です。

本レポートは、2014年3月28日から30日の間にジャカルタ視察のレポート。現地で視察のとビジネスパーソン等との情報交換をベースに記述している。私見を多く盛り込んでいる。

【総括】
◯内需で30年程度伸びる。現在の子供が大人になるまで、彼ら彼女らに対してて提供する全てのビジネス。
◯インドネシアを起点に海外(インドネシア以外)にビジネス展開するのは地理的状況から見て、もう少し先になる。
◯渋滞問題は根本的な解決に最低でも5年から10年はかかる。最低でも現状維持、若しくはもっと悪くなる。物流については割り引いて考える必要あり。


【ジャカルタの渋滞】
話には聞いていたものの、到着直後にその洗礼を受けて酷さに笑いが出た。スカルノハッタ国際空港から中心地のホテルまで20km程度の距離。普段なら40分程度の時間を見ていれば十分に着く距離。しかし到着後タクシーに乗ってからホテルに着くまで2時間30分もかかる。金曜の夜、スコールという条件付きではあるが、日常的に渋滞が社会問題になっていることがよく理解できた。

定量的に車の量がどの程度多いのか調べてみた。大和総研が国交省の資料から作成している資料によると、
スカルノハッタ国際空港⇔ジャカルタ中心部 676
2010年の東名高速海老名JC付近平日   130
2010年の中央高速世田谷付近平日     93
2012年の名神高速大山先付近GW    146
(単位は1日の交通量で×1000台)
平日の東名高速、或いはGWの地方の高速の5倍近い車が動いていることになる。スカルノハッタ国際空港からジャカルタ中心部の高速はほとんどが2車線なので込む理由も明確。車が多すぎるいわゆるグリッドロック状態だ。

では何故に車が多いのか。インドネシアで作られている自動車のほとんどが国内で販売され、特に金持ちが多いジャカルタに車が集中するからだ。ちなみに2013年度の統計で約123万台、2012年度で約112万台だから車がこれからも増加することを考えるとこの渋滞は緩和するどころかひどくなるだろう。

これは明らかに政府の責任。2012年10月に首都圏投資促進特別地域構想の中で、ジャカルタへの通勤用の地下鉄や空港へのアクセル鉄道の敷設を含む大規模なインフラ開発計画があった。でその計画では2016年には一部開通だったが2012年12月時点で既に財政上の問題で頓挫。どうも実際はお金を政府筋で使い込んでいるとかいないとか。したがって、この渋滞が解消される日は政治が変わる必要がある。しかもその後、しっかりとした計画が出来たとしても5年10年のスパンが最低でもかかると推察できる。これは外資(インドネシア以外の国)がビジネスを行う際に流通が全く信用出来ないことを意味する。

そもそも東京都の人口と同等のジャカルタの皆が一斉に車をベースに移動をしたら、ただでさえ道路事情が悪いジャカルタで車がスムーズに走るわけが無い。従って渋滞のリスク、今後の物流の改善は外的要因として進出する企業は留意すべき。

【自動車】
ジャカルタを走る車はほとんどが日本社。トヨタ35%、ダイハツ16%、三菱15%、鈴木11%、日産6%、本田5%、いすゞ3%、日野3%、マツダ1%。実に95%が日本車だ。トヨタが気合を入れてインドネシアに進出している理由は、インドネシアで自動車を作ると、そのほとんどがインドネシア国内で売れるから。しかも年々自動車の販売数は伸びている。ちなみに自動二輪車も日本が検討している。本田50%、ヤマハ40%、鈴木6%、川崎1%。

【道の設計】
単純に車の台数が多いほか、道の設計も悪い。基本的な大通りは一方通行にしている。これは良いが、わずか歩いて5分の距離を車で行く場合は迂回して5km車で走らないといけない。などの設計がいたる箇所にある。従って、ただでも多い道がダダゴミになる。また、メインの通りから一本入った通りは急に車がなくなるなどの不思議な構造も多々見かける。立体交差を活用している道路も車が合流するところにボトルネックがあり、信号も無いので、常に車が混んでいる。

