電子書籍と出版社

2012年10月4日 木曜日

早嶋です。

日本における電子書籍の市場規模は2011年で約630億円。その内訳はガラケー向けが480億、PC向けが37億、電子書籍端末やタブレットPC、スマフォ向けが112億です。全体のマーケットは2010年ni
約650億円と減少しているものの、電子書籍端末やタブレット、スマフォ向けは88億円も増加していることです。この傾向は2012年以降も続くでしょう。

現在、電子書籍のダウンロード数はアップルストアがダントツです。背景は、電子ブックリーダーの普及の遅れがありスマフォが優勢になりつつあることです。ただ、アマゾンのKindleやKoboの日本参入で状況が一気に好転していくでしょう。2016年度には市場規模自体が今の3.6倍の2000億円規模まで推移するというのが業界の見方です。

株式会社エムティーアイの2012年9月の調査(電子書籍の利用動向に関する調査)によると、電子書籍の利用経験は男性で63%、女性で53%。年齢別では20代前半は73%で60代でも39%が経験したことがあるそうです。最も多い層は20代前半の女性が75%ですが、幅広い層に指示され始めていることが分かります。

電子書籍市場の先進国はアメリカ、韓国です。韓国はネット接続では先進国です。平均的な国の7倍の帯域をもつブロードバンドのインフラが整備されています。また、政府は2015年までに国内のすべての学年と教科で教科書を電子化する計画を発表しています。既に2008年より数百校の小学校でテスト的に実験が始まっています。現在、韓国での電子出版の普及は出版し上の2割程度ですが、教科書が電子化された世代の子供は紙で本を読むことに抵抗を示すようになるでしょう。従って、一気に紙から電子書籍に巻き返す瞬間が2020年ころまでには現実の話になっていると思います。

米国でも同様の動きが進んでいます。従来の紙の教科書は高価でプリンティングコストもバカにならないということで電子教科書への以降の期待が高まっています。米国で教育ビジネスを手がけるXplana社の報告では、2010年度の高等教育の教科書に絞める電子教科書の割合は1%程度。しかし、様々なタブレットPCの普及と電子ブック端末の登場で今後の電子教科書の成長は確実です。同社は2014年の電子教科書の普及を全体の2割と予測しています。

この動き、遅かれ早かれ日本にも押し寄せてくると思います。電子書籍が先か電子ブックが先かはわかりませんが、アナログカメラがデジカメになったように、CDがiPodになったように全く構造が変化するビジネスモデルの戦いが繰り広げられます。実際、アップルストアの電子ブックのコンテンツを提供している企業のバックグラウンドはIT企業。出版社が提供しているコンテンツはごく少数です。

となれば、現在4300社程度ある出版社にとっては大打撃です。また、出版を取り次ぐ日販やトーハンの仕事も激減するでしょう。加えて、街の本屋さん。電子出版の普及とともに、小さな書店は雑貨屋別の差別化で生き残れなければ非常に厳しいでしょう。小規模で2階建程度の書籍は最も中途半端な経営になるので継続出来ないところが続出するでしょう。一方、大型の書籍もランニングコストを維持するこが難しくなり、ますます再編が加速されるでしょう。出版社で体力がないところはも打撃を受けるでしょう。ただ、有望なコンテンツを持っている出版社は電子書籍を販売するIT企業にM&Aされる可能せもあります。

どちらにせよ、アナログの世界の書籍業界は大きく絵図が書き換えられるのは間違い無いと思います。



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