GMSとビール業界の戦い

2011年9月20日 火曜日

早嶋です。

ビール業界の規模は2.9兆円。売上高に占める純利益の平均は2.4%です(H21年3月決算より)。この動向は、ビール会社大手5社のデータ値で、ここ5年程度の推移は横ばいです。ちなみにビールメーカーの売上高は1位キリンHD約1兆円、2位アサヒビール約9500億円、3位サントリーHD約5700億円、4位サッポロHD約3000億円、5位オリオンビール233億円です。

内訳は、ビール、発泡酒の出荷量は年々減少しており、分かりに第三のビールがのびています。現在、第三のビールは全体の3割の出荷量で既に発泡酒を上回っています。また、国内のビール需要が頭打ちを迎える中、ビール各社はカロリーオフ、等質ゼロといった健康志向のビールの投入、ノンアルコールビールの投入に力を入れています。

さて、そのような事業環境の中、ビール各社の成長は新市場としての海外、多角化が考えられますが、実際はどれも厳しいものです。加えて、近年はこれまで顧客であったはずの大型流通店が自社ブランドを作り展開しているという全く考えていなかった戦いが始まりました。

大手ビールメーカーは、大量広告を投入しながら商品販売を行いますが、大型流通店は、消費者との接点を活用して商品企画や改良に力を入れています。例えばイオンは価格を武器に品揃えの幅を広げています。例えば、セブン&アイHD味の刷新を繰り返しブランド確立を目指しています。

例えば、イオンが去年の6月に発売した第三のビール、PBですが単品の累計販売は1億6千万本。同社の第三のビールの店頭売上のシャア3割を占めるようになりました。そしてこの勢いは、4月にノンアルコール2種の展開、6月に糖質50%の商品を追加、8月に国内初のPBブランドのビール、バーリアルラガーを展開と、ビール業界にとっても目を離せない存在になっています。強みは価格の安さです。

大手ビールメーカーと違って、圧倒的な価格で、スーパーの最も良い場所に大量陳列して売ることができるため、消費者の手に取ってもらう確立があがります。大量宣伝こそしていませんが、スーパーでの認知はビールメーカーにとって驚異的です。製造も韓国の大手ビールメーカーに委託して、商品の需要予測をベースに生産しています。釜山から全国の9カ所の港に船で流通させ、周辺のスーパーに届けます。これによってネックとなる物流コストをも低減させ更なる低価格を実現しつつあります。

大手流通店の強みは、商品開発や改良にも生きています。各グループで実際にクレジットカード等で購入した顧客の購買履歴を基に抽出した顧客から直接グループインタビューを行っています。同じ商品を固定的に買う人、いろいろな商品を買う人、など抽出するのです。

これは明らかに大手ビールメーカーからすると脅威です。ビール、発泡酒の売上が低下する中、発泡酒はのびていると前述しましたが、ここにPBの競争が始まっているからです。しかもその競争相手はお得意先。基本的に全面対決は避けたいところでしょう。しかし、構造から価格で勝負する事はできない。しかも流通店の強みを生かして、一番いい場所に置く陳列。機能面を追加しても、流通店はデータマイニングを駆使して直接顧客に声を聞きながら商品開発をすすめる。とっても頭が痛いはずです。

第三のビールに限れば、既にPBが6%を占めています。第三のビールはビール業界の売上の3割ですので、ざっと9000億円。その6%ってことで540億円。そもそも第三のビールにシフトしている背景を考えれば、PBの比率が高まっていく事は目に見えています。2004年にサッポロが初めて第三のビールを市場に出したとき、このような異業種での戦いを想像していたでしょうか?ビール業界と大手流通店の戦い、今後も注目です。



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