全体最適が苦手なのか、常に部分の改善しか行われないという印象。これはモールの設計もしかり。各モールには案内板はあるものの、入り口にちょこっと表示される程度で、迷ったときに頼りとなる情報がすくない。また施設に対してのエレベーターの数やエスカレーターの数が少ないことが多い。何となく渋滞が発生する仕組みを垣間見た気分になった。また、トイレも少ない。圧倒的に人間が押し寄せてくるのだから、その数に対応した最低限のルールや決まりがあっても良いと感じる。

【いたるところにモールが賑わう】
ポケベル⇒固定電話⇒スマフォ・ケータイという普及が新興国では一気にスマフォ。みたいな感じで、個店⇒商店が⇒モールという順序を中抜してジャカルタ市内の至るところに大規模モールが完備されている。滞在中に10箇所程度のモールを見学したが、どこのモールも若い人を中心に溢れており、積極的に消費する姿を目にすることができる。

ここはまだまだ完全に売り手市場。細かいことに対して気がつくようにには5年、10年はかかるだろう。従って店舗進出する企業にとっては追い風。日本では細かい規制、顧客からのクレームで、企業本位で行いたいことが大胆に出来ない場合が多い。が、こちらの国は消費欲に対しての供給がまだまだ足りていない。この状況であれば圧倒的に提供側が有利な立場になれる。しかもその状況はしばらく続く。

モールはいたろところにあるが、地域によってセグメントが確立されている。超富裕層向け、富裕層向け、中間層向け、中間層よりも下の層向け等々。当然そのコンセプトに応じて入っている店やフードコートやレストランの店が異なる。レストランやフードコートに対してはセグメントが異なると当然ながら味も異なる。

中級層以上を相手にしているモールはかなり日本食が人気。或いは日本をもじった商品を皆良く消費していた。日本っぽいイメージを表現するために、桜の造花、モミジの造花、鳥居、提灯のいづれかか、その組合せで店舗をディスプレイしている。勿論、そこには季節感は無いが、海外から見た日本というのがそこにある。ディスプレイやロゴにも感じやひらがなを取り入れたデザインが多く、日本語そのもの日本そのものに対してのあこがれがあることが分かる。

モールを歩いていて分かることが子供の数。どこのモールも上層階に子供が遊べる小さな遊園地のような施設を設けている。まさに昔の日本の百貨店で、そこに子供と家族が集まり、食事をして、百貨店を見て楽しむ。モール事態が滞在型で、時間をタップリと過ごして帰る作りになっている。ショップも子供用品が充実しており、週末には家族の笑顔がたえない素晴らしい空間になっている。

それからどこのモールにもメインとなるスペースには車か不動産の特設コーナーがあり、営業パーソンが対象となりそうな顧客に一所懸命セールストークしている。これからの成長を感じる。

何故か、ジャカルタではパスタの人気がなく、うどんに高い支持が集まっていた。ラーメンはどこでも王道。国や地域によって嗜好が変わるのはわかるが、現地を足で稼がないと、どこに何がフィットするかの感覚は身につかない。企業としては小さい規模で実験を繰り返してデータを取ることは重要だ。

【従順な国民性】
国民が非常に従順だ。モール等を中心に新しい文化が次々に入っていて、それを素直に受け入れている。中国をはじめとする他の国は、若干解釈が加わった受け入れだが、こちらはストレートに普及していく印象を受けた。

これは店員の態度もそうだ。オーナーやマネジャーから言われたことに対して素直に仕事をしている。考えずに行っているという言い方もあるが、他のアジアの国々よりも社員教育によってはサービスレベルを一気に向上できるとおもう。例えば、タクシーの運転手さんも、こちらの指示に対して素直に応じている。何やかんや言い訳をすることも全くない。

国民が非常に真面目で悪い人が少ない印象。一般的なスリや治安の悪さは当たり前にあるが、多くの人が真面目。タクシー、ホテルの受付、フロント、ドアマン、ショップ店員等々。通りすがりに道を聴いても分からないなりに何か懇切丁寧に伝えてくれる。

19歳の頃、はじめてバックパックを背負って訪れた国がインドネシアだった。その頃の国の印象とはガラリと違う。学生でお金を持っていなくても日本人ということでタカラれる。直ぐに騙される。そしてその行為に対して厳しく講義をすると、バツが悪そうにいなくなる。一方、フィリピンの心象は悪いことをしても悪いと思っていないというところ。この感覚は表現することが難しいが、社員やスタッフの教育次第でインドネシアはかなり伸びる印象。一方、フィリピンだとサービス業は難しい印象。

