スーパーマーケットの安易な値引き合戦

2010年7月29日 木曜日

値引き。価格を下げるとお客さんは沢山かってくれる!非常に安易な考えだと思います。しかし、世の中、特に日本の多くの小売企業はこの安易な戦略の虜になっていると感じます。

様々な商品が売れなくなっている。不況。そうか!値下げをするか!

実際、大手のスーパーマーケットでは100年に1度のリーマンショックを皮切りに、値下げ競争を次々に起こしています。

2008年:西友が他社チラシ価格照合制度を導入。
2009年:イトーヨーカ堂が2600品目の値下げを実施。
    イオンも5100品目の値下げを実施。
    更に、イトーヨーカ堂は2400品目の値下げで追従。

こんな感じでスーパーマーケット全体で値下げ合戦を引き起こし、価格が顧客を引き留める!という神話を信じて安易な行動に移ったのです。あたかも自分たちで首を絞めあうかのように。

しかし、本当にお客さんは値下げを要求しているのか?まじめに考えた事が在るのでしょうか?スーパーマーケットのお客さんって誰なのでしょうか?

ブログでも触れましたが2008年にコンビニの売上が百貨店の売上を超えました。タスポの一時的な効果と報道は在りましたが、本来、同じ商品を買うのであれば安いほうが良いに決まっている!というスーパーマーケットの値下げルールに基づけば、明らかにおかしいですね。コンビニは基本的に定価販売で値下げはしていません。

ということは、コンビニの売上増の影響はもっと違う所を考えなければならないのです。つまり構造的な変化が在るのです。

スーパーマーケットがお客様と考えている家族のイメージは4人家族なのかも知れませんが、実際のデータを見てみると、どの年齢そうも単身世代、つまり一人暮らしが増えています。

調べてみると単身世代は1960年頃は約400万世帯でしたが、2005年頃には1333万世帯まで増え、夫婦と子供がいる世帯(1464万世帯)と比較してほぼ同数まで追いついているのです。統計を見れば2010年頃には単身世代は1500万世帯を超えるのではないでしょうか。そう、家族(世帯)の実態が変わっているのです。

これらの背景は晩婚化、未婚化、熟年離婚、夫婦死別などが考えられるでしょう。

そこでコンビニが支援される理由が見えてきます。売っているサイズや量です。これまでの標準的な4人家族であれば、スーパーマーケットで売っている量は重宝されたでしょう。しかし、実態一人で生活していたり、2人での生活であれば、スーパーマーケットでの量やサイズは多すぎるのです。スーパーで買うと多すぎて余ってしまう。このような考えを持つ顧客が増えたのではないでしょうか?

実際、単身世帯の消費動向は、少しぐら価格が高くても利便性の高い店で買う意思決定をするでしょう。デパ地下やコンビニは少量の総菜や弁当が売られています。これらの世帯はただ安い商品を志向しているわけではなく、自分たちの生活にあった量やサイズの商品を欲しているのです。

更に、夫婦2人だけの世帯は、ただ単に安い商品を求めているとは考えにくいです。この世帯は約1000万世帯あります。無視できるセグメントでは在りません。ましてや子供がいないDINKS世帯は金銭的な余裕が生じ、嗜好も強いでしょう。また、子供が成長して親元を離れた50代後半のセグメントはもっと余裕が出ています。高くてもいいモノ、少量でいいから美味しいものを、そんな意思決定をしながら購買していると思います。

世の中の家族をセグメントに分けると、単身世帯、夫婦のみの世帯は約5割存在します。先に話をしたスーパーマーケットは値下げに命をかけるあまり、この5割のセグメントを全く無視しているのです。

これでは値下げをしたところで顧客に支持されることは在りませんよね。指示されるとしても子供と夫婦がいる全体の3割のセグメントだけです。従って、スーパーマーケットの売上が望めなくなるのも納得でしょう。




早嶋聡史



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