現在、多くのサービス業では従業員に対して一人一つの役割を与えている。極端な話、日食レストランのうどん屋さんでは麺を切るかかり、ゆでるかかり、ネギを載せるかかり、スープを注ぐ係と、多くの労働力を使ってビジネスを行っていた。今後は、ここも教育によって一人でいくつもの役割をこなすマルチ工が次々に生まれてくるだろう。

ちなみに漫画やアニメ、JKT48などのサブカルチャーもまさに従順。おたくは全世界共通のコンセプトにのっとり、その文化の浸透もあっぱれだ。JKT48の施設の前には、日本と同じニオイをもつ若者が心を踊らせながら待っている姿は、この国に対しての情報の普及、テーマの浸透の行いやすさを垣間見れる。これを見越してアキバから展開しているのであれば、あの人はあっぱれ、マーケターだ。

本屋にいけば漫画だらけ。価格を押させる工夫をしているのだろう、コミックが薄い。日本の半分から1/3程度の薄さに調整されている。日本の名前をそのまま取っているタイトルもあれば、すこし現地の雰囲気を加味しながらつけている漫画もあった。日本同様、書籍売り場の半分、あるいは1/3を漫画売り場がしめているところが多かった。この輸入コンテンツ、やはり強力な商品だとあらためて認識できた。

【ワンブロック、川の向こうはバラック小屋】
途上国では当たり前だろうが、通りを過ぎたとこ、ブロック先の地域、川の対岸。片方が先進的な建物や暮らしを観察できる一方で片方はバラック小屋、スラム街も珍しくない。車で移動していて子供が物乞いをする風景も多々遭遇する。

急激に経済が発展して中間所得層が増えていると言っても、底辺の人の生活環境は中々変化しない感じを受ける。戦後の日本もそうだったように、この問題は時間とともに解決されるだろう。

【内需型の経済発展】
ジャカルタは日本と同様に海に囲まれた島国。他のASEAN地区への移動も飛行機が中心。従って何かを運ぶためには飛行場や港からのアクセスは重要になる。しかし、上述したようにインフラの設計と慢性的な渋滞はコントロールすることができない。あらゆるビジネスでモノの移動が必要な場合、流通がはじめからボトルネックになるのだ。

とは言え、内需で2億を超える人口と、今後年齢を重ねていく若い人口がワンサカいる。20年以上は十分に内需だけでも経済が発展することは間違いない。


【健康ブーム】
モールには健康グッツを専門に販売するショップ。スポーツウェアを取り扱うショップ。それからフィットネスジムや少しカラダを動かす施設が賑わっている。週末になるとジャカルタの大通りでは、車の規制がなされ、正午までは自動車が通れなくなる。その代わりにその場所で、自転車やランニング、散歩を楽しむ市民の姿を多く観察できる。

なかでも自転車はかなりブームのようだ。健康志向に加えて、渋滞をすり抜ける移動手段としても一石二鳥。車種も低価格のものから本格的なロードバイクまで様々なものを取り扱う店をよく見かけた。これも急激にお金を得た人々がこぞって健康に価値を見出しているのでしょう。

【若者の政治参加】
住宅街やスラムの屋根、通りの壁などに頻繁に旗が立っているのを目撃した。赤の旗は緑や黄色。色とりどりの旗が地域によってことなっていることに気づく。タクシーの運転手さんに何かと聴いてみると政党の旗だとか。皆、自分たちが応援する政党を支持しているのだ。経済が伸びる中で年齢や収入に関係なく、選挙の票は1票と扱ってくれる。やはり自然と関心をもつのだろう。若者が政治に感心が強いが故に、政府も若い人に対しての政策を敷いていく。これは日本と対照的だとおもう。


【ジャカルタ基礎データ】
インドネシアの首都。高層ビルが次々に建設され、各種ショッピングモールは連日の買い物客で賑わう。一方で少し離れた地域では以前と電力供給が不足されたエリア、スラム街が続く。また、交通インフラが常に課題で日曜以外は常に渋滞が問題視される。詳細は外務省のWebを。

参照:外務省Web
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/data.html#section1



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